
まだ暗い松山駅。朝6時前。

松山始発予讃線海回り宇和島行き。三日前に乗ったのと同じ列車。
いろいろ悩んだあげく、今日は青島に行くことにしました。
風は収まり波もあまりなさそう。天気予報は「曇り」とはいえ、青島に行くにはまず「青信号」。
ただ、今日は夜丸亀まで移動しなきゃならない。青島に行って戻ってくるとなると松山に着くのは18:02、それから接続する特急で丸亀20:30になります。実は定期船「あおしま」の長浜港着は16:50、列車の伊予長浜駅発は16:51、港から駅までは走っても2~3分かかりますから通常なら間に合わない。でもいつも船長さんは「JRで帰る人いる?」と乗客に訊いてくれて、JR利用者がいるとわかると船を飛ばして16:45くらいに帰港できるようにしてくれます。ありがたいですね。でももし万一波がちょっとでも高くなれば安全上スピードを出すことができなくなる。そうなれば16:51の列車には間に合わない。すると一本遅い列車に乗ることになり、その列車はなんと19:20伊予長浜発。接続の特急に乗っても丸亀に着くのは22:30過ぎ。翌朝がキツイ。
だからできれば青島行きは松山滞在中の初めの方にしたかったんですが、それが三日前に見事に玉砕。(^^;
昨日青島という手もあったんですが、やはり睦月の方に先に行きたいという気持ちが先に立って…ちなみに今日の天気予報が「晴れ」だったら文句なく昨日を青島、今日を睦月にしたと思います。昨日の天気「晴れ」の目もあったのでそれなら睦月に先に行きたいと。
まあ、帰りの海はい静かだと信じましょう。それなら船長さんは帰りの船を急がしてくれるはずだから。
伊予長浜7:14着。桟橋に行ってみると、今日は乗船タラップがかかっています。

ただ海上波はないものの、今日は朝から陽射しはなくしかもゆるい北風が吹いてます。海上に出ればいくらか風は冷たいだろうから寒いかも。
いつも私はこの船では後甲板の椅子に座って行くんですがさすがに今日は避けたほうがよさそう。
船長さんからも「下にいたほうがいいよ」と言われて。

乗客は私含めて7名。うち2名は大洲市の方のようでなにやら工作用具を積んでました。残り5名のうち日本人は私だけ。2名が台湾から来られた方、あと2名はオーストラリアから来られたカップル。どちらもここに来るのを楽しみにしての来訪だとか。
青島が「猫島」として有名だったのは日本国内ではもうかなり過去の話。今では全頭避妊去勢から5年以上経って猫の数が激減していて、多くの「猫好きモドキ」なミーハーさんは青島を見捨てて、新しく有名になった島に行くようになっています。青島を訪れる日本人の観光客は以前に比べればおそらく十分の一いや二十分の一以下になっているでしょう。まあ、ミーハーが来なくなったのはいいことですが、でもちょっと寂しいですね。薄情な人が多いなぁ、と。
でも話を聞いてみると、オーストラリアから来た方も台湾から来た方もそのあたりの事情をご存じでした。
「猫の数が減って今行かなければ青島の猫に会えなくなる」
そう思って来たそうです。もちろん日本には他に猫がたくさんいる島はあちこちにあることをご承知の上で。
なんだか嬉しくなってしまいました。
船の中では会話が弾んで♪
三者の共通言語は英語なんで、英語での会話でしたが、オージー(オーストラリア)英語というのは米語やクイーンズ・イングリッシュとはちょっと発音が違う時があって。私も普通の英語(というより米語)は充分話せますけどオージーイングリッシュには時々「What?」となってしまうのがご愛嬌でした。(^^;
ちなみに「say」が「サイ」、「today」が「トゥダイ」になります。
30分の船旅。
やっぱり海上は風がけっこうあるんですね。波は立ってないけど船がちょっと左右に揺れる。水しぶきが窓に。

8:35青島着。

風があったせいか、船着き場の椅子の下に風除けしてた子も。

青島のメインストリート。
本当に猫の数減りましたね。かつては船が着くと数十匹の猫たちがこの道を走ってきたものだけど。

港からついてくる子もわずか。

今、島民の数はわずか3名。それでも猫たちは残った島民の方に愛情を持って世話をしてもらっています。
ただいかんせん、どの方もご高齢。餌をあげることができても充分なケアまではできるはずもありません。それでもKさんは「私が生きている限り、この子たち全員の一生を見届けたい」と仰ってます。



あと何年だろう…。

できれば人も猫もおだやかにゆっくり時を過ごしていってほしい。時計よ止まれ…。
神社の前にある広場。ここが外来者が猫に餌をあげてもいい場所。

オーストラリアから来られたカップルのお二人、猫カリカリや猫おやつを山ほど持ってきていました。(^^;

なんでもご自宅でも猫を三匹飼っているんだとか。
「日本に来てる間その猫たちは?」と訊くと「大丈夫、両親が世話をしてくれているから」とのこと、出発前に猫たちを預けてきたんだそうな。
このお二人、フィアンセなのかそれとももう結婚されているのか…。

やっぱり「ちゅ~る」は最強ですね。猫たちの目の色が変わる。(^^;
でもこの「ネコエサ場」(と壁にスプレーで書かれている)に集まってくる猫の数、本当に減りました。

往時を思えば寂しい限り。
もちろん、それが悪いこととは思っていません。かつての17人から島民が徐々に減り今では3人。もしあのまま猫が増えるままに任せていたらとてもすべての猫たちの世話をすることなどできなくなってしまうし、もし人がいなくなって猫たちだけが残されてしまうようなことがあれば一番かわいそうな思いをするのは猫たち…。だからあの7年前の全頭避妊去勢は正解でした。
理屈の上ではそれはわかってはいるんですが、やっぱり寂しい…。

上の写真は今から10年前…Kさんがさばく魚をもらうのを待っている猫たちの姿。この頃は200匹近い子がいたんですよね。
猫にとっての幸せ。人間にとっての幸せ。本来、交わるところがあったはず。いや、猫は人間と一緒に暮らしてこそ幸せだったし人間にとっても猫は大事なパートナーだったはず。だからこそ、人間と猫は古来共同生活をしてこられたはず。穀物や漁具を荒らすネズミを追い払う役割を担ってくれた猫、そしてその代償として猫を保護し糧を与えてきた人間。「持ちつ持たれつ」の間柄だったはず。

現代はどうだろう??
今だって、ネズミ対策で猫を飼う漁師さんや農場主はたくさんいるし、私が通う場所でも「猫のおかげでこのあたりはネズミが出ない」と言っているところもあります。
でも都市化が進むにつれていつしか「猫は外で飼うべきではない」という価値観が当たり前になって、市の広報でも「猫は家の中で飼いましょう」なんて書かれていたりする。それが当たり前だという風潮が一般的になってきた。でも…それはある一面では正しいけれど、絶対的な価値観としていいのかな?

確かにこれだけ密集した住宅街が並ぶ都市近郊ではそうかもしれない。猫の糞尿被害というのはあちこちで聞きます。そういう被害に遭っている人の立場から見れば「猫は家の中で飼いなさいよ」ということになる。ごもっとも。
でも昭和のころはどうだったろう?
私が住んでいた東京下町。それこそ軒と軒とがくっつくような木道の狭い家並み、庭なんかない家も多かった。そんな中をそれこぞ毎日のように昼となく夜となく猫がウニャゾロと歩いてた、いやあの頃は犬も歩いてたな…飼い猫だって放し飼いが普通だったし住んでいる人皆「猫ってそういうもの」って言ってたような気がする。そりゃ中には文句を言う人がいなかったわけじゃないけど、大抵の人はそれが当たり前の情景として受け入れて猫と共存してたよね。

でも、昭和から平成と時代が移るにしたがって人間のほうがいい意味で「豊か」に、悪い意味で「贅沢」になってきた。皆、小さいながらも庭を持つこぎれいな一戸建てに住むようになってくると「自分の空間」から他者をそれとなく排除するようになってしまいました。近所づきあいを次第に敬遠するようになり自分だけ、自分の家族だけの空間に閉じこもるようになって、果ては近所の公園で子供が遊ぶ声まで「うるさい!」と苦情を唱える人が出るまでになってしまった…ましてや猫が自分の敷地内に入ってくるなんてもってのほか、ということに。

私が子供のころ、隣りの家に「悪いけどお醤油貸してくれない?」とか「お味噌余ってるけど要る?」なんて声をかけることは当たり前でしたが、今ではそんな「隣組」的な雰囲気はもうほとんどなくなってしまった…。猫に対する寛大な人間の姿勢が失われてしまったのはそれと無関係ではないように思えるんですが。いや猫だけじゃない、すべてに対しての寛大さを失ってしまったような気がしますね、現代の日本人。少なくとも都市近郊に住んでいる日本人は。
変わったのは猫じゃない。人間のほうです。みんな小さな白いお城の中に閉じこもってしまった。
いや、でもまだ猫に寛大な町は残ってはいます。私が通う地元の「猫通り」もその典型だし、こうした離島や地方にまだそうした空気は残っている。でもそれらに共通するのは(私も含めて)高齢化が進んでいるという事実。
やがて町でも…隣近所の付き合いがなくなったように、あるいは遊ぶ子供たちの姿と声が町の路地から消えて久しいように、夏の夕方に縁台を出して道端で将棋を指すおじさんたちの姿を見なくなったように…路地を気ままに歩く猫たちも姿を消してしまう日が来るのでしょうか?
なんだか物悲しいですね…。

この青島の猫たちも、そんな昔ながらの人々の思いとともにやがて消えていくのかと思うと、別の意味で寂しいです。
人間は何か大事なものを過去に置き忘れてしまったのではないかと。

このキジシロの男の子。

5月に来た時もけっこうモデルさんを務めてくれましたが、今日も青島神社の石段でいろいろポーズをとってくれました♪
なんだか妙に懐いてくれて。

いろいろパフォーマンスをしてくれます。

頭隠して尻隠さず。(^^;



空は相変わらずどんより曇ったまま。
昨日の睦月のように陽が差すことはありません。まあ、雨が落ちないだけいいか。




物音がほとんどしない港。かすかに水の動く音だけが聞こえる…。

時計の針はいつのまにか正午を回っていました。
