いしぶみ紀行(横浜・紫陽花)-2006.06-


  「金沢八景・シーパラダイスが紫陽花の名所だなんて知らなかったのですが、行ってみたら見事、見事、2万株の紫陽花の満開でした。群馬県渋川・小野池あじさい公園で満腹にならなかったお腹には、満腹感を得られると思います」
  榛名・伊香保のいしぶみ紀行に一緒に出かけた、友人からこんなメールが飛び込んできたのが三日前。朝刊を取りに外に出ると、予報の「曇り」が「晴れ」に変っていた。お腹が鳴り出した。


  京急・金沢文庫からシーパラダイスまで歩く。途中の「海の公園」は夏を待ちかね水浴びする子供達で大賑い。その先でモノレール「八景島」から降りてきた客と合流して、どっとパラダイスになだれ込んだ。
  子供達は回転木馬へ、こちらは案内嬢へ一目散。
  「紫陽花は何処ですか」
  「ようこそシーパラダイスへ。紫陽花はあの回転木馬の裏側に広がっていますよ」  胸が高まったのは、断じて、お嬢さんが可愛かったせいではない。紫陽花!なのだ・・。
  緩やかな登り道の両側が紫陽花で埋まる。 「顎紫陽花」「西洋紫陽花」・・「赤」「青」「薄紅」・・「大玉」「小玉」・・紫陽花・2万株が食卓に並ぶ。「さあ 召し上がれ」と急きたてる。 つまみ食いしながら歩く。暫らくは、食べることに夢中になる。少し空腹が収まってよくよく見ると「赤系統」が目立ち、「顎紫陽花」が多いのに気がつく。
   
               (横浜金沢八景シーパラダイスの紫陽花たち)
   「ここの紫陽花は色が薄いね。いま少し鮮やかなのが欲しいね」「青の大玉はないかな。あの奥に咲いているのが近くだと良いのだが」「お墓参りに持って行く紫陽花はどれが良いかな」「ジェットコースターの音が暑いね。日影のベンチは何処」と次々に勝手な注文が飛び出してくる。右往左往するしかない。
  大混雑を予想してきたがそれほどでもない。どうやらここを訪れる人のお目当ては水族館であり、ジェットコースターなのだ・・・と納得はするが、年寄りのお節介が顔を出す。
  「紫陽花と言えば七変化。若い二人連れに紫陽花から人生を学んで欲しいね」
  「綺麗に見える所は花ではない。その奥に隠されているものが本当の花なんだよ」
  聞いてはくれないと解っていながら、絶叫マシンに走った若者に説教をする。
  「こちらは紫陽花だ。断じて!」と繰り返して坂を登った。登りに汗が滲んだ。
  初夏を思わせる日差しを「パイナップルジュース・ヨーグルト添え」で冷して引揚げることにした。
  紫陽花で円く膨らんだお腹を散歩で真っ赤に日焼けした両腕で抱え坂をおりた。  「紫陽花ではなく中性脂肪だよ」と誰かがそっと忠告してくれた。


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