東大世界史     文責/Junca・風来坊・Kay

1.概要

2.傾向

3.勉強法

4.お勧め参考書・問題集

5.その他

・試験時間:地歴2科目で150分間(試験2日目の1コマ目)
・配点:60点満点
・構成:第1問が大論述(450~600字程度の論述問題)、第2問が中小論述(~150字程度の論述問題)、第3問が一問一答(年によっては30字程度の小論述含む)。
・解答用紙:A3版1枚で、表面に(イ)・(ロ)、裏面に(ハ)・(ニ)の記号の付された解答欄(方眼、1行30字)が印刷されています。これは日本史・世界史・地理共通の解答用紙で、受験生はその解答用紙で解答する科目名を(  )内に書き込んだ上、解答用紙上部の「世界史」の部分の三角形をハサミで切り取ります。当日、ハサミは必ず持参しましょう。また、世界史は大問3題構成ですので、解答欄は(イ)=第1問、(ロ)=第2問、(ハ)=第3問しか使いません。

(文責/Junca)

 ここ数年、大論述は約17行程度と比較的少なめの文字数で推移していましたが、2014年入試では20行に戻りました。小論述も近年は2行ほどを書かせる問題が多く並んでいたのが今年は4行記述が復活、第3問も1行記述が2問出題されました。(文責/風来坊)

 また内容にも傾向はあります。大問ごとに見ていきましょう。

 まず、点を落としてはいけない第3問。政治史に限らず経済史や文化史もよく出ます。すべて文化史だったこともあります。やまをはったりせずにきちんと万遍なく勉強してください。

 次に点を稼ぎたい第2問と勝負の第1問。東大好みのテーマが明らかにあって、過去問をやってるうちに分かってきます。複数の時代や地域に渡ることが多いので、時代ごと・地域ごとには言えませんが、テーマでは東西交流史、世界の一体化、主権国家、パックス=ブリタニカの衰盛、帝国論、植民地支配とナショナリズムあたりが頻出です。あと、ある勢力とある勢力が衝突して、何らかの変化や交流、影響をもたらしたような事象もよく出ます。(文責/Kay)

①第1問 大論述
 第1問は与えられたテーマにしたがって歴史をダイナミックに俯瞰し、自分なりにストーリーを構成する力が問われます(大論述の書き方としてよく言われるのが「単なる知識の羅列ではない」ということです)。
 勉強法としては、まず知識をとにかく詰め込んでください。どんなに文章が上手でも、どんなに字を書くのが速くても、アウトプットできる知識がなかったらなにも書けません。一問一答を何周もするのはもちろんのこと、教科書、資料集、あらゆるものを読みましょう。また、ここで注意すべきは、因果関係を無視して暗記するのではいけない、ということです。前述のとおり大論述は知識の羅列ではなくストーリーを持った文章を書くことが求められるといいます。歴史的事象の原因/背景や結果/影響をよくおさえておきましょう。
 さらに、年号暗記もおすすめします。論述ではよく「○世紀~×世紀の△△について…」などと問われます。せっかくたくさんの用語を覚えてもそれがいつの出来事や人物であるのかわからなければ、指定された時代に含まれているのかわからなくなってしまうでしょう。できるだけたくさんの年号を語呂合わせなどで覚えておくと、論述およびセンター対策にもなります。
 それから、指定語句について。東大の大論述ではほとんどの場合、8個程度の指定語句があります。それらをすべて解答のなかで使用し、使用した箇所ではその語句に下線を引くことになっています(必ず守りましょう。また、初出のときだけ下線を引けばいいのか、使ったときすべてに引けばいいのかは見解が一致しませんが、あまり気にすることはないと思います。とにかく一語に一度は引くように気をつけましょう)。指定語句については、これを「ヒントだ」という講師の方や「足枷だ」という講師の方がいて、ここではなんとも言えません。しかし、よくよく見ていくとわかるのですが、問題文に沿って解答をつくろうとすると指定語句の多くは「指定されていなかったとしてもどうせ使わなければならなかった」ようなものだったりします。ですから指定語句を見るタイミングについても、「はじめに見て分類する」という人や「はじめは見ずに構成を考えて、あとからあてはめる」という人などいろいろいます。わたしは個人的には、指定語句をまずチェックして、すべてにその年号や年代を書いておくタイプでした。そうすれば、たとえばどこかとどこかの地域を比較しなければいけないときには同時代の出来事がわかるし、時代順に論述する必要があるときには前後関係がわかるからです。
 さて、実際に大論述を書くにあたっては、メモづくりが大事になってくると思います。原稿用紙を前にしていきなり自分の思いついたことを書くのは無謀です。まず空いているスペースで構成メモをつくりましょう。
 メモのつくり方はもちろん人それぞれでしょうが、ここではわたしが実践していたやり方を紹介させてもらいます。わたしは論述問題を見ると、まず前述のように指定語句の年号をチェックし、次に解答のおおまかな方向性を決めていました。おおまかな方向性というのは、簡単に言うと「何部構成で書いて、各部はどんな内容にするのか」ということです。たとえば昨年度の東大模試では「第一次世界大戦後の平和への取り組みと、それにもかかわらず戦争へ向かっていく流れ」のようなことが何度も出題されたのですが、この場合で言うと「①第一次世界大戦後の国際協調の流れ(国際連盟の試みなど。しかしこの協調は敗戦国ドイツの犠牲の上に成り立っていたこと、国際連盟にはアメリカの不参加などの問題もあったこと)、②国際協調の流れの終焉(世界恐慌を契機とすること)、③第二次世界大戦への突入」というようなものです。そしてこうした各部に思いつくだけの知識を簡潔に書き出していました。大論述あるあるとして、知識の不足しているうちは書くことがなくて水増しのために冗長な表現をし、反対に知識が固まってくると書くことが多すぎてその取捨選択に迷う、というのがありますが(笑)、この取捨選択に関しては最終的には「指定字数に合わせる」ということに集約されるようです。また、東大入試本番はおそらく「この用語を使ったから何点」という採点ではないだろう、という見方があります。であるならば、なるべくたくさんの用語を詰め込んでしまえ、というのではなく、やはり大論述の基本どおり、「全体をマクロな視点で見て大きなストーリーをつくる」ということを重視したほうがよさそうです。「この用語も知ってる、この用語も知ってる」と芋づる式に思い出した言葉を全部ぶちまけてひけらかすのではなく、「これはこの問題の趣旨に合っているだろうか」ということをしっかり考えましょう。
 また、構成メモというのは自分が考えたことを採点官に伝えるための設計図です。自分の頭を整理するためにも、そして整理した内容をわかりやすく書くためにも、メモは「他人に見せてもすぐに意味がわかるようなもの」にしておくと良いです。これはわたしが高校の先生に指導していただいたことですが、たしかに「人に伝える文章の設計図」と考えると、使いやすいメモをつくることができました。
 メモづくりが終わったら、実際に論述を書きます。入試本番では模試と同様、30字×20行ちょっとの草稿用紙が印刷されているので、もちろんそれを使用して下書きするのもいいでしょうが、そこまでの時間を確保するのは簡単ではありません。個人的には、メモができたら一発で解答を正しい行数で書けるようにしておくことをおすすめします。
 以上、ある程度知識が入っている状態での練習について言及しましたが、まだまだ知らないことだらけで焦っている受験生もいると思います。しかし、だからといって「大論述は知識が完璧になってから」と言っていると、取り掛かりはそうとう遅くなります。もちろんこれには一理あって、全然わからない状態で調べ学習のようなことをして文章をつくってもあまり意味がないのは事実です。ただ、「知識が完璧になる」ようなことはまずありません。夏からいきなりばんばん解く、とかでなくていいので、論述の練習はぼちぼちやっておいたほうがいいと思います。
 まだ経験が浅いうちは、問題文から構成をつくる、などということもなかなか難しいと思います。この場合は、模範解答をまず自分の手で写してしまうことをおすすめします。もちろん音楽を聴いたりひととしゃべったりしながらでは意味がありません。その文章の意味を逐一考えながら、写し取っていきましょう。写し終わったら、一度音読すると全体の流れが頭に入ってきやすいと思います。次にその「模範解答から構成を練る」という作業をします。だいたいでいいから模範解答が言いたいのであろうアウトラインをつくってみましょう。それができたら、その模範解答が載っている解答解説を読んでアウトラインの答え合わせをしてみてください。こうした作業によって、なんとなく「ああ、こうやって大論述は組み立てるんだな」ということがわかってくると思います。もちろん、東大が解答を公表していない以上、模範解答というのは厳密に言う「正解」ではありません。しかし参考になることには違いないでしょう。また、この練習をするときには必ずアウトラインを載せている模範解答を選びましょう。『東大の世界史25ヵ年』などは丁寧だと思います。
 長くなりましたが、最後に。練習で大論述の問題を解いたら、信頼できる先生に必ず添削していただきましょう。自分では気づけない癖やミスが浮き彫りになります。知識不足は自分でどうにかするとして、「ついまわりくどい表現になる」だとか、「こちらは掘り下げているのにあちらはうわべしか書いていない、という偏りが多い」といったことです。添削後は必ず復習をして、自分の悪い癖は抜き、新たに得た知識は次の糧になるようインプットしておきましょう。

 

②第2問 中小論述
  第2問は論述力がどうこうというより知識勝負です。対策法としては、教科書や一問一答、資料集からなるべくたくさんの知識をストックしておくことが第一です。また、大論述と同じく「○世紀前半/後半」などと言われたときに、その頃の出来事をすぐに想起できる必要があります。語呂合わせなどでなるべくたくさんの年号を覚えておくことをおすすめします。
 論述を書くときには、5W1H(いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように)と影響/結果/効果などを意識することも大切です。そして、求められる要素をなるべく簡潔に書く練習はしておくべきでしょう。

 

③第3問 一問一答・小論述
 第3問では例年10題程度の短答問題が出ます。ほとんどは用語を答えさせる問題であり、また東大の問題がどの教科においてもそうであるように、重箱の隅をつつくようなマニアックな問題はほぼ出ません(仮に出ても、みんな解けないから気にせずてきとうなことを書いて飛ばしましょう)。満点を目標にがんばりましょう。
 対策としては一問一答の参考書を一冊決めて、それをひたすらやりこむことです。参考書は王道のものならどれでもかまいません。複数のものに手を出すのは避けましょう。
 一問一答をやるときには、忘れてしまっていたものに印をつけるなどの工夫をするといいと思います。2,3周め以降は印のついたものだけチェックすれば効率よく学習できます。このとき、ケアレスミスやど忘れをしてしまったものでも印をつけることをおすすめします。うっかりだと思っても、同じことを繰り返す可能性は案外高いからです。また、一問一答を何周もするなかで、時には印のついていないものも含めすべてにふれる周をつくるといいと思います。絶対に忘れないと思っていた用語でも、しばらく見る機会がないと抜けてしまうことがあります。 (文責/Junca)

 

*覚え方について*
 ただの暗記と言うだけではあまりに素っ気ないので私がやった事を書きます!
 なにぶん莫大な容量なのでよほど能力が無い限り正面突破しようとすると挫折します。だから私も少し工夫しました。
世界史-覚え方世界史-覚え方
 一通りテキスト・参考書を覚えますよね。
 で、1枚目の写真のように章・項目毎に小見出しを抽象しておくんです。
初めはこの紙を見ながら該当ページの記述を思い出します。慣れてきたらその紙ごと覚えてしまいます。この思い出すという作業が大切です。
試験でも同じことをやります。大論述・小論述ともにテキストの記述をべちゃっと貼り付けて終了です。
思うに受験生はインプットに躍起になるあまり、アウトプットが必要な試験でもどかしい思いをするんですよね。で結果的に時間を浪費してしまう、と。
 このやり方の欠点はそのテキストを超えた内容には対応できないことです。だから万能ではありません。実際慶應の世界史では自己採点半分切ってますし
 でも私は実戦では40点、他の東大模試では45点辺りで安定していた感じです。この点なら世界史で不合格になることは無いと思います。
なお、自分はこの勉強に関して一般的に勧められる教科書を一切用いていません。これは得点に効率よく結びつく勉強と考えた時に教科書の使用はコスパが悪いと判断したためです。そのあたり、教科書を推される方のアドバイスも参考するなどして自分に一番合った勉強法を編み出してください。

 なお、世界史は全体的に記述量が多く、年によっては全部で1000字を越える時もあるので時間配分の中で思考に充てられる時間は意外と少ないものです。600字の解答を一度答えを見ながら書き写してみて、いつも自分はどれぐらいの速さで字を書くのかを把握しておくといいでしょう。

(文責/風来坊)

・『世界史B』(東京書籍)


・『詳説世界史 世界史B』(山川出版社)
…上記2つは教科書です。東大の世界史は東京書籍の教科書をベースに問題が作成されているといいますが、東書と山川はそれぞれメリット・デメリットがあるので、2冊を読み比べる人もいます。どちらもインターネットで購入できます。

 

・『一問一答世界史B用語問題集』(山川出版社)
…世界史の一問一答としては東大受験生の王道だと思います。東大レベルでは、☆印2つのものと3つのものをやればいいでしょう。

 

・『世界史年代ワンフレーズ』(パレード)
…年号のゴロ合わせが数多く載っています。使っている人が多いように思います。

 

・『東大の世界史25ヵ年』(教学社)
…解説が比較的丁寧で、使いやすいと思います。特に大論述などは予備校の予想問題集を使うより過去問を重視したほうがいいでしょう。

・解答の書き方
 大論述は1行目の1マス目から書き始める。大論述に限り問題番号は書く必要がなく、1行目の頭から、指定された行の末尾のマスまでが採点対象となる。下線チェックを忘れないこと。なお、指定語句は解答全体の骨子となるので、上手く書ければ指定語句は解答中に綺麗に分散する。
 小論述は1マス目に問題番号を記入する。つまり例えば2行で書く場合は解答を59字以内に収める必要がある。書き方は(1)、(2a)などと1マスに入れる。字数の下限は恐らくないが、最後の行数の3分の1ほどまでは書きたいところ。
 第三問の雑問集も同じ要領で、問題番号を入れ、問題ごとに改行する。なお、「第3問」などは書かなくてよい。

 

・時間配分の例
 自分は第二解答科目の地理に時間を充てたかったので、模試を含め世界史は55分~60分を目安に解いていました。(本番は大論述が的中していたため50分程度で終わった。)一般的な受験生も地理選択者は70~75分程度、日本史選択者は75分ほどで書き上げたいところ。

 また、自分の場合、解く順番はいつもは第3問(7分)→第2問(15分)→第1問(30分(書く時間は15分ほど))→地理(残り)であったのが、本番は第3問(7分)→第1問(25分)→第2問(20分弱)と対応しましたこれは第1問の的中と第2問の難化をみたからです。一般的には第1問:40分、第2問:20分、第3問:7分ぐらいかけてもいいでしょう。

 

・合格者平均点
 地理歴史の合格者平均点は例年80点前後だと思われます。したがって単純計算で世界史では40点ほど取っておく必要があります。配点については昨年度は低得点者の再現答案からほぼ20×3の均等配点であることがわかっていますが、今年は自分の受けた感触から考えるに、恐らく傾斜配点でしょう。

(文責/風来坊)