気象衛星「ひまわり」
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6月1日は「気象記念日」です。 1875年6月1日に、日本初の気象台である「東京気象台(現在の気象庁)」が設置され、 気象と地震の観測が東京で開始されたことを記念し、1942年に制定されました。 ・・・というわけで、「気象」に関する話題として、今回は、気象衛星「ひまわり」を取り上げます。 【軌道半径】 日本の気象衛星「ひまわり」は、静止衛星です。 「静止衛星」とは、赤道上空の円軌道を、地球の自転と同じ角速度で回る人工衛星のこと。 地球の自転と同じ角速度なので、私たちからは止まって見えます。 赤道の上空にいる・・・とのことですが、どれくらい上空にいるのか、軌道半径を求めてみましょう! 静止衛星の軌道半径をr、地球自転の角速度をωとすると、静止衛星の運動方程式は、次のようになります。 ![]() ここで、mは人工衛星の質量、Mは地球の質量、Gは万有引力定数です。 この式は、高校物理で学ぶ「円運動」の運動方程式です。 運動方程式「(質量)×(加速度)=(力)」は、高1で学びます。 円運動の加速度が「rω2」で表されることは、高2で学びます。 したがって、式@の左辺については、高校物理で解決します。 一方、右辺は「万有引力」でして、一応、高校物理にも登場するのですが、 特に説明はなく、天下り式に覚えさせられるものです。 万有引力が、なぜ、このような式で表されるのか?・・・当塾にて、一緒に学びましょう! 式@を変形すると、 ![]() 理科年表によると、 GM(地心重力定数)は 3.986004356×1014(m3/s2) ω(地球の名目平均角速度)は 7.292115×10-5(rad/s) であり、これらを代入して計算すると、r= 42164.1726(km)になります。 ただし、この値は、地球の中心からの距離なので、 地表面からの距離にするには、地球の半径分を引かねばなりません。 地球の半径は6371kmであり、この分を差し引くと、静止軌道の半径は 35793.1726(km)となります。 「静止衛星は、約3万6000km上空にある。」というのを見聞きしますが、 恐らく、この値を、百の位で四捨五入しているのでしょう。 ちなみに、明け方や夕方に見える国際宇宙ステーション(ISS)は、“高速で動く星”のように見えますが、 これは、地球自転の角速度よりも速いからです。 式Aにおいて、角速度(ω)は分母にあります。 分母が大きくなると、値全体としては小さくなるので、 ISSは、静止衛星よりも低い位置を飛んでいることが分かります。 実際、静止衛星が約3万6000km上空なのに対して、ISSは約400kmの高さです。 【赤外線の可視化】 気象衛星から送られてくる雲画像は、時間帯が日中のものもありますが、もちろん、夜のものもあります。 もし、私たちが宇宙から地球を見た場合、夜の時間帯になっている地域に見えるのは、 街の明かりが点々と光る様子だけであり、雲を見ることはできません。 では、気象衛星から送られてくる夜の雲画像は、光ではなく、何を見たものなのでしょうか? ・・・「赤外線」です。 ![]() 私たちが見ている光は、電磁波の中でも「可視光線」と呼ばれる波長領域のもので、 波長の長い赤色から、波長の短い紫色までを見ています。 「赤外線」とは、文字通り、“赤色の外側の線(電磁波)”であり、 可視光線の外側なので、私たちの目には見えません。 赤外線は、絶対零度より高い温度の物質なら、必ず放射されており、 その放射量は「ステファン・ボルツマンの法則」により、絶対温度の4乗に比例して増加するので、 温度変化を、赤外線量の変化として可視化することができます。 気象衛星「ひまわり」では、温度の低い上空の雲を白く表現しています。 「ステファン・ボルツマンの法則」は、高校物理では登場しませんが、 高校物理で学ぶ「熱力学」の発展と、高校数学で学ぶ「微分積分」の発展を組み合わせれば良いです。 どのような式変形を進めていけば、この法則を導き出せるのでしょうか?・・・当塾にて、一緒に学びましょう! |
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