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デナリ国立公園



【7月14日】

2日目は、タイガ(針葉樹林帯)とツンドラ(永久凍土帯)を通り、グリズリーなどの野生動物に出会うチャンスもある、デナリ国立公園ツンドラ・ワイルドライフ・ツアー (Tundra Widlife Tour) に参加。

デナリ国立公園は、北米最高峰のマッキンレイ山(標高6194m)を中核とした雄大な自然保護地区 (National Park & Reserve) で、その広さは日本の四国と山口県の面積を足した大きさです。アラスカ州内の国立公園の総面積は州全体の7.5分の1を占めており、その中でデナリ国立公園は4番目の大きさとのことですから、アラスカ州がいかに大きいかが分かります。ちなみに、アラスカ (Alaska) という州名は、アリューシャン民族語の「アリエスカ」(広い土地という意味)に由来しているそうです。

公園入口のあたりは、タイガ(針葉樹林)の森が広がり、氷河の雪解け水を運ぶホースシュー・クリークやライリー・クリークが流れていて、緑豊かなところです。



針葉樹林に囲まれた馬蹄形のホースシュー・レイク。
鏡面のホースシュー・レイク湖畔。


ホースシュー・レイクにはビーバーがたくさん棲息しているとのこと。湖面が突然に波立ち、なにか動物が泳いで渡っていきます。あっ、ビーバーだ!と思い慌ててシャッターを押しました。後でガイドさんに聞いたら、これは「ジャコウネズミ」だそうです。でも、ネズミとは言っても、体長は40センチほどはありました。



ツアーバスは、アメリカ映画などでよく見かける黄色のスクールバスを、白っぽい色に塗り替えて転用したもので、運転手さんはガイド役も兼ねています。乗客は我々日本人グループ9名、米英語を母国語としている人たち、総勢50名ほどで満席です。

朝6時半、バスは公園入口近くのホテルを出発。最初の30分ほどは舗装された道をすいすい走りましたが、一般車両の立入り制限の監視をしているレンジャー・ステーションを過ぎると、道はがたがた路になります。氷河で削られたような岩山群をバックにした広大なツンドラ地帯が広がり始め、雄大な自然の景観が楽しめます。


 (太枠の写真はクリックで拡大します)

タイガの林とクリーク ツンドラ地帯がはじまる ツンドラの草原


永久凍土のツンドラ地帯というから、草木なども全然生えていない茶褐色の大地を想像していたのですが、夏の間は写真 (クリックで拡大) のように緑色の柔らかそうな草地で、ピンク色のファイヤウィードがあちらこちらに群生しています。

乗客の一人が突然「Stop!」と叫び、「Grizzly Bear, Nine O'clock, 300 Yards」と大声でしらせています。アラスカヒグマ(グリズリー)が左横300ヤードにいるのを見つけたようです。

バスが停車し、発見者の乗客が指差す方向に皆も一斉に目を凝らし始めました。間もなく「いたぞ、いたぞ!」という声がバス車内のあちこちから聞こえてきます。やがて私も遠くの草叢に茶色っぽいものを見つけ、目いっぱい望遠にしたデジカメを向けました。

初めて見る野生のグリズリーベア!。ここは俺の土地だと言わんばかりに気持ち良さそうに草叢の中で横になり、ときどき首を持ち上げて周りを眺め回しています。ゆったりと寛いでいるグリズリーの所作をファインダーで覗いていると、やったー!という嬉しさが湧いてきました。


デナリの観光シーズン最盛期は7月上旬〜8月中旬までで、8月半ばを過ぎると気温も下がりだし、寒い日には雪が降ることもあるそうです。しかし、この観光シーズン期間の天候は不安定で、すっきりと晴れた日に訪れた人は運が良いとのこと。バスのドライバーも「普通は Toklat River Point までで折り返すけれど、今日は天気も良くマッキンレイ山が見えるかもしれないから、奥の Stony Hill Point まで行ってみよう」と大サービスです。

左側が断崖絶壁の曲がりくねった急坂道の岩場に、ドールシープ (Dall Sheep) がいます。こんな急峻な岩場でよく棲息しているなと思いますが、彼等にとってはグリズリーベアやオオカミも襲って来れない一番安全な場所なのです。



出発してから約4時間、バスは最終地点の Stony Hill Point に到着です。ここからマッキンレイ山まではまだ約60Kmもあるとのことですが、真正面に聳え立っているのを望見できます。晴れてはいるのですが、昼を過ぎた陽光のせいなのか、フェアバンクス近郊で発生している山火事の煙のせいなのか、くっきり・すっきりの眺望ではなく、ちょっと霞がかかっているのが残念です。



Stony Hill Point のビューポイントからは、スケールの大きいツンドラ地帯が見渡せます。幾く筋もの道のように見えるのは、春先に雪解け水が流れてできた跡です。とにかく「広大」の一言です。




帰路、トイレ休憩で立ち寄ったイグルー・クリーク・キャンプ場横で、川幅50m以上はあるクリークに架かっている橋の下に、数頭のカリブー (Caribou) がひっそりと隠れるように屯しています。

トイレ駐車場には我々のバスのほかにも4〜5台のツアーバスが停まっており、多くの観光客がいますが、皆な遠くからじーっと静かにカリブーを見守っています。自然の生態系をいささかも乱すまいとするそのマナーに感心してしまいました。

一方、もしこれが日本だったら?、多くの観光客はどういう行動をするかな?と、ふと考えてしまいました。


 


ホテル帰着は午後3時頃。ガタガタ揺れる砂利道を走るバスの中に座ったまま8時間を超える大自然ウォッチング・ツアーでしたが、心に満足感の溢れる充実した一日でした。



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