大阪市の教職員「評価・育成システムに関するアンケート」より(3)
消されてしまった「校長の声」
大阪市の教職員「評価・育成システムに関するアンケート」より(3)
** 転送・転載 大歓迎 ** 2010年11月21日
新勤評反対訴訟団事務局の辻谷博子です。大阪市の「評価・育成システムに関するアンケート」についての紹介、第3弾です。
10/29大阪府教育委員会は、アンケート結果を公表しました。すでに、新勤評反対訴訟団は、Q6-1自由記述の評価者回答の分析を済ませていましたが、両者を比較すると、まるで印象の異なるものになっています。教育委員会が公表したまとめからは、システムに対する否定的・批判的な意見や給与廃止を求める声は全くかき消されてしまっています。おそらく、教育委員会は来春より実施するつもりの改定案の則して自由記述をまとめたものと思われます。これはアンケート結果の歪曲です。
アンケート実施者たるもの、いかなるアンケート結果が出ようが、そのまとめは公正に行わなければならないはずです。今回、大阪府教育委員会が公表した「記述のまとめ」は、公正ではありません。その証左として、下記に、教育委員会が公表したものと、かき消されてしまった市教委公表分校長記述の一部を掲載します。比較してください。これらの声が大阪市だけのものであるはずはありません。教育委員会はアンケート回答結果を歪曲しています。
≪Q6-1 自由記述≫
その他、教職員の評価・育成システムについてご意見がありましたら、ご自由に記述願います。
【府教委公表分】
○支援学校は、教員数が多いため、特に時間がかかり、細かに評価することが難しい。評価のポイントをしぼり、得点制にして、加点方式にして、その点に応じて、評価するようにしてはどうか。
○教員の場合、授業評価を資料として活用していきたい。
○SAの50%以内というのが難しい。絶対評価であれば50%にこだわる必要はない。面談を通じて課題を確認した上で、きちんと結果を出せた教職員に対しては、A評価をしても良いのではないかと思う。管理職の意に沿わない場合のC評価は当然だと思われるし、そのため昇給や手当が少なくなるのは良いことだと思われる。
○評価基準Bについて、業績「概ね目標達成」能力「概ね発揮」総合「概ね平均」とするとされているが、S、A、B、C、DのBの呼称を低く捉える教職員の意識があり、開示面談での納得が得られにくい。現行のBをAと変更しSS、S、A、B、C等の評価基準であればかなり納得が得られやすくなるのではなかろうかと思う。ご検討いただきたい。
○①給与反映のための勤務評定と育成のための評価は分離したほうがよい。②前者は相対評価、後者は絶対評価。③昇給への反映は勤務校の状況にこれだけ格差がある以上、適切とは思えない。ボーナス反映で十分、ただしもっとメリハリをつける。④③により人事異動の躍進が図れる。
○評価、育成システムの評価基準を、より具体的にすることで、評価が適正になる。
○経年するにつれて目標設定が過去と類似の設定になることが多くなってくる。そのため目標設定そのものの指導に苦慮している、目標設定が総花的になり、多くの目標設定を掲げがちになっている。目標設定の重点化と具体化を明記させる指導が必要である。
○評価育成システムは目標の共有化、明確化には非常にすぐれたシステムであるが、評価者の労力が大きな負担感を伴なう。1人で100人近い教職員を評価することは難しい。
○このシステムが、回数を重ねるごと疑問に思う点が2つある。1つ目は、校長に責任がのしかかっていて、説明しきれない事もある。2つ目は、提言シートが、提言ではなく、不平不満の意見を聞くものになっている部分があり、役割が違う方向に進んでいる。→提言シート
○人材育成面における効果は大きいが、勤務評定面においては、整理・解決すべき課題もあると考える。
【新勤評反対訴訟団集約の一部】
■現在、管理職を希望する人が益々減少し、教職を去ろうとする意識とただ生活と金のた めに勤める意識が増殖しつつある。教育界から「夢」が消えつつある。意欲と活性化に必要なのは、競争でなく協働化、給与でなく働き甲斐、管理でなく自立、自己満足でなく協同し合う喜び、お金による意欲でなく教師としての専門的力量と職人技の練磨のための交流と育成、制度論的改革でなく存在論的改革であろう。
■評価者・被評価者,双方にとって,全く労力のムダになっている.早くなくすべきであ ると考えています。
■教職員にはこのシステムはそぐわない。廃止した方がよいと思う。廃止してほしい。人 が人を評価するのは難しい。がんばっている人はがんばっている。
■人間関係を損なうので早く止めていただきたい。
■仕事の内容が数値化しにくいこともあり、評価しにくい。他都市ではこのようなシステ ムはなじみにくいと言うことから導入を見送っているのが大多数であるにもかかわら ず、府が半ば見切り発車的に導入していることの理由が分からない。すべてが財政面からの皺寄せと考えるならば、今後に大きな禍根を残すものになると思える。
■評価について 子どもの実態、保護者の特性、教職員の人間関係等々、常に一律の条件 下ではない。そんな中子どもの成長の結果はすぐにでるものではない。がんばってがんばってがんばってもうまくいかず、病休になる場合もあれば、全て順調に進んでいくこともある。教育の場においては「評価」はなじまない。
■子どもたちのために教育を大きく前に進めたいが、この評価・育成システムのために教 職員間、また対管理職との関係がぎすぎすし、チームや組織で学校というところは動かしていかなければならないのに、校長として非常に学校運営の邪魔になってしまっている。校長として教職員を評価するのは気の重い仕事である。その割には教育の成果としての価値も見いだせない。
■教職員に評価・育成システムはなじまない。給与反映に大いに苦慮している。教員と管 理職との断絶を深めるだけのシステムを早急にやめるべきだ。
■すぐに廃止すべきである。現に企業などでも廃止したところが多くある。
■給与反映の結果,退職したり病気になったりした校長が何人もいる.この2~3月は, 卒業式,来年の校内人事と多忙な時期である.一年でも早く,改善してほしい.学校現場は,管理職と教職員,鍋ぶたと言われている.管理職対教職員2対40である.評価育成で「B」をつけなければならない.また,その説明に時間をついやすパワーを本来の子どもの教育のために使いたい.また今年も,校長の病人が,何人もでるであろう.
■学校現場を何も知らない行政の考えは、全くナンセンスである。もっと校長会などで教 職員の意欲の向上をさせることについて話し合うことだ!企業の論理は合わない。かえ って意欲を落とし不快なものにこのシステムがなっている。早くやめた方が教職員が良 くなる。これ以上いくら続けてもダメである。教職員にどれだけ礼を言い、ほめているのか、管理職の苦労をもっと知って、このシステムをどのように変えるのか考えてほしい。私はこのシステムに反対である。一日も早くやめてほしい。行政の方も毎年B評価を頂いて喜んでいるのですか?意欲が高まっているのですか?人の動かし方を勉強してほしい。
■1日も早く評価育成システムを中止していただき,校園長の学校経営を真にサポートし ていただける教育行政を行っていただきますようお願いいたします。
■教職員同士や管理職と教職員間で人間関係が崩れる。仕事量が多くみんな協力しあうこ とが重視される職なので差を付けることが難しい。現場にはなじみません。
■このシステムで学校現場の活性化や個々の意欲向上につながるとは全く思えない。むし ろ逆効果である。何の権限もない校園長にとって職員との和、コミュニケーションが学校早退の活性化を図る一番重要なポイントである。しかしながらこのシステムによって、特に評価という部分、そして給与反映の仕組みが、教職員との関係性をズタズタにさせる。
■絶対評価であるとしながらも,給与の幅が決まっているのはやはり矛盾している・教員の場合は,学校,学級,職員,学年等,客観性をもたせるには要素が多すぎて,評価がむずかしいし,評価者にもよるので,人間関係がくずれる要素となり,学校運営がぎくしゃくする.
■BとAの差は、非常に微妙で、ほんの少しの「さじ加減」でどちらにでもなるので評価が難しい。それが給与に反映するとなるともっと難しい。それならいっそ「S」をなくし、今の「A」を「非常に高い評価」とした方がよい。今のシステムなら教職員の意欲を向上するというよりも、低下させることの方が多いし、評価者がいつも苦しい評価を迫られる。
■このシステムが試験的に導入される以前より管理職であるが、何回ものアンケートで「教員にはなじまない制度であること」を書き続けてきたし、質問もしてきた。しかし、全く改善も委員会は考えていただけない!非常に残念である!
■,評価育成システムは学校現場にはなじまない制度です。すぐさま止めるべきです。レベルに達しない教職員はステップアップ研修に参加させるべきでしょう。
■私的企業ではない学校にはなじまない。とくに校長として、安定した地域の小規模校と数百人の子どもをかかえ、地域や同推協の活動を推進する学校と同列に扱われ納得が出来ない。年に2回面談しただけで、日々の活動も見もせず評価され、単に給与を抑えるための悪法でしかない。現場の人間関係を壊し、やる気をなくさせるシステムは即刻やめるべし。
■自分は評価者として上位区分を50%以下に抑えているが、大変な苦労と職員の反発を伴う。所詮は主観的な評価が主となるこのシステムでAとBの差など給与反映されるほどのものでは決してない。しかも、他校で上位区分を簡単に50%以上付けている話などを聞くと、憤り以上のものを感じる。このシステムがあることによって、おおらかな視点で職員を見ることができなくなっている。管理職希望者が激減しているのもこのシステムが一因である。
*大阪市の開示したアンケート結果の一覧表(総括表)を新勤評反対訴訟団のWEBサイトに掲載しますので、関心をお持ちのかた、他府県のかた、是非ご覧下さい。
訴訟団webサイト http://www7b.biglobe.ne.jp/~kinpyo-saiban/index.html
辻谷博子e-mail faamf507@dsk.zaq.ne.jp