違和感を感じた問題
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3月14日は「数学の日」です。 円周率(3.14)に因んでいます。 ・・・というわけで、今回は、数学に関する話をしましょう。 【違和感を感じた問題】 以前、生徒さんと、高校数学で「確率」の問題演習をしているとき、 生徒さんがもってきた問題集に、次のような問題がありました。 ジョーカーを1枚含む、1組53枚のトランプから、カードを1枚ずつ続けて引いていく。 10枚目にジョーカーを引く確率を求めなさい。 ![]() 9枚目までは、ジョーカー以外のどれかを引き続けて、10枚目にジョーカーを引くことになるので、 上のような計算をして、答えは「 1/53 」になる!・・・問題集の答えと合っていました。 恐らく、入試などテストなら、これで問題なさそうです。 ・・・しかし、この問題、何か違和感があるんですよね〜。 【“当選確率平等”】 年に2回、兵庫県西宮市にある甲子園で、高校野球が行われます。 全国の強豪校が集まり、トーナメントを勝ち抜き、全国制覇を目指します。 大会に先立って、組み合わせ抽選会があり、そのときに、開会式で選手宣誓をする人も決めます。 選手宣誓を決める際、希望者の人数分だけ封筒が用意されます。 中には、白い紙が入っており、1枚だけ「選手宣誓」と書かれています。 希望者は、順に、1人1枚ずつ、封筒を選び取っていきます。 このとき、大事なのは、最後の1人が封筒を取り終わるまで、開封してはいけません。 先に取った人が開封しそうになったとき、司会者が「まだ、開けないでください。」と注意しています。 最後の1人が取り終わるまで開封しない・・・というのが重要でして、 これにより、封筒を取る順番に関係なく、当選確率が平等になります。 もし、最後の1人が取り終わるまでに誰かが開封して、中身を確認してしまうと、 その時点で、“当選確率平等”が崩れてしまいます。 【違和感を感じた理由を考えてみた】 先の「トランプの問題」で、答えが「 1/53 」ですが、これは、1枚目にジョーカーを引く確率と同じです。 今回は「10枚目」でしたが、 実は、「何枚目か?」ということに関係なく、常に、ジョーカーを引く確率は「 1/53 」になる。 ・・・という“当選確率平等”を学ばすための演習例題であるような気がしました。 しかし、実際の状況をイメージしてみてください。 “当選確率平等”というのは、言い方を変えれば、“何回目にジョーカーを引くか分からない”ということ。 「10枚目にジョーカーを引く確率」というのは、 「10枚目にジョーカーを引く」ことが、既知の前提になっています。 カードを引く行為を10回で止めてしまっていることに違和感を感じたのかも知れません。 “当選確率平等”が成り立つためには、試行が完全に終了しておかねばならないような・・・。 カードを引く行為を53回続けて、その後、「さぁ、この53枚の、どれがジョーカーだ?」と問われ、 53枚から1枚を選ぶから、初めて「 1/53 」が成り立つのでは・・・。 つまり、記述解答としては、次のように書かないとダメなのではないでしょうか? ![]() そして、問題文自体も、 「10枚目にジョーカーを引く確率を求めなさい。」 ではなく、 「53枚引いた後、たまたま偶然、10枚目に引いたカードがジョーカーだった確率を求めなさい。」 と改めるべきではないのでしょうか? 【現在と未来】 「確率」のテスト問題で正しい答えを出して得点を出すことは、 「テスト問題」だから・・・と割り切って、こなしていけば良いでしょう。 それで点数を稼いで「成績優秀」となれば、誰も文句は言わないでしょうし、大学にも行けます。 時間が止まらず、前に進み続け、制限時間内で結果を出さなきゃいけない現実社会において、 現在進行形である日常生活の行為としては、こうすべきでしょう。 ただ、そのような実績、結果を出しつつも、並行して、 未来に向けては、絶えず、「確率とは、何ぞや?」と考え続けねばなりません。 でないと、先日、その確率が引き上げられた「南海トラフ巨大地震が30年以内に起こる確率80%以上」も、 何の意味もないことになってしまいます。 皆さん、「Xデー」に対して、どこまで備えています? はぁ〜、「確率」と、どのように付き合っていけば良いのでしょうか? あー、難しっ。・・・でも、諦めない!! |
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