翌早朝の松山駅。
朝6時前。まだ真っ暗です。2番ホームに停まっているのは5:51発予讃線海回りの宇和島行き。
昨夜いろいろ考えたのですが、今日は青島に行くことにしました。
いや元々青島に行くつもりだったのですが、先日通り過ぎた低気圧の影響が気になっていて、もし波が高いようなら代替として怒和島に行こうと。
日程に余裕があって天候に恵まれていれば両方訪れるんですが、今回は日程が限られています。後半の佐柳島はどうしても三日間欲しかったので…。
列車に乗り、車内で朝食。暗かった車窓の風景も伊予市あたりから徐々に色を取り戻し、伊予上灘を過ぎて線路が海沿いに向かって行くとすっかり明るくなりました。陽の光は背後の四国山地に遮られてまだ降りてきませんが、今日も快晴になりそうです。
伊予長浜7:17着。
ここから歩いて5分で定期船「あおしま」の桟橋です。
出航40分前の7:20から乗船可能なんですが、今日は先に来ている人は誰もいませんでした。かつては平日でも私がこの列車で着く頃には7~8人は並んでいたものでしたが…。
やがて台湾から来たと思しき(言葉でわかる。北京語とは微妙に違うんですよね)グループが4人。それと高松から来たという人が2人。それと釣竿を抱えた釣り目的の人が2人。結局朝の1便の乗客はこれで全員。全部で9人。かつてから思えば信じられないほどの少なさです。かつては「猫好きのパラダイス」とまで言われた青島、もう忘れられたんですかね…。
聞くと、GWなどは今でもかなり多くの人が来ることもあるそうですが、それ以外の季節はめっきり観光客が減ったということでした。落ち着いてきたということなのかな。
8:00、出航。
朝の光が下りてきました。航跡の波しぶきを照らし、ときに虹ができます。
今日は波はほとんどありません。
この小さな船は波高が1.5mを超えると欠航になることが多いです。最終的に海面状況を見て判断するのは船長さんですが、西風が強い時だと波高1.0mであっても欠航になることがあります。船長さんは長年の経験で、長浜港の突堤の隙間から見える伊予灘の白波の立ち具合を双眼鏡で見て判断します。
昨日の夜の天気予報で「西予地方:晴れ、西の風1m、波0.5m」というのを見てこれは大丈夫だろうと私も判断しました。
青島が近づいてきました。
8:35,青島港に着岸。猫たちがお出迎え。
全頭TNRから5年、かつて150匹いた猫たちも今は60匹ほどに減りましたが、それでも朝の船が着くと皆集まってきます。知ってるんですよね、観光客がエサを持ってきてくれることを。
それでも、コロナ禍を経て5年、訪れる観光客の数は半減いや三分の一にまで減ったそうです。外国からの観光客は古い口コミで来る人も多くそこそこは来るそうですが、国内からの観光客は少なくなりました。
TPOをわきまえずに迷惑行動をするようなミーハーがほとんど来なくなったのはいいとして、猫愛好家と自認していた人たちがこの島に見向きもしなくなってしまったというのはちょっと寂しい気もします。当然、観光客が持ち込んで寄付していくエサも少なくなり、その分島の人の負担も増えることに。
かつて「猫の楽園」という代名詞を使ってこの島を喧伝していたマスコミも今はほとんど見向きもしなくなりました。
今は「猫島」といえば、福岡県の相島や大分県の深島が大々的に取り上げられています。
それはそれでいいのだけれど、かつて「青島大好き」とまで言っていた人までが来なくなるというのは…その方のインスタ、他の猫島への訪問記ばかりになっていました。あえて名前は出しませんが薄情だな…と。どうもその方の記事を見ていると青島に来なくなった理由がわかるような気がしました。
青島の猫たちは全頭避妊去勢を受けていて、もう仔猫は産まれません。今いるのはほとんどがシニアかそれに近い年齢になった猫ばかり。だから仔猫はもう見られない。いや、でも今は相島や深島も一斉TNRを行ったはずだからもう仔猫は見られないはず。
ひとつ言えることは、ここはあまりにも交通不便であるということ。船が欠航することが多いし、朝早い船に乗らなければならない。さらに(たぶんこれが一番の理由だと思うけど)コロナ禍以来、感染対策で島の東半分は島外者の立ち入りはできなくなり猫の数も半分以下に減った。かつての青島を知ってる人から見れば確かに物足りないかもしれない。
だからと言ってかつて2ヶ月に一度の頻度で通っていたこの島を(確か関西の人です)まるで見捨てたかのようにすっかり足を運んで来なくなったというのは…それでいて、相島や深島に年に5回も6回も行ってる。なのになぜ青島には来なくなったの?それだけの余裕があるなら年に一度くらい来たって…かつて「青島命」とまで書き込んでいたくせに。
まあどこに行くかは個人の自由ですけど、それにしたってあまりにも変わり身が早すぎる。薄情です。
島の東は入れなくなったけど、決して訪問者への門戸を閉ざしたわけではないのに。
確かに島の東にはそこでしか撮れないアングルというのがありました。特に東にある神社の古い石段で遊ぶ猫たちの絵、あれは私も何度も撮った。そして東側の突堤で遊ぶ猫たち…でも今は入れなくなったんだから仕方ないでしょう。結局、あの方は猫が好きなんじゃなくて「猫の写真」が好きなだけじゃなかったのかな。そういう意味ではキツイ言い方をすれば自分を飾るアクセサリーとして猫を飼ってる人と大差ないのかもしれないですね。インスタで「いいね」が欲しいだけの。結局あの人もミーハーだったのか…。
青島は「トレンドではない」ってことなんでしょうね。
「今は一代限りとなった猫たちを静かに遠くから見守っていたい」という方もいます。
それはわかります。でも自分に余裕がなくなったというならともかく、そうでないなら足を運んでほしい。
今は5人となった島の人たち。でも「やっぱり誰も来なくなったら寂しいよ」と仰ってますよ。
港の西側にある小さな広場。青島神社の下。
ここはやってきた観光客が猫にエサを与えてもいい場所。原則としてこれ以外の場所ではエサを与えてはいけません。
青島の港のたたずまいは5年前のままだけど、船の数も猫の数も減りました。
水飲んでますけど…海水だよねぇ。塩辛くないの?
島の子はもう慣れっこなのかな。
今日は風もないからほとんど音もしない。しずかな島の朝。
ほとんどの子は、さっきの「エサ場」と桟橋の間を行ったり来たりしているんですが、ときおり西の突堤のたもとまで遊びに来る子がいます。
逆光でなかなかいい絵に♪
しばしのんびりと猫たちを眺めながらスナップ。時間はたっぷりありますから。
ご覧になって気が付いた方も多いともいますが、毛並みがきれいな子と乱れている子がいます。これは島ではどこでもよくあることで珍しくはないのですが、どうしてこういう差が出来てしまうのかと言うと、ひとつには栄養状態の差、ひいては健康状態の差です。猫を飼っている方ならお分かりと思いますが、猫の健康状態は毛並みに現れます。「毛割れ」という状態ができている猫は体のどこかが悪い。
青島ではごく狭い地域に150匹もの猫たちがいましたから、当然近親交配による劣性遺伝というのもあります。田代島や佐柳島のように広い地域にテリトリーが分散していて雄猫が渡り歩くという島ではありません。恐らく瀬戸内の島の中でも平均寿命は短い方じゃなかったでしょうか。
それとTNRが終わったあと猫たちは繫殖欲が消えた代りにその分食欲に脳が支配される状態になる子もいて、過食になる猫も出てくる一方で力の弱い猫はエサを巡る競争でどうしても負けることが多くやせ細ってしまう子も。もちろん島の東側でも島の人たちが餌をあげていますけれど…。
以前からあったことではありますが、島民の方々の数が減ってからその傾向が顕著になった気がします。人数が減ればどうしたって以前のようには世話が行き届かなくなりますからね。
あと何年、この子たちがこの島で暮らせるか…願わくば幸せに猫生を全うしてほしいものです。
さて私もちょっとお昼ご飯を食べようかな。猫たちに見つからないところに行って。(^^;