水銀の密度
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先日、中学校に通う生徒さんとの授業の中で、たまたま話題になったことです。 「水銀の密度は、変動しないのか?」 圧力について勉強している最中、イタリアの物理学者トリチェリが実験した「水銀柱」が出てきました。 一方の端が閉じたガラス管に水銀を満たし、水銀を満たした皿にこれを立てると、 水銀の高さが76cmになった・・・という、教科書や参考書に出てくる“あの話”です。 @水銀柱の高さ、A水銀の密度、B重力加速度・・・の3つが分かれば、大気圧を求めることができます。 水銀柱の高さを h(m)としましょう。 ガラス管の断面積が S(m2)だとすると、水銀柱の体積は Sh(m3)となります。 この体積に、水銀の密度を掛ければ、水銀柱の質量が出てきます。 密度を d(g/cm3)とすると、水銀柱の体積は、単位変換すると Sh × 106(cm3)なので、 水銀柱の質量は Sdh × 106(g)= Sdh × 103(kg)になります。 質量に重力加速度を掛けると、重力(重さ)が求まります。 重力加速度を g(m/s2)とすると、水銀柱の重さは Sdgh × 103(N)となります。 これを断面積で割れば圧力になります。この水銀柱による圧力は dgh × 103(Pa)です。 この圧力と大気圧が等しいわけです。 教科書や参考書では、h = 76(cm)= 0.76(m)、d = 13.6(g/cm3)、g = 9.8(m/s2)として計算し、 「101292.8(Pa)」あるいは「1013(hPa)」として載っています。 ここまでなら、どこにでもある話なのですが、生徒さんとの話には続きがありました。 理科年表を見ると、 大気圧:101325(Pa) 水銀柱:76(cm) 重力加速度:9.80665(m/s2) は、いずれも「定義値」になっています。 すなわち、変動しない固定値です。 大気圧が、先ほど計算した結果と微妙に異なるのは、重力加速度などの値のズレのためでしょう。 これらのことから伺えることは何なのか?・・・水銀の密度も固定値になるはずでは・・・。 (水銀の密度)× 9.80665 × 0.76 = 101325 から、 (水銀の密度)= 101325 ÷ 9.80665 ÷ 0.76 となります。 右辺にある3つの数値は、いずれも定義値(固定値)なので、水銀の密度も固定値だ!・・・というわけです。 理科年表には水銀の密度も載っています。・・・13.546(g/cm3)でした。 しかし、これは、ある年の理科年表のデータであり、別の年の理科年表を見てみると、 13.534(g/cm3)とあり、少し異なる値です。 水銀の密度として載っている値は「測定値」のようです。 ふ〜む、“水銀の密度”は、いったい、どうなっているのでしょうか? |
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