老いの道 (1)

   渡島当別への道は  曠野の道
   曠野の道は  迷路ばかり

   秋の饗宴に潜む迷路は
   老いには複雑すぎるというのに
   親しい人とも次々別れ
   飛んで来いというのか  独りで
   
   秋に迷い込んだ  北の蛍よ
   お前の季節は既に過ぎたが
   夕映えに  いしぶみを並べ
   闇に消されぬ  赤い灯を点せ

   渡島当別への道は  曠野の道
   曠野の道は  迷路ばかり

      老いの道(2)

   神威への道は  巡礼の道
   巡礼の道には  風ばかり

   積丹ブルーが隔てる  その距離は
   老いには遠すぎるというのに
   過去も未来も吹き飛ばす
   風と共に  這って来いというのか

   冬に迷い込んだ  オロロン鳥よ
   お前の翼は疲れているが
   鮮やかに  飛行機雲を描き
   風に消されぬ  飛跡を残せ

   神威への道は  巡礼の道
   巡礼の道には  風ばかり
 
(札幌大通公園:有島武郎文学碑)                 (同:吉井勇歌碑)                 (石狩当別:本庄睦男文学碑)
   
老いの入口で見た「修道院での凋落の秋」と「静かな神」。青春を取り戻して果敢に挑んだ「神威岬の秋の海」と「荒ぶる神」。二つの忘れることの出来ない対照的な風景を記録に残すには4年もの間、「老いの道」を歩いて見なければならなかった。記憶の風化を待たねばならなかった程、強烈な印象を残して行った旅は、未だかつて、無かった。
    私の老いの歩みは、この旅から始まり、予想通り「静と動」との間を行ったり来たりして、未だに、揺れ動き、定まらない。
 定まらない私に、旅が土産をくれたので記念に残しておきたい。
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