Northern White ~北の絵日記~
この日は朝から曇っていました。昨日の早朝撮影でだいぶ体力を使ったので??
今朝はゆっくり朝寝坊。その代わりちょっと早めに朝食をとってサンクチュアリへ。
まだ昨日で給餌が打ち切られたことを知らないタンチョウたちが来ていました。でも数がだいぶ減りましたね。9時前で20羽ちょっと。

これまでなら朝9:00に給餌なんですが、今日は給餌人が出てこない。
「どうしたんだ?」とばかりタンチョウたちはウロウロと。
「おかしいな~」とばかりに雪面を見ながら歩くけど、ナイものはナイ。(^^;

腹立ちまぎれに?他のツルにヤツアタリするのもいたりして。

「今年はもうエサもらえないのかなぁ?」
「どうだろ~~」

ざわざわ状態。(^^;
でもまだ半信半疑状態みたい。
みんなウロウロしてなかなか立ち去りません。午後の様子も見るつもりかも。そこで貰えないとなったら諦めるんでしょうね。

前にも書いた通り、タンチョウへの給餌は環境省の方針に則する形で毎冬11月16日から翌年3月12日までと決められています。ただ天候状況その他によって若干の変更が行われます。今冬は高病原性鳥インフルエンザに罹患したタンチョウが出たせいで給餌の開始が半月以上遅らされました。安全が確認されるまでタンチョウが給餌場で集まるのを避けたためですが…。
タンチョウたちもこの給餌期間のことはある程度感覚としてわかっていて、10月くらいになると気の早い連中は湿原から鶴居村に移ってきて、あちこちの畑で「落穂ひろい」をしながら、給餌場が「オープン」するのを今か今かと待ってます。
だから晩秋になると鶴居村ではどこの畑もツル・ツル・ツル状態。この時期の湿原から里への移動にはあまり個体あるいは番による時間差はないですね。ほとんど皆一斉に里にやってくる感じ。
これに対して春の移動、つまり鶴居村から繁殖地への移動はかなり差が出るようです。
おおまかにいって番は早めに繁殖地に帰っていくようですね。若鳥たちは遅れて湿原に帰るか、あるいは幼鳥を含めた「若者グループ」は遅くまで鶴居村に残る、という形。
ただ番の中にも早めに湿原に帰って自分たちの縄張り確保を図る(あまり遅く帰ると他の番に縄張りを乗っ取られるケースもあるから)のもいれば、比較的最後まで給餌場付近に居残るのもいます。総じて前者はもう古参?の番で繁殖地に大きなテリトリーを構えている番で、後者はどちらかというと比較的若いカップルでまだ自分の縄張りが小さく流動的な場合が多いようです。さらに言えば前者には根室・風蓮湖・浜中・野付・十勝といった遠方にテリトリーを持っている番が多く、後者には比較的近い釧路湿原やそのその周辺にテリトリーを置くものが多いとも言えるかもしれない。

今年のような暖冬だと、湿原に戻っても早い時期から開氷面が多い(昨日の湿原巡視でよくわかりました)ので、やはり縄張り確保という意味では早めに戻りたいという意識も働くのでしょう。もっとも彼らはいったんそこに戻って自力で採餌できるかを確認しますが。積雪などで採餌が難しいと判断するとまた鶴居村に舞い戻ってきます。
今年は暖冬の常で積雪も多いのですが、昨日見た感じでは充分小魚などを捕らえてエサにすることができそうな感じでもう氷は開いているので、かなり繁殖地に帰っている番が多いものと思われます。例年より早めでしょうね。

ただ、上に書いたのはあくまで平均的なパターンで、タンチョウにも個々の性格の違いというか、セッカチなのとノンビリ屋さんとがいます。(^^;
今の時期給餌場に残っているのはどちらかというとノンビリ屋さんでしょうね。あるいはケンカに自信があって?たとえ自分の繁殖地のテリトリーに先に入り込んだ番がいても実力排除?するだけの腕っぷし(オスの)があるという連中。(^^;

今日サンクチュアリに残ってる三十羽弱というのは、そういう連中でしょうね。
でも今日の夕方になれば「ああ、もう給餌は終わったんだな」というのを彼らも理解するでしょうから。
今日の夕方から明日にかけて、一気に彼らも繁殖地に向かって村を後にすることでしょう。
さてこの時期は、撮影する側の我々にとっても楽な時期でもあります。2月までのように撮影者や観光客が多くない。2月の時は時間帯によってはかなり柵の前が混雑することもあるのですが、3月になると鶴居村を訪れる観光客も激減するので撮影も監察も非常に楽です。もちろん2月に比べればタンチョウの数は少ないのですが、その代わりダンスや交尾といったタンチョウの動きは活発である意味2月よりもこの時期のほうが面白い。言ってみれば、早朝の撮影なら2月(霧氷の付く日が多い)、日中の撮影なら3月なのかも。
ところがこの日は…。
朝9時に私が来たときは私のほかには撮影者は2人だけ。のんびりムードだったのですが…。
11時近くなったころ、やってきた7人ほどのグループ。言葉を聞いていると中国人らしい。男性6名、女性1名。男性のうちの一人はどうやらガイドのような。三脚を持っているのは中年のやや太った女性。他の男性はみなカメラ手持ち。それぞれ柵の前に陣取ってカメラを構えました。
ところがその中年の女性の声の大きさが尋常じゃない。いやハッキリ言って超々ウルサイ!他の男性はごくごく普通の声量で会話しているのに、その女性だけがやたら大声を張り上げている。しかもその女性が三脚を立てたのは私のすぐ隣り。(-_-;)
たかだか一歩か二歩しか離れていない隣りの男性に話しかけるのに、まるでサンクチュアリ全体いやいやネイチャーセンターの中にいても聞こえてくるんじゃないかという大声でしゃべる。
最初のうちはガマンしていた私でしたが、そんな状態が10分近く続くとさすがに耐えられず、三脚をもって10mほど右に離れた場所に移りました。これだけ場所開いてるんだから何も私のそばに来て三脚立てなくてもいいだろうに…と思いながら。
ところがその女性、何を思ったか自分も三脚を持ってまた私のすぐ隣りに移動してきてまたワーワー大声でしゃべる。コイツ、わざとやってるのか??
ガイドさん、いるんなら何か言って注意してよ~~~。
最近、「中国人は外国の公共の場で大声を上げるので評判が悪い」という話はだいぶ中国でも浸透してきたようで中国の旅行社などでは注意喚起を促しているようで「大声を上げる中国人」というのは減ってきたんですが、でもこのオバサンは…。ほとんど「歩く拡声器」いや「歩くメーワク」です!
私もさすがに腹に据えかねました。と言ってケンカしちゃうと国際問題に発展しかねない?ので、再び自分の三脚を持ち上げてこれ見よがしにさっきいた左の方に歩いていき、20m以上離れた場所に移りました。さすがにオバサン、自分が避けられていると悟ったようで私の顔をジロリと見てましたが…。
周囲の同行の中国人男性たちは困ったような顔をして…たぶんいろんな場所で同じことがあったんでしょうね。
件のオバサンはその後30分以上、一人でワーワー喋りっぱなし。まあうるさいこと…タンチョウも面食らったんじゃないかな。さっきまであちこちで盛んにやってたダンスもピタッと止まっちゃって。
やがて正午近くなって、男性の一人(ガイドさんでしょうね)が何か声をかけるとそのグループは撤収を開始。オバサンも三脚を畳み始めて。
タンチョウ指さして何か叫んでるオバサン。
私は中国語はカタコトしかわからないけど、語感から言ってどうも「あんたら全然動いてくれないじゃない!」と言って怒ってたんじゃないかと。確かにこのオバサン来てからタンチョウの動きは止まったからね。
で、彼らが私の後ろを通ってサンクの出口に歩き始めたとき、一組の番が…。

一羽が天を仰ぐような仕草で「グルルルル…」と低くうなりながら歩いていく。その後を相方がついていく。これは…。

交尾の誘い。何度も何度も左右に行ったり来たりすること数分。グルグル鳴いているのが雄、もう一羽が雌。
やがて向きを変えて、雌が前に出てそろそろと翼を開く。

雄の叫び声が次第に切迫した声となって給餌場全体に響く。「クオッ!クオッ!クオッ!」
次の瞬間、雄が雌の広がた翼の上に足をかけて飛び乗る。

そして…雄の声は次第に興奮の極に達したように切迫感を加えていき、雌の翼の上で羽ばたきながら体をゆするように沈めていき…


交尾。

これほどいい角度で、しかも他のツルが画面に入り込まずに撮れることは珍しいです。
交尾が終わると雄は雌の前に降り立ち、やがて二羽で愛を確かめるかのようなポーズ。これはちょっと角度がイマイチだったけど。

はるか斜め後ろのほうでさっきのオバサンが何か叫んでいるのが聞こえる。チラリと見れば、もう駐車場の入り口あたりまで歩いていっていて、あわててカメラを出そうとしていた様子。その場所から撮ろうとしても角度は悪いし柵が邪魔になって撮れないはず。正直「ザマーミロ!」と思いましたよ。(^^;
いいシーンが撮れたところで、いったんTAITOに戻って昼食。
そのあとちょっと部屋で昼寝をしてから14時過ぎにまたサンクに行ってみました。今度は三脚なし、カメラ一台だけを持って。

来ていた方は5人ほど。静かでした。
タンチョウの数は半減していました。本来14時の給餌時間を過ぎても音沙汰なしなんで「これはもうダメだ」と悟って飛んで行ったツルも多いんでしょう。いや今朝の時点でもうあきらめた番も多いかも。

今日も暖かい。15時の時点で気温+6℃。

彼らも「そろそろ行こうか」と相談してるんでしょうかね。帰る先は釧路湿原か、風蓮か、それとも…?

給餌場を見回すと、ポツンと一羽で歩いている幼鳥がいました。

まだ子別れされたばかりなんでしょう。しきりに鳴いて親鳥を探していました。その声がなんとも悲痛で…。
動画撮ってあります。三脚なしの手持ちだったため画面がフラフラしていて、おまけにピンボケになっているシーンが多くて見づらいですけど、雰囲気は感じ取っていただけると思います。
3月…この頃のもう一つの大きなイベントは子別れ。親鳥は次の繁殖に入るため、繁殖地に帰る前に幼鳥を突き放します。最初は徐々に、そして次第に攻撃的になり自分の子供を追い払う。それは自分たちの次の繁殖のためであると同時に、わが子の独り立ちを願ってのことでもあります。そしてある日、幼鳥を置き去りにして繁殖地に戻っていく…おそらくこの幼鳥は今日子別れをされたのでしょう。生まれ月が遅い子だったんでしょうね。
「お父さん、お母さん、ボクを置いてどこに行っちゃったの?」
そう叫んでいるような。
でもどんな動物でもわが子が憎い親などいない。心を鬼にして飛び立っていった親鳥はいつまでもわが子のことを心の底で思っているはずです。次の冬に立派に亜成鳥となったわが子に再開することを願いながら…。
おや、こちらには成鳥と一緒の幼鳥が…

まだ子別れされてないのかな?
と思ったのですが、二羽揃って飛び立つ姿を見れば、

片方は成鳥ではなく亜成鳥ですね。翼の斑点の様子から見て去年生まれた二年生のようです。
子別れされた幼鳥は、給餌場で幼鳥同士あるいは亜成鳥とのグループを組んでこれからの季節をしばらく過ごすことになりますが、とりあえずこの幼鳥はこの亜成鳥とペアを組むようです。
もしこれが雌雄であれば、将来のカップルになるかもしれません。
頑張れ!
さあ明日はまた早朝撮影です…。