宇宙の膨張

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【赤方偏移】


複雑な情報や信号を、その成分に分解し、成分ごとの大小に従って並べたものを「スペクトル」と言います。

光をプリズムや回折格子に通すことで得られるスペクトルを「分光スペクトル」と言い、

18世紀から19世紀にかけて、分光スペクトルを研究する「分光学」が活発になりました。

恒星では、星表面のガスに含まれる原子やイオンから放射される光(輝線)や、

フラウンホーファー線と呼ばれる吸収線(暗線)が見られるので、

これらの輝線や暗線のパターンによって恒星を分類することが盛んに行われました。



1912年、アメリカの天文学者ヴェスト・スライファー(1875−1969)が、

恒星スペクトルの波長が、実験室における波長に比べてずれていることを発見しました。

この波長のずれがドップラー効果によるものだとすれば、恒星の視線方向の速度に起因するものと解釈できます。

すなわち、波長が赤色の方向へずれている(赤方偏移している)と、恒星は遠ざかっており、

波長が青色の方向へずれている(青方偏移している)と、恒星は近づいていることになります。

スライファーは、1922年にかけて41個の系外銀河のスペクトルを観測し、

そのうち36個もの銀河が赤方偏移していることを発見しました。



【ハッブルの法則】


同じ頃、アメリカの天文学者エドウィン・ハッブル(1889−1953)と、

その助手のハマソンも、赤方偏移を観測していました。

ハッブルが渦巻星雲にセファイドを見つけて、その変光周期と見かけの明るさを測定することで、

その渦巻星雲までの距離を決定する一方、

ハマソンは、その渦巻星雲のスペクトルを撮って視線方向の速度を計算する観測を行いました。

そして、1929年、天文学会に一大センセーションを巻き起こすことになったのです。



ハッブルらの示した結果は、ほとんどの銀河は私たちから遠ざかっており、

その遠ざかる速さ(V)は、その銀河までの距離(R)に比例しているというものでした。

すなわち、「V=H×R」という関係が成立すると結論づけたのです。

(H)は比例定数で「ハッブル定数」と呼ばれ、この関係式を「ハッブルの法則」と言います。



(こぼれ話)

ハッブルの助手であるハマソンは、

最初、天文台のあるウィルソン山に食糧や観測機器を運ぶ馬車の御者でした。

その後、守衛となって働いていた頃、その器用さと熱心さを買われて助手に抜擢されたようです。


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