成田空港からラスベガスに向かう飛行機にて


受け付けでの申請の通りに、僕の座席は飛行機のちょうど真ん中くらいの位置にある
トイレのすぐ前の通路側の席、しかも全席には人がいない上に
僕の列は4人掛けの席だったのだが、ここにも僕の他には
反対側の通路側に一人だけという絶好のポジションであった
当然の様に、まだ携帯電話の電波はかろうじて入ってきてはいるが
これもほどなく圏外になってしまうだろう
これからしばらくはこの愛用の携帯も、ただの時計と化してしまう
飛行機のシートというのは噂には聞いてはいたのだが
まるで小さなセダンタイプの乗用車の後部座席の様に足場が狭い
多少はリクライニングもするのだが、はたしてこれでゆっくりと眠る事などできるのか?
っと思ってしまうほどに居心地が悪すぎる
やっぱり僕には飛行機は向いていない様だ
しかしもうここまできたら引き返す事などできるはずもない
飛行機に乗り込んでから約20分後、そんな覚悟を決め始めた僕の思いとはうらはらに
ゆっくりと飛行機が走り始めた
これがまだ夜だったならば、遠い窓から見える景色も真っ暗闇の中だったのだろうが
残念ながら2月の16:00では、まだ外はかろうじて明るい光に包まれている
飛行機の走る振動が、そして窓から見えてくる景色の流れが
より一層、僕の恐怖心をあおっていく
「このまま飛び立つ事なく爆発炎上してしまうんじゃないか?」
「飛び立ったとしてもすぐにどこかで墜落してしまうんじゃないか?」
そんな思いが心の中を駆け回り、僕は今更ながら後悔した
こんな生まれて初めての飛行機や海外旅行に一人で行こうと思ってしまった事を
そんな怯えきった僕をあざ笑うかの様に、一気に加速していく飛行機
すごい加速Gと振動だ、これはもう富士急のFUJIYAMAの比ではない!
恐怖におののき顔を伏せて、気を失いかけたその瞬間
振動が弱くなり、まるでパラグライダーで空に昇っていく様にフワッと
飛行機はゆっくりと上昇を始めた
その瞬間、僕は確信した!
「僕のこの長い様で短い30年間の一生は終わった」と...笑

何事もなく飛行機は、ほどなく安定飛行に入りはじめた
ときおり風の影響なのかひどく飛行機が揺れる事はあるが
すでに終わっていると思っている僕には
まるでディズニーランドのスターツアーズの様な物だった
飛んでいるスピードも車とはケタ違いな為、風切り音なのか音がすごい
地下鉄に乗っているかの様な音は、どうも耳障りで気になってしかたがない
飛行機の中で上映していた映画も万人受けする為なのか
『スピード2』と『ホワイトアウト』以外はまったく知らない
何だかつまらなそうな物ばかりだった
持ち込んだMDで好きなDEENを聞きながら到着を待つ事になりそうだ
行きの飛行機は直行の為、現地へ到着するまでに約12時間
この間禁煙なのは何よりもつらかった
途中、夜食と朝食が振舞われたが、あまりお勧めできる様な物ではなかった
しかも揺れる、まるで大地震でも起きたかの様に
食事時になると決まって気流の悪い所へ入ってしまう為か揺れるのだ
はっきり言ってご飯ののっているお盆を押さえておかないと
どこに飛んでいってしまうかわからないほどだった
周りを見ればやはり皆、必死になって我慢をしている
しかし僕は抜群のバランス感覚を駆使して残さずたいらげたよ(笑)
それ以外の就寝の時間になれば、飛行機内の電気も消えて
皆、思い思いの体制で眠りについていた
僕は初めてで慣れない飛行機のせいか、到着までまったく眠る事ができなかった
持ち込んだラスベガス関係の雑誌も、機内にある雑誌も
まったく読む気力さえない状態の中、僕が思っていた事は
一刻も早く僕を地面に降ろしてくれぇ〜だった

かなりの時間が経過して、窓の外も次第に明るくなり始めた頃
軽い朝食を済ませて、フッと窓の外を見るとアメリカの大地が広がっていた
長かった...はっきり言って人生でこれほど長く先を感じた時間は無かったほどに
この飛行機の中での拘束は長かった
やがて目的地であるラスベガスのマッカラン空港の姿が見えてきた
ついに来たのだ!初の海外に
しかしここで油断をして墜落でもされたらかなわん
無事に着陸してください、機長様ぁ〜と祈りをささげていると
降りていく...飛行機がその勇姿を斜めに傾けながらゆっくりと降りていく
強力な着陸の振動の後、飛行機はゆっくりと例の振動をともない走り始めた
いよいよ着いた!やって来たのだ!
今回の目的地であるラスベガスへ