(写真:いわき市草野記念館ガラス窓の「猛烈な天」:同・展示の「秋の夜の会話」)
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句集「待春」の世界は少しばかり難しかった



  語彙の豊富さ、選び抜かれた言葉はその場所でなければならない所に座っている、居心地が良さそうに座っている。そんな場合が多かったのですが、難解な言葉が所々にありました。その句にぴったりだとしても、「爽籟」「翠巒」となると小生には「お初にお目にかかります」で戸惑ってしまい、貴兄の感興を理解するのは容易ではありませんでした。
  「十薬(どくだみ)の白さに噎(む)せて雨あがり」は何とか読解できたものの、「薔薇いっぱい咲かせて家の鮮しき」は難解でした。句の調子からは「鮮(あたらし)しき」と読めましたが、「薔薇いっぱい」から、「鮮(あざやか)さ」と誤読して、読み直しましたよ。「ルビ」を振るなり、「前書」「後書」で簡単に補うなりしていただければありがたいと思います。素人には、家族を詠んだ句にあるように「前書」や「自註」あれば理解が進みます。
  俳句の世界では、どうしても、沢山の想いを表現できる難しい言葉が多くなるのでしょうね。たった十七文字で一つの世界を表現しなければならない俳句の宿命でしょう。
  作者には自明の言葉でしょうが、句集となって作者の手元を離れれば、矢張り、ひと工夫が必要ではないでしょうか。読者の理解を深めるために・・・。
以上、小生の不勉強さは棚に上げていただいて、難解な語句が一句の鑑賞の妨げになる場合もあることを知っていただきたく、敢えて、書いておきます。
  「難解さ」を補う手段として、また、イメージを補強する手段として、昨今では句に写真を添える(写真に句を添える)ことも流行っていると聞きました。邪道かもしれませんが・・・。
  現地の(あるいは写真の)風景の中に、その作品を置いてみるのも、作品を深く理解するため一つの手段だと信じております。いしぶみ紀行・常磐では童謡の舞台を見て来ましたのでご紹介しましょう。
                       


いしぶみ紀行・常磐−童謡の舞台−


  いわき市の名勝・波立海岸は、名前の通り、折からの強風で白い大波が乱れ狂っていた。
  波立寺に立ち寄った後、西行の歌碑を探して海岸道路をゆっくりと走る。暗い海岸に起立する細長い碑に、「あれだ!」と声を上げる。碑面には「陸奥の木奴見の浜に一夜寝て 明日や拝まむ波立の寺」とあった。西行は黒い海を背負い、小雨に濡れながら、強風に立ち向かっていた。その姿に、奥州藤原氏を訪ねた西行の苦難の旅、新しい歌の世界を切り開こうと苦闘した生涯を重ねながら隣の広野町へ走った。
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