
| 2025年5月15日(木)曇りときどき晴れ 怒和島 |
朝から曇り空。今日はときどき陽は差すものの一日こんなお天気らしい。そして明日から天気は下り坂。向こう一週間曇りや雨の天気が続くらしい。「晴れオトコ」を自任していた私の神通力もさすがに今回は通じないのかな。
今日は怒和島に来ました。宇和島に行くかそれともここに来るか迷ったのだけれど南予のほうは雨予報が出ていたので…。
朝7:40の高速船に乗って上怒和8:23着。
忽那諸島を巡る中島汽船には東線と西線があってそれぞれフェリーと高速船が就航しているのですが、人手不足の影響はここにも表れていて、船員不足のためこの春から東線西線ともに高速船の一部が無期限で休航になりました。島の人たちにとっては欠かせない足なのですが…。政府も自治体も効率化優先なのはわかりますが、なかなかこういう方面への補助をしてくれない。「僻地切り捨て」になるような施策だけは取ってほしくないですが…。
上怒和の港から歩くこと10分。浜沿いのいつもの道。
猫たちが出迎えてくれます。
ここの島、猫の数は決して多くありません。いや、もともとはもっと多くの猫がいたそうですが、島の人口が減ったことに加えて、どちらかというと「猫嫌い」な人が多い島。
世話をしてくれる人の数が少ないということもあります。
「瀬戸内の島はどこも猫好きな人ばかりが住んでいる」
そう思っている方も多いでしょうね。でも決してそうではありません。
広島県側にある某島ほどではないですけど、ここ怒和島は猫嫌いな人が多い。数少ない猫を世話している人がちょっと肩身の狭い思いをしているようです。
さすがに私のように島の外から来た人に向っては文句を言ったりすることはないですが、正直カリカリをあげるのも気を遣うような雰囲気になることも。私は気にせずあげてますが…。
この怒和島はまだいいほうかもしれない。
以前訪れた広島県のとある島では、猫の写真を撮っていると露骨に言われたものです。
「あんた、その写真をネットなんかに上げんでくれよ。わしら島のもんは猫にほんとに迷惑しとるんじゃけ。猫目当てで余所者にこの島に来てほしくないんじゃ」
そこまで言われましたよ。猫を目の敵にしてましたね、その島の人は。
佐柳島や田代島あるいは熊本の湯島のように島民こぞって猫の世話をしている島もあれば、この島のように猫を疎んじている人が多い島もある。
同じ忽那諸島でもこの怒和島と先日訪れた睦月島とでは天地の違いがあります。この違いはいったい何が由来しているのだろう???
こればかりは説明がつきません。想像にすぎませんが、たぶん島の人の心に余裕があるかないかの違いかもしれないですね。地域による気質の違いというわけではないようです。
そもそも猫は自然発生的に生まれた野生動物ではありません。もとをただせば人間が連れてきて持ち込んだものです。
かつては多くの漁師が猫を飼っていたといいます。それは漁網を破ったり船板をかじったりするネズミ対策として飼われたのが始まり。しかし時代が下ってきて漁師の数も船の数も減り、忽那諸島のように産業の主体が漁業から農業(みかん栽培)に移ったりしたところではかつての猫の役割は少なくなってしまい、数だけが増えてしまった…それが瀬戸内の猫の実態でしょう。
だから「猫島」と呼ばれる島がいずれも限界集落となって島民の数が減ってしまっている島であることと決して無関係ではないような気がします。
しかしそれぞれの島で猫に対する接し方が違うのはなぜ…?
これは…わかりません。
睦月島であんなに可愛がられている猫たち。怒和島では疎んじられている猫たち。
言えることは、それは猫たちの責任ではない、ということ。
だからと言って、島の人たちをどうこう言う資格は私にはありません。島の人にはそれなりの考え方がある。余所者がそれに口出しすることはできません。
ただ一握りの世話をしてくれる人の庇護によってこの猫たちが細々ながら生き永らえてくれることを祈るのみです。
この三毛の子、なかなか懐っこい子でした。
アゴの下に黒い毛がある、ちょっと珍しい顔つき。
いつもビックリしたように眼を見開いていて、なかなか愛嬌のある表情。
なかなかのフォトジェニックでもあります。
しばらくモデルさんしてくれました。
ときおり私の後ろを島の人が通る…無関心に通り過ぎる人もいれば、ちょっと苦々しげな表情を露骨に見せる人もいる。
この島に通って6年、もうわかっているので気にはなりませんが…この島はそういう島なんだと。
もともと私がこの島に来たのは「海がきれいだ」と言われていたから。風景写真をやっている知人に薦められて海の写真を撮りに来たのが最初。で、来てみてから猫がいることを知ったのです。そう、ここの海の風景は絶品なんですよね。風景写真をやっている人間なら一度は来なきゃ、というほど。

でもその後、なぜか猫目当てで訪れているような気がする。(^^;
今日だってこんなお天気だから海の写真はそうそう期待できないんだしね。
そういいながら…山に登ってみました。
中腹から見る上怒和の港。背後の島々の多島美が味わえる風景ですが、残念ながら海の色が…。
ここでもみかんの花は満開。
斜面に作られたみかん畑。怒和島はレモンの栽培も盛んです。
振り返れば丸子鼻。向こうに見えるのは中島。
松山から来たフェリーが入港します。
朝の高速船で来なければ、11:22着のこのフェリーまで松山から怒和までの船はありません。
やがて出航し、中島西中港へ。
「バタバタ」と呼ばれる車両。みかん収穫時や農機具の運搬に使用するものです。忽那諸島ではよく見かけます。
上怒和集落。ここも人は減りました。6年ほど前、集中豪雨で上怒和集落の一部がかなりな被害を受け、島を離れて四国本土に移ってしまった世帯が少なからずあったといいます。そして、それ以降も人口は減り続けています。
かつては漁業が盛んだった名残もありますね…。
午後になってやや陽が出てきました。再び猫たちがいる浜へ。
ここの猫たちは、避妊去勢を受けていません。
せめてそれだけでも実施していれば、少数の猫好きの島民と多数の猫嫌いの島民の間の軋轢はいくらか軽くなっていたかもしれないですが…。でも個人の力で、しかもこんな離島でTNRを行うということは困難です。睦月島のように松山から近く、しかも協力してくれる島民が多いケースとは違う。松山からの距離だけでも睦月島の倍以上、しかも大多数の島民が猫嫌い…。
ただ、少数の猫好きの島民の方が本土の保護活動団体などに協力を依頼するという方法はあると思うんですが、残念なことにそれはされていないようです。
意固地になっているわけでもないでしょうが…。
私個人の感情としては「昔さんざん猫に世話になっておきながら、今になって『もう用はない』と言って厄介者扱いするのは勝手すぎる」と言いたいところですが、私は当事者ではないから口を出すことはできません。それに、そうした考えはあくまで「猫好きの論理」でしかない。それを言ってしまえば猫嫌いの側にもそれなりの論理はある。
地元で十年以上地域猫活動に携わってきた経験で、こちら側の論理だけでは決して事態は解決しないということをイヤというほど学びました。どちらかが歩み寄る姿勢を見せなければ永遠に平行線です。こちらからほんのわずかでも歩み寄れば、時間はかかっても向こうも歩み寄ってくるかもしれない。100%ではないけれど、そうした可能性を信じていくことが大事じゃないかと。
人と人、組織と組織、あるいは国と国も同じじゃないかと。まず話し合うことから始めなければ何事も解決しない…。
猫は人と共生して暮らす動物です。野生動物ではありません。だからそばにいる人同士が争っていては、猫たちは決して幸せになれない。
「避妊去勢して一代限りにしよう。そしてその一代限りの命を最後まで見守ってあげよう」ということを真摯に説けば猫嫌いの人の中にも「それならば」という人が出てくる可能性もあるはず。もちろん費用の掛かることです。「金はどうするんだ」という話になるでしょう。だからこそ、個人で抱え込まずにNPO団体などに協力してもらうしかない。
「猫たちを自然な姿で(避妊去勢をせずに)暮らさせたい」
それができれば理想です。でもそれは、佐柳島や田代島のような島民のコンセンサスができていて、しかも島外からのバックアップが得られる島でしか無理…。
そうであるならば、せめて今いる猫たちがどうしたら幸せに一生を終えることができるか、を考えたほうがいいと思うんですけどね。
「猫好きの論理」だけを押し立てていてはどうにもなりません。
14:16のフェリーで松山に戻ります。
睦月島・青島。怒和島…愛媛の三つの島を巡って、それぞれがかかえる猫たちの未来についての課題というものを改めて感じましたね。
猫たちを愛してやまない人が多くいながら、高齢化のために泣く泣く避妊去勢を選ばなければならなかった睦月島。
島民がわずか3人となっていながら残った猫たちの世話を続けている青島。
少数の猫好きと多数の猫嫌いの対立のはざまで猫たちが生きていかねばならない怒和島。
「猫島、猫島」と無責任に騒ぐマスコミやネット上のミーハー連中には決してわからない島猫の本当の姿。
「わ~、かわいい!いっぱいいいる~♪」とはしゃぐのも悪いとは言いませんが、それぞれの島が抱えている問題にも少しは目を向けてくれないかな、と。
明日は朝の特急で多度津へ移動。昼ごろから雨の予報も出ていますが…まあ、お天気ばかりはどうしようもない。(^^;
佐柳島は雨でも猫と遊べる島だから…ね。(^^;
第二部「香川」に続く