地学から考える日本
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小学1、2年生で「生活」と言われていた科目が、小学3年生から「理科」と「社会」に分かれます。 そして、中学生になると、理科が「第1分野(物理・化学)」と「第2分野(生物・地学)」に分かれます。 さらに、高校生になると、教科「理科」の科目として「物理」「化学」「生物」「地学」の4科目に分かれます。 こうしてみると、4科目とも平等なはずなのに、どういうわけか“虐げられている感”がある「地学」。 ここ数年の共通テスト(センター試験)の受験者数を見ても、明らかに「地学」選択者は少ないです。 2020年 2019年 2018年 2017年 2016年 物理:153140人 156568人 157196人 156719人 155739人 化学:193476人 201332人 204543人 209400人 211676人 生物: 64623人 67614人 71567人 74676人 77389人 地学: 1684人 1936人 2011人 1660人 2126人 高校の授業で、そもそも選択肢に入っていないケースもあるようです。 台風や地震などの自然災害が多い日本だからこそ、その防災対策に優れた人材を送り込みたいところです。 (01)台風で最も気になるのは、やはり、「風の強さ」でしょうか。 2018年の台風21号により、阪神エリアは大規模な停電に見舞われました。 強風の影響で電線が切れ、電柱も根元から折れる始末。マンションでは水を汲み上げるポンプが止まり、断水。 台風の中心気圧が低いほど風が強くなるのは、なぜでしょうか? (02)台風(低気圧)は、なぜ反時計回りなのだろう? 中学校理科の問題で、高気圧・低気圧の吹き出し・吹き込み方向を問う問題をしばしば見かけます。 「風は、コリオリの力で、右に曲がりながら進む。」という説明で、高気圧の方はシックリくるのですが、 この説明だと、低気圧については一瞬戸惑ってしまいます。もう少し考えてみましょう! (03)台風の進路は、気象衛星「ひまわり」から送られてくる観測データの解析により予測しています。 現在運用されているのは「ひまわり8号」(2023年まで観測予定)。 後継は、2016年に打ち上げられた「ひまわり9号」(運用は2022年から2028年まで)。 観測データは、可視光線による植生・エアロゾルの画像、赤外線による雲画像・水蒸気量・海面水温、など。 (04)アメダス(自動気象データ収集システム)の運用が始まったのは1974年から(今年で45年)。 測定機器を用いて気象観測が行われるようになったのは19世紀に入ってからで、 日本では、気象庁の前身である東京気象台が1875年に観測を開始しました。 国内約1300ヶ所に設置されているアメダスで、降水量・気温・日照時間・風向・風速を観測しています。 (05)1日の中で最高気温に達する時刻は、なぜ南中時刻より遅れるのだろう? 小学4年生の算数で「折れ線グラフ」について教わります。 時を同じくして、理科では「1日の気温の変化」を観測し、折れ線グラフを作成します。 ところで、1日の最高気温は午後2時頃に記録され、南中時刻からズレていますが、どうしてなのでしょう? (06)気温と飽和水蒸気量の関係 「飽和水蒸気曲線」を御存知ですか?・・・理科の授業でも見かけます。 横軸に「気温」を、縦軸に「飽和水蒸気量」をとったグラフのことです。 このグラフ、なぜ気温が高いほど、飽和水蒸気量が増えるのでしょうか? (07)日本の天気は、なぜ西から東へ移っていくのだろう? ある日に九州で雨が降ると、だいたい次の日に近畿地方から関東地方のどこかで雨が降ります。 このように、日本付近の天気は西から東へ移っていきます。これが偏西風の仕業であることは有名な話。 では、なぜ日本付近では、風が西から東に吹くのでしょうか?・・・コリオリ力だけでは説明できません。 (08)気象庁が、なぜ水象(海洋)のことも扱うのだろう? 「気象」とは“大気の現象”なので、大気のことを扱うのが気象庁なのでは?・・・と思うところです。 エルニーニョなど、海面水温の変化が気象に影響することもありますし、 台風の発生・発達も海洋の影響を大きく受けるので、気象を考えるときに海洋まで扱う必要があるのです。 (09)貿易風が変動する理由は、実は、まだ解明されていません。 太平洋で貿易風が弱まると、ペルー沖に温かい海水が流れ込むのが「エルニーニョ」です。 世界各地で異常気象になり、日本は長い梅雨・冷夏・暖冬になります。 ところで、なぜ貿易風が弱まるのでしょうか?・・・地球の自転と関係するのかな? (10)「気候」は時間幅をもった気象なので、これも気象学の範囲に含まれます。 ある時刻における大気の現象が「気象」、ある期間(例えば1年間など)における大気の現象が「気候」 よって、「気候変動」となると、1つ1つの区切り(期間)をどのスケールでとるかによって解釈も違います。 「平年並み」という表現の「平年」とは、いったい何を意味するのか・・・と同じ疑問が湧きますね。 (11)長期間における気候変動を考えるためには、古気候や古環境を復元する必要があります。 人類が測定した気象データで遡れるのは、せいぜい200年ほどです。 それよりも前の気候や環境を知るために、いろいろな方法が採られています。 古文書の解析(約千年前)、花粉化石の分析(数万年前)、氷床コアの解析(数十万年前)、・・・など。 (12)気象庁が、なぜ地象(地震や火山)のことも扱うのだろう? 自然災害の防止・軽減に努めるのが気象庁の役割なので、台風だけでなく、地震や火山も扱っています。 天気予報は気象庁独占の業務ではなく、民間でも行われています。 気象庁における天気予報は“自然災害に備えるためのツール”という位置付けです。 (13)地震の正体は“プレートの運動により岩盤に溜まったひずみが解放されるときの揺れ”です。 プレートを動かす原動力は、地球内部で放射性同位体が崩壊するときに発生する熱などです。 「プルームテクトニクス」における「ホットプルーム」は、まだイメージできるのですが、 「コールドプルーム」のイメージがなかなか難しいですね。 (14)「地殻」「マントル」「核」・・・地面の下って、どのようにして調べたのだろう? 地面の下は、地殻があって、さらに下にはマントルがあって、さらに下には核があります。 半径6000kmを超える地球の中心まで、とてもスコップで掘って確かめたとは思えませんが、 いったい、どのようにして地下の構造を知ることができたのでしょうか? (15)「津波ハザードマップ」の作成に必要な情報 海底で地震が起これば、津波が襲ってくる危険性もあります。 「津波ハザードマップ」の作成に必要な情報は、その土地の標高や水平距離といった測量結果の他に、 津波による被害をコンピュータによりシミュレーションしたデータが必要です。 (16)2027年に超伝導リニアによる東京−名古屋間での開業を予定している「中央新幹線」。 老朽化してきた東海道新幹線の長期運休を伴う改修工事がそろそろ必要なため、代替輸送手段として、また、 阪神淡路大震災で山陽新幹線が長期不通となったので、東海地震で東海道新幹線が不通となった時の備えに。 南海地震や東南海地震に比べると、前の地震からの間隔が少し空いている東海地震は気になりますね。 (17)超伝導を免震システムに利用してみてはどうだろう? 地震が発生すると、建築物は、その地震の強さによって大きな被害を受けることがあり、 免震(地震力を受けないこと)や耐震(地震力を受けても壊れないこと)が、被害軽減につながります。 建築物を超伝導により浮上させることで免震できないでしょうかね。 (18)マグマの粘り気の違いにより、いろいろな形の火山があります。 粘り気の違いは、マグマに含まれる二酸化ケイ素の割合により生じており、 二酸化ケイ素の割合が高いほど、粘り気が高くなります。 二酸化ケイ素の結合は3次元の網目状に広がっていくので、その割合が高いほど、構造が崩れにくいわけです。 (19)玄武岩の磁気を観測することで、火山の噴火時期を特定することができます。 地球が自転すると核に電流が流れ、それに伴い磁場が発生します(ダイナモ理論)。 磁場をかけると磁気を生じる物質を「磁性体」と言い、鉄やニッケルは強磁性体です。 マグマが地表近くまで上昇すると、キュリー温度を超えた岩石の磁性が弱まります。 |
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