
この日、私は迷いました。どちらの島に行くか…青島と怒和島。天気予報は晴れのち曇り。
明日26日は雨風とも強まる予報。27日朝には香川に移動。
昨日睦月島に行ったのはまず睦月が第一優先の島だったからですが、それをクリアしたとなると残りは怒和島と青島。明日が雨風とも強いとなると松山滞在中に島に渡れるのは今日だけ。さてどちらを選ぶか…。昨日は伊予灘の波高が1.5mになっていたから、たぶん青島に行く船は欠航になってたと思うんですが果たして今日は???
もし天候の問題がなければ文句なしで青島なんですが、昨夜の時点での予報は波高1m、風は西の風7m…波高はなんとかクリアしてそうだけど風が気になる。
安全策をとるなら、大きなフェリーが就航している怒和島が無難なんだけど…。
朝起きて再度予報を確認。波高・風とも前日の予報と変わらず。さてどうする??
ちょっと賭けになるけど…青島に行くことにしました。
早朝の松山駅。
11月ともなるとまだこの時間は真っ暗です。
5:51発宇和島行き普通列車。

伊予長浜まで1時間半。普通に走れば1時間で行くんだけど、この列車は途中二か所で長時間停車があります。
7:17、伊予長浜着。
歩いて5分で定期船「あおしま」の桟橋。
ありゃ?欠航だって。
賭けに負けましたね。(^^;

船長さんの話だと、波の高さは問題ないけどやはり風の影響で船を出すのは危険とのこと。
「いや風速は問題ないんだけどさ、問題は風向きなんだよ。西風だからね。船の進路に対して直角に風が来るんだから危ないんだよ」
定期船「あおしま」はわずか33トンの小さな船。向かい風や追い風であれば波高1mならギリギリ行けますが、7~8mの横風を受けるとなると転覆する危険性があります。飛行機と同じで船は横風に弱いですよね。昨日乗った中島汽船のフェリー「ななしま」がトン数765トンであるのと比べるといかに小さな船かわかると思います。
「昼前にいったん風収まるみたいだから午後便は出せると思うよ」とのこと。
まあ、仕方ないですね。さて、どうする??
選択肢はいくつかあります。もう今から怒和島に行くのは無理。となると、
松山に戻って市内でブラブラするか、それとも高浜まで行って昼過ぎの便でまた睦月島に行くか。あるいは14時までどこかで時間をつぶしてまたここに戻ってくるか…三択。
明日は雨だからたぶん松山市内で過ごすことになるだろうから第一案は却下。
第二案。前回やってるんですよね、これ。それでもいいけど睦月は昨日そこそこいい写真撮れてるし猫たちとも遊べたし…。
ならば…最後の案ですね。
午後ここに戻ってきたらまた欠航だったって可能性もないわけじゃないけど、そしたらそしたで仕方ない。
さてそうなると午前中どこに行くかですが、まあ、こんなこともあろうかと(オマエは真田さんか!)以前から代替コースは考えていたんですよ。(^^;
行き先は伊予大洲。
ところがJR予讃線では宇和島方面行きは10:56まで列車がない。3時間以上も待つのはつらいし、なにより肝心の大洲でほとんど時間が取れずにすぐ引き返してこなきゃならない。
でも奥の手が。駅前から出ている伊予鉄南予バス。7:50発の大洲病院行きというのがあります。これに乗れば8:30過ぎに大洲に着きます。
帰りはJRで伊予大洲12:23の列車に乗れば伊予長浜に12:47に戻ってこれます。青島行の船は14:30だから充分に時間がある。お昼は長浜で食べればいいし。伊予大洲で4時間ほど時間が取れます。
時間通りにバスは来ました。
肱川に沿って進むバス。山あいに向かって進んでいくと、肱川の流れに気嵐が立ってきました。山間部に入ると気温低いんですね…長浜とは4~5℃違うんじゃないか…後で調べてみたら大洲のこの朝の最低気温は2℃でした。
バス降りたら寒かった。(^^;
バス停からしばし歩いて肱川沿いの築堤へ。
そこから見えたのは…

大洲城。
伊予宇都宮氏による創建以来、戦国時代を経てさまざまに城主が入れ替わった城ですが、文禄四年に藤堂高虎が入城、その後脇坂安治・加藤貞泰と城主が変遷しますが、現在の城郭は藤堂・脇坂時代にほぼ完成されたそうです。
この大洲城、一度来てみたかったんですよ。そう、私、「お城マニア」ですから♪
肱川の対岸から撮ると、色づいた木々と天守閣を一緒に収めることができます。

ぐるりと回ってお城に入ってみました。
ここの天守閣は20年前に再建復元されたものですが、注目すべきは木造復元であるということです。
ところが建築基準法ではこの規模の建造物は本来は木造は認められなかったので大洲市は数年かけて折衝を行い、国と県に基準法の適用除外を認めさせました。このため復元資金は民間からの寄付が大部分であったということです。

このお城、「宿泊できるお城」として近年有名になっていますよね。
木造復元天守であるために文化財認定を受けていない(というか木造復元天守に関する文化財規定がない)んですが、それが幸いして?一般人の宿泊ができるようになっているんですよね。
泊まってみたいけど…6名利用で一人30万円、2名利用で一人66万円。う~ん、ちょっと手が出ない。
お殿様待遇してもらえるんですけどね。(^^;

天守閣の中を観覧。料金は500円です。天守最上階からは大洲の町が一望できました。ちょうど山霧が晴れていい眺めでしたね。
大洲城を見た後は古い街並みが残る「おはなはん通り」へ。実は肱川の岸に「臥竜山荘」という庭園があってそっちも見たかったんですが、そうすると滞在時間4時間弱では足りない…それは次の機会ということにして。
お城から来て大きな通りを渡ると、昔懐かしい道の入り口。

昔…私が小学校低学年の頃だったけど「おはなはん」というNHKの朝ドラがありました。その舞台の一つになったのがここ。主人公:はなの出身地です。
その城下町と明治の街並みが残るのがこの道をずっと歩いた先。
なんですが、その途中に

こんな場所が。
「ポコペン横丁」。

昭和30年代のレトロ空間を演出した商店街…なんですが、今日は月曜日で土日明けのせいかで出店はなくひっそりしてました。
でもずらりと並んだ懐かしいホーロー看板を見るだけでも楽しいです。



これ、ちょっと笑える。(^^;

「おはなはん通り」。
この光景、昔の朝ドラの風景そのままです。武家屋敷の面影残る明治の街並み。もちろん何度も修復修繕されていますけど。電柱が目立ちますが、あの朝ドラのころは木の電柱だったはずだから写り込んでも絵に違和感なかったでしょうね。


あ、猫がいる。(^^;

ここにも。

このあたり、猫多いみたいですね~。(^^;
さらに奥に進むと…、

こんな家並み、今はどんどん減ってしまってますね。ここのように観光地化されていない場所では次々に姿を消しています。維持費もかかるし危険でもあるので充分な修繕が見込めないならばやむを得ないんですけどね。でもちょっと寂しいなぁ。

町歩きをしていると時間の経つのは早い。もうすぐお昼。駅に戻らないと。
途中の肱川を渡る橋から、もう一度大洲城を望んで。

このお城、春は桜がきれいだそうですよ。
伊予大洲の駅に戻り、12:23発の松山行き普通列車に乗ります。

伊予長浜12:47着。さすがに列車だと速いですね。バスの半分の時間で着く。
定期船「あおしま」の桟橋に行ってみると偶然船長さんと出会って。
「やっぱり来たの(笑)。大丈夫、2時の船は出すから」
と言ってくれました。
船の出航は14:30。まだ1時間半あります。とりあえずローソンまで行ってお弁当を買い込み、長浜駅の待合室でゆっくり食べました。
のんびり食休みをして14時前に桟橋に行ってみると、もう乗船タラップが下りていました。

乗船券を買います。

さすがに平日ということもあってか、乗客は私のほかには4人だけ。うち3人は外人さん。話を聞くとイギリスから来たそうな。
「猫が200匹いるんだって?」
「いや、今はもうかなり減ってますよ。」
「なんで?」
「それは…」と言いかけて言葉に窮しました。
ちなみに↑の会話はすべて英語です。一応私は日常会話程度なら英語はできるつもりですが、「避妊」「去勢」というのを英語でどう言うのか知らなかった。(^^;
幸い、その人たちポケット翻訳機を持ってきていたので、それに「避妊や去勢をしたから」と言ってみたらちゃんと翻訳してくれたようで、
「I see」
と頷いてくれました。
しかし便利な世の中になりましたね。昔はSFドラマの中だけだったものが現実になってるんだから。
この人たち、青島の情報はかなり古いものを頼りにしていたみたいですね。欧米の日本紹介の記事って古いまま更新されていないものもあると言う話は聞いたことありますが…こういった観光地化されていない離島なんかの情報は上書きされないことも多いんだろうな~。
14:30長浜港出航。
伊予灘、波は収まったようです。風はまだちょっと吹いてるけど朝ほどじゃない。

でもこの穏やかな天気は一時的で、今夜からまた低気圧の接近で明日は西日本全般に雨風とも強まるという予報。
その後天気自体は回復するけど風の強い状態はしばらく続くそうで。冬の走りの天気です。
この秋の私の瀬戸内行き、例年より10日ほど遅いんですよね。
青島が近づいてきました。

15:05青島着。
さっそくお出迎えが。(^^;


船の折り返し時刻は16:15。青島に滞在できるのは1時間10分です。
いつもは朝の船で来て夕方まで8時間ゆったり猫たちと過ごすんだけど…でも来れただけでもいいと思わなきゃね。

コロナ禍以来、東側の集落は島外者の立ち入りは禁止されているので、西側の集落へ。
と言ってもこちら側にはもう誰も住んでいません。


それにしても、本当に猫の数減りましたね。昔はこうやって桟橋からこの道を歩いてくるとそれこそ猫の大集団が「ゴハン持った人たちが来た~!」とそれこそ雪崩を打つように(大げさではなく)走ってきたものですが、今は…。

全島一斉TNRから丸5年。かつて200匹いた猫たちも、おそらく50匹を切るくらいにまで減っているのでは?
この日、西側の集落で見かけたのは二十数匹でした。たぶん立ち入り禁止エリアの東側も同じくらいじゃないかと。


片や島民の方々も今残っているのは4名だけ。全員が後期高齢者です。
それでも「自分たちができる間は」と猫たちの世話をしてくれていますが、それもあと何年か…。

かつて青島に訪れていた人も足が遠のいてしまった人が多いようです。
毎年のように来た人も顔を見せなくなった、とある方が仰っていました。
「もっと猫が多いところはたくさんあるから、そっち行ったんだろうね」
なんだか寂しいなぁ、それって。薄情だとも思う。

私は、青島の猫たちがいる限り、たとえその数がひとケタになってもこの島を訪れるつもりでいます。
私にとって思い出深い島。10年以上通い続けてきた島だから…。
西の防波堤に行ってみます。
盆踊りの碑のところにいた子。

私の後をついてきました。

かつては私がこの防波堤を歩くと4~5匹の猫があちこちで体を休めたり、テトラポッドの合い間から顔を出したりしていたものですが、今はひっそりと…。
この猫の海を見つめる背中が「みんな、どこに行っちゃったんだろうね」と言っているようで。

今の青島の猫の平均年齢はおそらく7~8歳でしょうね。もう中年域に達した子ばかり。5年前のTNR直前に生まれた子もあるはずだけど、その多くは本土に送られて保護猫として生活しているそうです。この子の娘や息子もたぶん…。




まるで語らうかのように私の後をついてきてモデルを務めてくれました。
やっぱり寂しいかい?さみしいよね…。


かつてマスコミに「猫の楽園」と称されてたくさんの人が訪れた青島。
しかし今、潮の引くように訪れる人は減って行って。訪問者のほとんどは昔の情報を頼りに来る外国人ばかりだそうな。日本人の訪問者はかつての10分の1にまで減った。それでもGWの連休あたりだと多少の賑わいはあるようだけど、それ以外の季節は閑古鳥。土日でも船はガラガラ。
テレビやSNSで他の「猫島」が全国各地で名乗りを上げ紹介されると、島内に飲食店も自動販売機もない交通不便なこの島をあえて訪れようとする人はいなくなってしまった。
ある意味、島民の方々にとっては静かな日常が戻ってきたわけでいいことだと思います。
しかし反面、いかにブームに踊らされただけの人が多かったか、「猫がたくさんいる島」ということだけに物珍しさだけで来ていたミーハーが多かったかというのがこうなってみるとよくわかります。人間って冷たいなぁ、とも。結局、かつて訪れた人の中に本当の猫好きってどれだけいたんだ?と。

かつて「青島は人が多すぎるから行かないことにした」と言っていた人もいます。ならば、人が少なくなった今、その人が訪れているかと言ったら…先日会ってそれとなく話を向けると「今更行こうとは思わないなぁ、猫も減ったし」だと!
その人の本音は「数が減ったうえに全島TNRでもう仔猫が見られないから行っても面白くない」ということだそうです。
冷たいね、あんたも…。そのくせ他の島にはせっせと通ってるくせに。結局「猫」が好きなんじゃなくて「猫の写真」が好きなんじゃないの?あんたは?
猫がたくさんいるカットを撮ってそれを見た人から「すごいね」と言われたいだけなんじゃないかな、と勘繰ってしまいますよ。
「猫のたくさんいる島」の写真を撮りたいだけなんだね…彼の写真見てるとわかる。複数の猫を画角に収めようとしてる絵ばかり。ときどき構図に無理も感じる。そこには猫に対する思いや愛情というものは前面には感じられない。
仮に「写真を撮るんだ」と割り切るにしてもこう言っちゃ悪いけど「絵」にしようという努力もあまり感じない。
私も複数の猫を画角に入れた写真も撮るけれど、でも一匹の猫をモチーフにして絵作りしている写真が圧倒的に多いはず。写真家が「絵を作る」ことを放棄したらおしまいなんだけどな…。
猫が減ったから行かない…かぁ。本当の猫好きでも写真家でもないね。こき下ろすようで悪いけど、ホントそうだよ。

私は地元でずっと猫の世話をしてきました。
仔猫の時からずっと7年間世話して飼い猫以上に懐いた子がいます。いずれその子を引き取るつもり。ガンの術後経過観察が明けたら…あと二年です。そうなればもう長日程の猫旅というのはできなくなるかもしれない。それでもいいからその子と一緒に暮らしたい。
だからカメラを振り回して猫を追いかけてるだけの連中とは違うという自負があります。
だからこそ、「猫、たくさんいるよ~♪」という写真を撮ってネットに上げて人に喝采されたいだけの連中と一緒にされたくない!
そう思ってます。
だから…どこの島でも、許される限り私は猫たちと遊ぶ時間を作るようにしてます。写真二の次でいい。
ね?




1時間はあっという間に過ぎ去り、もうすぐ船が出る。
やっぱり1時間は短い。(^^;
名残を惜しんで猫たちに挨拶しながら桟橋に向かいます。



「もう出すよぉ!」
船長さんの声が。

残ってたのは私一人。
「また来るよね?」
見送る猫のまなざしがそう言っているように思えました。
うん、また来るよ。来ることができるうちは…。

帰りの船から見た夕陽。

雲の流れが速い…天気が荒れる前兆ですね。
明日は雨。風も強まるという。一日松山の町中で過ごすしかなさそうですね。
道後温泉入って休養日かな。(^^;