オオゴマダラ(大胡麻斑)蝶:白黒のまだら模様が特徴的な日本最大級の大型蝶。蛹が金色になること、ゆっくりと羽ばたきフワフワと滑空するような飛び方をする特徴を持つ。東南アジアに広く分布し、日本では喜界島、与論島以南の南西諸島に分布する。季節を問わず繁殖するので1年中見ることができる。成虫の期間も長く、条件がよければ半年ほど生き続ける。
  バスは満足げな顔を乗せて、名護市の山間の“パイナップル園”と“森の琉球ガラス館”を訪ねたが、土産物に興味はなく、無駄な時間で終わった。「こんな所へ連れて来るのなら、もっと、海洋博公園で時間が欲しかった」とぶつぶつ呟きながら、那覇市を目指して帰途に着いた。
  恩納村の景勝地・万座毛は見逃すわけには行かないがバスは立ち寄ってくれない。やむなく、万座毛入口でバスを捨てた。急坂に息を切らし、店じまいする土産物店を横切り、隆起したサンゴ礁を覆う高麗芝生の園地を抜けて、絶壁の海岸に立つ。夕日に輝く象に似た岩が海面から20−30mほど立ち上がる。TVと書物で見て憧れる、モネの愛したフランス・エトルタ海岸の雄大さには劣るものの、青色の入浴剤を溶かしこんだ海が素晴らしい。柵がないので直下の海面、岩場に打ち寄せる荒波を覗く勇気はなく、ただ、広がる東シナ海のエメラルドに見とれるばかりであった。ここは夕日鑑賞のスポットとして著名だが、ホテルは遠いし、訪ねたい碑もあるので先を急ぐ。
  駐車場脇の琉球歌の名手・恩納ナベ歌碑「波の声も止まれ 風の声も止まれ 首里天がなし 美御機拝ま(波の音も静まりなさい、風の音も静まりなさい、国王様がお見えになっています。みなさん、お顔を拝見して拝みなさい)」を訪ね、その碑を訪ねた巌谷小波の句碑「しぐれたりおんな詩人の碑を訪へば」を調べて、迎えを待った。
  恩納部落の細道に入る。地元出身の運転手だったが恩納ナベ歌碑の所在を知らず、何度も村人に尋ねながら路地奥の松の下で憩う歌碑に辿り着いた。「恩納松下に 禁止の碑たちゅす恋しのぶまでの 禁止やないさめ(恩納の松下になにやら禁止の立て札が立っているというが、まさか男女の恋を忍ぶことまで禁ずるようなおふれではないでしょう)」 は、ナベが恋人を追って越えた険しい恩納岳を背景に夕陽に輝いていた。
  その夕陽を追って、残波岬までの20kmを走る。途中、落ちて行く巨大な火球を垣間見たり、沖縄の方言や冠婚葬祭について色々と教わったりして過ごした。辿り着いた残波岬ロイヤルホテルは、もう闇に閉ざされ、歓迎のイルミネーションばかりが光っていた。70歳の初日は、戦争を忘れ、平和な幕開けであった。
   
                (写真:逆光の万座毛:部落真中の恩納ナベ歌碑:残波岬突端)

 昨晩何も見えなかった窓にどんな光景が現れるのかと心躍らせて夜明けを待った。17階の高層からの眺めは、赤い屋根、薄緑の草原、濃緑の黍畑、青い海、白い灯台と連絡船、と賑やかな色彩に溢れていた。
  遅い朝食を終え海岸に足を運ぶ。運よく、二人だけでも、グラスボートに乗せてもらえると聞いて、チャレンジ。釣り船の様なボートで水深5mのサンゴ礁に繰り出す。船頭はポイントに船を停め、船底のガラス越しに海底を見せてくれる。乱反射するターコイズブルーの中に、マリーンブルーの小魚が泳ぐ。「これが・・・魚です」「これは・・・サンゴです」「これは・・・磯巾着で珍しい種類です」・・・とこの広いラグーンの生態を知りつくした船頭は巧みに船を操った。
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