東大文系数学     文責/まっきー

1.概要

2.傾向

3.勉強法

4.お勧め参考書・問題集

5.その他

・試験時間:100分間(試験1日目の2コマ目)

・配点:80点満点。各大問20点満点だと思われる。

・構成:大問4題構成。問題によっては(1),(2)…のような小問が設定されているものもあります。

・解答用紙:A3判で、表面に第1問・第2問、裏面に第3問・第4問。よって、大問1題あたりに割り当てられているスペースはB5判ほど。また、罫線や方眼はありません。

 まずは基本的な東大文系数学について。

 第一問は微分・積分が出やすいのかな?例年、第一問には大体計算重視の問題が出るので、ここは東大受験生としては落としたくない問題です。たまに、ここに難問の類が出ることもありますが、そこらへんは臨機応変に対応しましょう。(この「問題の取捨選択」の能力は数学の試験で最も必要なので鍛えておいてください)

 第二問は確率・漸化式等の分野が出やすいように思います。ここは年によって難易度にばらつきがあるので、難易度を見極めて解くか捨てるかを判断することが求められます。主に出やすいのは1-P(n)型の確率漸化式や、状態の推移を問う問題などです。過去問の考え方は一通りマスターしておきたいです。

 第三問・第四問は年によって大きく問題が異なるので、ここは傾向といったものは特にないのかな・・・ですが、大抵ここに「難問」と呼ばれるような問題や、完全に初見の問題が出てくることが多いです。ここを解くときは、特に時間には気をつけてください。

全体として、俗にいう「良問」が並んでいるように思われます。基礎の知識を完璧に理解した上で、標準程度の問題の解法を頭に入れて挑むのが望ましいかと思います。また、年によって難易度が大きく異なるので、解ける問題を確実に完答することが望ましいです。間違っても、全部を欲張って解こうとして総崩れ、なんてことのないように。

 こんなこと書くのも申し訳ないのですが、確固たる勉強方法は存在しません。まあご存知でしょう。ここでは、「多くの東大生がやっている」という、いわば「王道」のような、基本の道筋だけご紹介します。

 まず、基本は「考え方を理解する」ことです。これは当たり前のようですが、基礎的な問題に対して「なぜ自分は今このような式の変形をしているのか」「どうしてその発想に至ったのか」等を理解した上で問題を解いている人は意外と少ないです。逆に言えば、この部分の理解をしておけば、ある程度の問題への応用は可能ですし、合格者平均点くらいは獲得できると思います。次に大事なのはやはり「数をこなすこと」です。標準程度(青チャートレベル)の問題はある程度見た瞬間に解法もしくは方針が思いつく状態まで本番までに持っていけることが重要です。これは経験を積むしかないです。解けなかった問題は何度もやり直してください。何も見ないで解けるようになるまでです。

 

 具体的な勉強方法を知りたい人もいるかと思うので、ここで一部紹介します。自分の場合、とにかく問題を解いていました。問題を解く際に意識することは、まず「方針を自分で立てる」ことです。とにかく問題に対してまずは自分で出来るところまでやってみましょう。そのうえで、答えが出たらよし。出なかったら、「どこで詰まったのか」「なぜ詰まったのか」等、自分が失敗した理由をちゃんと考えていました。

 また、参考書や過去問の利用についてですが、これは人それぞれです。ただ、合格者の多くに共通して言えるのは、「あまり多くの参考書には手をつけていない」ということです。以下に挙げる参考書のうち、せいぜい1つか2つあれば大体の問題には対応できると思います。ただし、上に述べた「方針を理解する」、言い換えれば「自分で方針を立てられるようになる」ことが全問題で出来るようになるまでは、その参考書を真に「終わらせた」ということにはなりません。しっかりと一冊を完璧にしてください。過去問は、人により開始時期は異なると思います。早い人は9〜10月くらいから少しずつ解いています(もっと早い人も一部にはいます)が、自分が「数学苦手」と思うなら、年明けからでも大丈夫だと思います。年明けからスタートする場合、直近の年から一年ずつさかのぼってやることをお勧めします。年明けはもう直前期であるので、しっかりと「時間を測る」「捨てる問題、解く問題の取捨選択」「見直し」まで、一年分ずつ本番を想定した演習を行ってください。

・『青チャート』(数研出版)
…学校の授業の復習にも、受験勉強の基礎固めにも役立ちます。

・『チェック&リピート』(Z会出版)
…苦手な人向け。チャートに手を出すのに抵抗がある場合やあまり好きでない場合に代用品になるでしょう。一部解説が少し雑なのが難点ですが、問題の網羅性、問題数の適切さは高く評価できます。このレベルの問題の解法は自分のなかのストックに入れてしまってほしいところです。

・『新数学スタンダード演習』(東京出版)
…過去問に入る前、または過去問と並行して取り組むのがお勧めです。つまりレベルは高め。得意でない人は頻出分野だけをやるのでも十分でしょう。

・『文系数学の良問プラチカ』(河合出版)
…過去問に入る前にやるのがおすすめです。一日3題で2カ月完成ということが謳われていて、解説も非常に丁寧です。2カ月よりもっと時間をかけてでも、これをしっかり解けるようにすれば東大の過去問も怖くありません。

・『鉄緑会 東大数学問題集』(角川学芸出版)
…東大の文理の直近10年分の過去問と、その解答解説が載っています。解説は非常に丁寧で、別解も豊富です。また採点基準(もちろん東大のそのものとは限らないが、めやすに)も書いてあるので、自分で採点ができます。

・『東大の文系数学25ヵ年』(教学社)
…25ヵ年シリーズです。問題が難易度によってA,B,C,Dに分けられているので、レベル別に勉強したい場合によいでしょう。また、分野ごとに掲載されているため、たとえば一般に易問の出題が多いと言われる微積から固めよう、と思った場合に微積の問題だけ過去問を先につぶす、というようなこともできて便利です。ただ、解説はあまり親切ではありません。

・合格者平均点
 採点基準が科類によって違う(という噂がある)ので一概には言えませんが、大体
    数学が苦手な人 30〜40
    数学が得意な人 50〜60
くらいです。
 年によって差があるのですが、少なくとも数学を得意としたいなら50はとらないと合格は厳しくなります。
逆に苦手な人は20〜30でも年によっては他の受験生に後れをとらないこともあります。
一部には数学の点数一桁で受かる人や、70点以上を出す人もいますが、そういうのは結果論であって、そこを目標としてしまうのはよくないのかなと。
 東大入試は部分点が大きいとよく言われますし、実際部分点は大きいとは思いますが、基本は完答を狙っていくスタンスです。大体一つ完答、一つ半分くらい(立式はしたけど…etc)+残り2問でもう10点を狙うのが東大受験生の平均的なスタイルだと思います。

・解答の書き方
 東大は記述式の試験なので、当然「途中式」の記述が必要となります。ですが、全ての過程を記述していては到底枠内に解答をまとめることは不可能です。そこで、「どのようなことは解答に含め」、「どのようなことは省いてもよい」のかをお教えしたいと思います。とはいえあくまで一般論であり、個別の事例には当てはまらないケースもあるということを念頭においてください。
まずは省いてもよいことについて。
 まず、省くべき最大の場所は「計算の途中過程」です。
例えば  (4a-5b+3c)^2  のような式を展開しなければならない場合。
(4a-5b+3c)^2=(4a-5b+3c)(4a-5b+3c)=…のようにやっていてはスペースの無駄です。計算は基本的には自分の問題用紙の空白部分に行い、結果のみを記すようにしましょう。
 例の計算ならば
(4a-5b+3c)^2=16a^2+25b^2+9c^2-40ab+24ac-15bc
のように、計算の過程をスキップすることが必要です。
 他に省くのは「問題文に記載されていること」となります。
 例えば「三次関数y=…は、点(1,2)で傾き3の接線を持つ」のような問題文であったら、解答内では「三次関数…持つことから、~~~」のように書くより、「題意より、~~~である」のように書いたほうが明確であり、冗長でなくなります。
 逆に入れるべきことは、意外かもしれませんが「図やグラフ」です。自分の意図が採点者に伝わりやすくなるとともに、「自分が問題の解釈を正しくできていること」を採点者にアピールできます。
 他に忘れがちなのは「記号の定義」等です。例を挙げるなら、「判別式=D」や「f(x)」等。問題文で定義されていない記号を使いたいなら、必ず解答の中に定義を含めなければなりません。

 次に解答用紙の使い方です。
 人によって解答用紙の使い方は異なりますが、自分の使い方としては、解答用紙の真ん中に縦線を引いて解答用紙を二分します。数学の解答は結構改行が多くなるので。

 

・当日の様子

 国語と数学の間の休み時間になるまではずっと数学は放置してました。休み時間に入ったら、東大の過去問のうち、微分や積分等の、あまり「思考力」を使わず、「計算力」を使うような問題を解くことをお勧めします。というのも、その直前に長い国語の文章を読んできたので、いきなり難問に挑んでも効果は薄く、むしろ計算問題をやることで、頭を数学に切り替えることができると思います。万が一解けない問題が出てきたときは(基本は解ける問題をやるようにしてください)むしろ試験直前でわからないことが発覚してよかった、くらいに思いましょう。一番だめなのは、焦ることです。数学は、おそらく全科目の中で一番精神状態が点数に影響する科目だと思います。とにかく平常心で。解けたらラッキー。解けなくても気にしない。これくらいのスタンスで挑みましょう。後は、時間配分だけは気をつけてください。時間配分は、一回狂っても修正が利きますが、焦ったらもう無理です。落ち着きましょう。落ち着いて解けば、それなりの点は来ます。