その2−箱雛。「横町交流館」には豪勢な段飾りの雛人形と6畳間一面に座る雛人形には驚嘆いたしました。交流館以外では、家々の雛飾りは、古びた当地独特の「箱雛」が多く、家々の軒先に飾られていました。
「八女福島で発祥した箱雛(はこびな)という雛人形は、ぼんぼり祭りの期間中、八女福島一帯のいたるところで展示されます。江戸時代にもなると庶民にひな祭りの文化が浸透しますが、豪華な段飾りの雛人形は庶民には手が出せません。庶民は仏壇屋さんに注文。仏壇屋さんは廃材などを使って極力安く作ったのが“箱雛”のルーツである」と市のパンフにありました。
小雨の中を歩いた旅人には、折から咲き誇る紅梅と共に、嬉しい土産でした。
ぼんぼり祭りポスター:町屋交流館雛人形展示:堺屋の箱雛
旅のおまけ
今回の一泊二日の福岡紀行では八女市の18基、以外には北九州市で31基、福岡市で35基の文学碑を訪ねた。
その中で特に印象に深かった幾つかの写真を紹介しておきます。
中村雨紅の「夕焼小焼」童謡碑は、同文の碑が全国に27基もある(拙著『神奈川の文学碑p92』)。全国制覇を夢見ているので必見の童謡碑でした。残るは愛媛県の伊予市と岐阜県の瑞浪市の二基となりました。
北九州市小倉区は森鴎外、松本清張の街です。小倉城址には「松本清張文学記念館」が堂々と聳え、紫川河畔には美しい鴎外文学碑が居ました(旧居も保存)。
北九州市八幡東区の諏訪一丁目公園では、明治33年に当地に在住した竹久夢二の、代表作「宵待草」の一節「宵待草のやるせなさ」を刻んだ巨大な文学碑を見つけました。
因みに、夢二の文学碑は全国に31基を数えますが、内「宵待草」を刻んだ碑が12基もあります。筆者もせっせと訪ねて、残るは会津若松の二基だけです。
小倉図書館脇・夕焼小焼童謡碑:小倉城址・森鴎外文学碑:八幡東区・竹久夢二文学碑
今一つ、福岡市城南区「片江風致公園:通称・文学碑公園」を加えておきます。
地元の吉川熊雄氏が昭和32年以降、巨額の私財を投じて文学碑・言葉碑(「一期一会」「柔能制剛」など)をあわせて50基(内文学碑は32基)を建てました(非公開)。形状は元の碑と異なりますが、碑文の文字は苦労して元の碑を写しています。
吉川氏の没後、碑群は市に寄贈され、整備を始めたようですが、何時電話しても「今しばらくお待ちを」との返事で、遅々として整備は進みませんでした。
公園は油山の麓に位置して、入口には「いのししに注意」の看板が警備に当たるすこぶるおっかない場所でした。タクシーを待たせ、勇気を出して踏み込みました。
主な21基の文学碑には小さな案内碑が添えられていました。案内碑のない別の5基も見つけました。しかし6基は発見できず、心を残して立ち去った次第です。
これでは吉川氏の情熱や、込められた思いを知ることも出来ず、悔しい思いでした。
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