いしぶみ紀行:釧路・摩周湖


横須賀のウサギ様
  ご無沙汰しております。お元気で今年の猛暑を乗り切られたことと思います。
  未だ夏が残る横浜を避けて、涼しい北海道を訪ねて参りましたのでその模様をお届いたします。


啄木の釧路を歩く
  大平原のど真ん中、気温16℃の、釧路空港に降り立った。空港前でヒグマの親子の出迎えを受け、本物でなくて良かったと一息ついて、道東紀行を始めました。
  釧路といえば世界遺産・釧路湿原を見落とせません。想像も出来ないほど広いと聞いていましたので、先ず、その広さを体感しようと立ち寄りました。途上、丹頂鶴を見かけましたが、あっと言う間に消えて、いささか物足りない気分でした。
  広い牧場で牛たちが草を食む光景を見るにつけ北海道に来た気分が高まりました。
  釧路空港から30分ほどで釧路湿原の西端に到着。入口で「7月18日、当地でヒグマに遭遇」の掲示を見て、恐る恐る遊歩道へ。周りは熊笹、大蕗と雑木ばかりで展望はない。少し開けた場所に設えた展望台から広い緑の湿原を見渡す。地平線は地球の丸さを感じさせる緩やかな放物線を描く。いま少し晴れていれば・・・との思いもありましたが、ここは小説『挽歌』の舞台。ヒロイン・怜子の不毛の愛にはこの風景が似合いそうなので我慢し、初対面の名刺を差し出して、ご挨拶を済ませただけで引き揚げました。
        
                                       (釧路湿原展望)
  ホテルに荷物を預けて、市内の「啄木探索」に出かけました。20基を越える文学碑の所在地をぎっしりと書きこんできた自家製のマップがお供でした。
  釧路を代表する幣舞橋まで、釧路の匂いを嗅ぎながら、歩く。メイン道路の一つだけに花々で飾られ、整備が行き届いている。昼時とてサラリーマンがぞろぞろ。釧路信金本店前で「駒はいななく釧路平野 鶴が来て舞う春採湖 山は遠いし野原は広い 水は流るる雲はわく」と釧路を歌う野口雨情の詩碑に出会いました。
  啄木が「柱歪みて欄よれて・・・」と詠った幣舞橋は彫刻で飾られた立派な橋に変っていました。正面に花時計をかざる高さ50−60mほどの台地。河畔にある「幣舞公園」を予想して来たので、台地を見上げてため息です。
  公園のナナカマドが秋色に衣替えの最中。ここからの眺めは抜群で、釧路の顔である幣舞橋から、晴れていたなら遠く阿寒の峰々見渡せるとのことでしたが、生憎、阿寒は雲の中でした。公園の片隅で原田康子「挽歌」文学碑が白樺の木々に囲まれていました。赤御影石とステンレスを組合せた近代的な設えですが、碑面の文字「高台から見降すと下町には明かりがともっていた。しかし町の明かりの果ては、広い真暗な湿原地に呑みこまれているようだった」が活字体だったのが残念でした。
  幣舞橋から釧路港へ通じる幹線道路・南大通を1丁目から8丁目までを歩き通しました。 南大通2丁目から横道にそれて、大町に入った所にシェルのGS。この地が啄木の勤務した釧路新聞社の跡地で、歌碑「十年前作りしといふ漢詩を 酔へば唱へき旅に老いし友」が建っていました。  
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