東大化学     文責/けんと

1.概要

2.傾向

3.勉強法

4.お勧め参考書・問題集

5.その他

・試験時間:理科二科目で150分間(試験2日目の1コマ目)

・配点:60点満点

・問題構成:第一問が理論分野、第二問が無機分野、第三問が有機分野。ただし近年では第一問と第二問が理論と無機の融合のような出題になることもしばしばあります。それぞれの大問はaとbに分かれ、実質大問6問構成です。

・解答用紙:A3版1枚。各大問ごとに枠が決まっていて罫線が引かれており、五行ごとに一文字の目安となるドットが打ち込まれています。また、この解答用紙は理科で共通なので、受験生は( )内に科目名を書き込み、解答用紙上部の「化学」の部分の三角形を切り取る必要があります。当日はハサミを忘れないこと。

 東大化学の大きな特徴は2つ。
 まず、未知の物質についての出題。いくら化学を勉強しても、聞いたこともないような物質についての問題が東大ではよく出されます。これに慣れていないと全く知識を持たないために手も足も出ない、という状態に陥ってしまいます。
 ただ、誰も知らないような物質の知識自体を東大は求めているのではなくて、長めのリード文の中にヒントがあったり、既存の知識を組み合わせることで対応できることがほとんどです。
 従って、まず必要となるのは徹底的な基本の理解。単なる選択問題や計算問題の他、論述もそこそこ出されるので、高校化学を知りつくしてこそ東大の化学に対応できるといえるでしょう。

 次に受験生の前に立ち塞がるのは、圧倒的な問題量。
東大化学のハイレベルな問題をすべて処理するのは、練習を積んでも難しいかもしれません。2014年度はそれが特に顕著でした。リード文の読解から情報の処理、めんどうな計算などなど、あらゆる面でのスピードが求められます。じっくり考える時間はありません。

 もちろん全ての問題に解答するのが理想ですが、どうしても無理だと感じたら難しそうな計算は立式だけして逃げるとか、一見してわからない問題は積極的に飛ばすとか、そういった試行錯誤を重ねることも重要になってきます。

 分野で言うなら、前述のとおり第一問は理論、第二問は無機、第三問は有機という形でずっと出題されていますが、結局あらゆる分野が出ます。
 有機ではネタ切れなのかここ数年構造決定は出ていませんが、基本の問題形式なので対策しないのはオススメしません。しかし高分子やアミノ酸などを優先的に対策したほうがいいかもしれません(2014年度は多くの受験生がこの分野の出題で痛い目を見ました)。

 王道というならやはり重要問題集2~3周→化学の新演習→過去問

だと思います。重要問題集で典型問題に慣れ、新演習で応用力をつけ、過去問で東大形式に慣れる、といったところでしょうか。

ただ、これを全部こなすのは、他の教科のことも考えるとよほど要領が良くないと無理です。

 参考までに、高3初期で全く基礎が固まっていなかった僕は、教科書とにらめっこしながら重要問題集を10月くらいまで使い続け、適宜学校や塾のテキストで演習を積んで過去問に本格的に着手したのはセンター後でした。(新演習は全く使いませんでした)

 また、夏休みに分厚い参考書の無機分野と有機分野を熟読して知識のインプットに努めました。

 

 第一問〜第三問のうち、自分が「この大問では8割以上とれる!」と思えるような得意分野を作っておくことも大切かなと思います。多くの受験生は有機分野で得点を稼ぐようですが、これは構造決定などオーソドックスな問題では、パズルを解くように極めると楽に解けてしまうためだと思われます。得意な分野を一番先に解くなどすれば、手堅く得点を稼ぐことで精神的にも心強く、総合的な得点自体も安定します。

 そして僕は計算問題がとても苦手だったのですが、途中式をしっかり書いて単位も逐一チェック(この手法は物理でも非常に有効)するとくだらないミスが大幅に減って効果的です。

 また、僕が教わっていた教師はよく「紙の上で実験しろ」と言っていましたが複雑な操作では長いリード文を追ううちに見落としや勘違いが発生することがしばしばあるので、簡単な実験器具の絵を描いて、そこにどのような操作を加えるのか、何の数値を求めればいいのかを正確に把握することが大事です。

・『化学重要問題集』(数研出版)

…言わずと知れた名著。迷ったらこれをやることをオススメします。解答解説があまり詳しくないのが難点。

 

・『化学標準問題精講』(旺文社)

…途中経過がていねい。少ない問題数で力がつく。

 

・『精選化学Ⅰ,Ⅱ問題演習』(旺文社)

…友人がとても勧めている問題集。化学ができない人が、東大レベルの問題でよくわからないなりに点がとれるようになる問題集(友人談)。ただし今では絶版らしい。

 

・『化学の新演習』(三省堂)

…これも東大生はこなしてる人が多い。レベルは重問より上?

 

・『化学の新研究』(三省堂)

…高校化学でおそらく最も詳しい参考書。疑問の答えがほとんど書いてあるが、情報量がとにかく多くてときどき高校レベルを逸脱する。個人的に理系なら持っておくべき一冊。

・合格者平均点

 理科であわせて合格者平均は70~80ほどだと思います。

 受験生のみなさんが狙うべきはすべての科目の合計での「合格最低点」ですから化学を得意とする人は40点以上、そうでない人はしっかりと半分の30点をとることを目標にしましょう。

 

・解答の書き方

 他の多くの大学とは違い、記述式の試験なので選択式や語句問題以外は自分の思考の過程をコンパクトに書き残すことが大事です。計算問題などは途中式を書かなくても大丈夫だという説がありますが、部分点はおそらく入るので書いた方が無難です。

 とにかく採点者にわかりやすく、それでいて点になりそうなことは貪欲に詰め込む、ということが重要になってくると思います。

 

・当日の様子

 理科は二日目の第一科目で、化学を選択する人は物理、生物、地学のうちどれかとセットで150分で解答することになります。どの科目から解くかは自由に選べるため過去問演習を行う上で化学を先に解くか後に解くか、また時間配分をどうするかある程度決めて本番に臨みましょう。

 前述の通り解答用紙にはハサミと鉛筆の両方で解答する科目を記すのですが、解答科目を入れ替えて解答してしまうことだけはないようにしてください。

理科の解答用紙は大きく、机は小さいので折って構いません。心配だったら当日の試験官に聞いてください。

 また物理・化学選択が最も多いかと思いますが、化学はとにかく時間がかかるので物理にかける時間をどれだけ圧縮できるかが鍵になります。生物は物理よりも解くのに時間がかかると一般に言われているためよりいっそう時間配分や解くべき問題の選定が重要になります。

 一例ですが、僕は化学80分→物理70分を目安に解いていました。生物選択の友人に訊いたところ、生物75分→化学75分とのことです。

二日目の始めということもあり、前日の試験の出来を良かれ悪かれ引きずっている人が多いですが、そういうものに惑わされず平常心で解いていくことが肝心です。