「長門市仙崎は金子みすゞという美しい響きの名前の童謡詩人が育った町。自然のすべてにやさしく深いまなざしを注いだ彼女は波の音、潮の香り、風のそよぎ、星のきらめきなど、そのひとつひとつを深いまなざしでみつめ、やさしい言葉でつなぎあわせている」
では、早速、長門市の南側の深川地区を巡りながら、「みすゞ仙崎ワールド」にご案内いたしましょう。
最初の訪問地・赤碕神社から迷ってしまいました。老婦人に道を尋ね、丁寧な案内に沿って車を走らせたが行き着けない。偶然車を止めた脇に「近松門左衛門生誕記念碑」(生誕地は諸説)の案内を発見。長い急勾配の石段を登ると頂上に記念碑が建っていました。横手に重要民俗文化財「楽桟敷」の案内坂。どうやら隣が目指す赤碕神社の様子。
急いで赤碕神社境内に入ると眼下に「楽桟敷」が広がっていました。窪地の斜面を段々畑風に設えた野外劇場で、ここが「楽踊り」の舞台。みすゞの繊細さが光る「露」詩碑は桟敷の入口の土手に、舞台の袖に控える主演女優のように空を見上げていました。みすず詩碑との、待ち望んでいた、最初のご対面でした。土手を駆け上がって裏を覗くと、詩碑は長門市郷土文化研究会により詩碑第1号として昭和59年に建立されたと刻まれていました。
写真:赤碕神社「露」・大津高校「積もった雪」・図書館「大きな文字」・「ふしぎ」写真クリック拡大
みすゞの母校・長門高校(旧大津高女敷地跡)には往時の校門が80年の時間にも耐えて残っており、門柱を衛兵にして詩碑「空の鯉」が満開のさくらでお化粧をしていました。今一つの母校・大津高校(旧大津高女後身)のみすゞの優しさが溢れる「積もった雪」詩碑では10数年前の立山の「雪の大谷」を思い出しながらシャッターを押しました。
仙崎南方の高台はみすゞの子供時代の遊び場だったようですが、今は図書館や集会場がある広い総合公園。おとぎの国から舞い降りて来た子供達が「大きな文字」の詩と一緒に遊ぶ珍しい詩碑が置かれていました。近くには表も裏も存在しない不思議な「メビウスの環」の彫刻。その台座に子供の心を見事に表現した詩「ふしぎ」が刻まれていました。
次に訪れたみすず公園は道路脇から急な石段が真上に伸びていました。入口に座る巨大な大理石に「みすゞ公園」の文字。その上には可愛い少女が夢中で本を読んでいる彫刻が腰掛けていました。本は「みすゞ詩集」に違いない、と裏側に廻ると彼女の代表作で誰もが好きになる「私と小鳥とすずと」が刻まれていました。50m程の頂上に向う道はさくらのアーケード。後押しが必要な急坂を登ると坂道を表現した形の詩碑「あとおし」が所を得ていた。子供達が飛び跳ねながら登って行った、中段の広場には素敵な出逢いが待ち受けていました。両側に目の覚めるような色合いの花を咲かせた桜を従えた「さくらの木」。碑面にあるさくらの花びらの彫刻をお見せできないのは残念です。同じ広場には「お日さん、雨さん」詩碑があり、賑やかな家族がお弁当を広げていた、子供に還るひと時でした。
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