広がる斜面はお花見客に占領されていましたが、何処にも酔客を見かけず、清々しい気分で散歩が続きます。一段上の仙崎八景広場には八景の一つ「波の橋立」の詩碑。ここからの眺めは素晴しかったが、生憎の曇り空で青海島は薄く霞んでいて悔しい思いでした。タンポポ、みどりの芝生、満開のさくら、春の色たちが辺り一面に広がっていました。頂上の狭い展望広場には「丘の上で」の碑が花吹雪碑面に受けて桜色。碑面に刻まれた「青い空」が欲しい・・と欲張ったお願いをしながら山を降りました。それにしても訪ねた何れの詩碑にも遊び心がいっぱい詰まっていて、息を切らして登った甲斐があったというものです。

公園:わたしと小鳥と・同:さくらの木・同:お日さん・仙崎駅:星とタンポポ・各写真クリック拡大
長居したい誘惑を振り切って、海沿いに仙崎の町へ。仙崎湾の埋立地に「弁天島」の詩碑を訪ねると、「あまり可愛い島だから、貰ってゆくよ綱つけて」の碑文通り埋立地に繋がれていました。 青海大橋を渡って青海島に入ると、直ぐに桜の名所・王子山公園。今度は「王子山」詩碑が酔客に囲まれていました。海面から50m上の満開のさくらの隙間にみすゞの故郷がノアの方舟の姿で浮んでいました。
仙崎の町歩きは青海島への遊覧船の乗場から始めることに致しましょう。
天下の奇勝を目指す観光客を横目に、広場の一角に怖いまでの視点を感じさせる「大漁」の詩碑と澄んだ瞳のみすゞ胸像。詩の陶板を埋め込んだ歩道を歩いてJR仙崎駅は直ぐです。 無人駅の構内には「みすゞ案内所」の展示、駅横には一番好きな「星とたんぽぽ」の詩碑。碑面を眺めていると、サン・テグジュベリの「星の王子さま」でキツネが王子さまに教えた言葉「心で見ないと、ものごとはよく見えない。肝心なことは、目に見えない」を思い起こします。きっと、あのキツネはみすゞから教わったに相違ありません。
駅から北に1km、青海島大橋まで小さな半島を二等分して「みすゞ通り」が伸びている。 通りから左に入ったみすゞの母校・仙崎小学校には道を間違って、裏の空地から入学させてもらいました。体育館前には「私と小鳥とすゞと」詩碑、体育館壁面には「土」の詩、掲示板には「今月のみすゞ」の紹介。今尚、母校の小学校ではみすずは大切な人のようでした。
通りに戻ると、姿を消しつつある赤い丸いポストの郵便局が健在で、掲示板には「郵便局の跡」の詩、その先の食堂の壁面には「大漁」の詩、時計屋には「子供の時計」の詩、みすゞの童謡が流れる電話ボックス・・・と続きます。
詩集の中を歩いている気分です。映画セットの「金子文英堂」を保存したみすゞ記念館も並んでいました。記念館は人でごった返していましたが、展示は横浜で「みすず展」を見ていたので足早に通り抜けました。
菩提寺を探してみすず通りを更に北へ。八重桜が咲き誇る極楽寺にはその桜を詠んだ詩「極楽寺」のパネル、遍照寺は直ぐです。山門を入ると、「こころ」詩碑。左手の墓群の中に窮屈そうに「先祖累代之墓」「金子テル・昭和5年3月10日没」の墓があり、菊の花が鮮やかでした。

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