東大国語     文責/Junca

1.概要

2.傾向

3.勉強法

4.お勧め参考書・問題集

5.その他

・試験時間:文系150分間、理系100分間(試験1日目の1コマ目)
・配点:文系120点満点、理系80点満点
・構成:2000年度の一新後、文系は「第1問が現代文(評論)、第2問が古文、第3問が漢文、第4問が現代文(多くは随筆、時に評論)」、理系は「第1問が評論、第2問が古文、第3問が漢文」の構成がとられています。また、理系は第2,3問の古文漢文の小問数が文系より各2問程度少ない、という形での出題が近年つづいています。
・解答用紙:表面に第1問・第2問・第3問、裏面に第4問(第4問は文系のみ)の解答欄が印刷されたA3版1枚の解答用紙。第1問(五)を除いてマス目の印刷はなく、約9ミリ幅に区切られただけの解答スペースです。問題によって解答欄の縦の長さは異なりますが、それについては東京大学の赤本に逐一記載されているので、過去問演習の際にはそれに従いましょう。

①第1 現代文(評論
 例年比較的硬質な評論が出題されます。設問(一)~(四)は基本的に各2行の解答欄で、(五)のみ「100~120字」という字数指定があります。ちなみに(五)については問題用紙に草稿用のマス目がついています。
 (一)~(五)の設問は「~とはどういうことか」と「~はなぜか」という二つの説明問題に大別されます。(六)は漢字の書き取りが5題。漢字は日常的な単語の出題がほとんどであり、送り仮名も問われないことが多いため、確実に点を稼ぐべき問題であるといえます。

 

②第2 古文
 説話・物語からの出題が多いです。
 文章の内容は流れの追いやすいものが多く、読み取りにはそれほど苦労しないと思われます。古文単語もマニアックな知識が必要とされることはあまりありません。ただし、狭い解答欄に必要な要素を過不足なく詰め込むのにはそれ相応の表現力・判断力が必要になります。

 

③第3 漢文
 古文同様、文章の内容は比較的取りやすいでしょう。漢文は最初に短い時間で解いて確実に点数を確保する、という受験生が多いように思います。
 設問は、現代語訳および「~とはどういうことか」「~はなぜか」という説明問題が基本ですが、時に語句の抜き出しが問われることもあります。また、2011年度には漢詩が出題されました。

 

④第4 現代文(随筆、または評論
 第4問では随筆、それも抽象度の高い文章が出題されることが多いため、例年文系の受験生を悩ませます(ただし、2013年度などは評論が出題されました)。

 設問は(一)~(四)、解答欄は各2行が基本です。

 全体としてまず強調したいのは、最も重視すべきは過去問研究である、ということです。東大の国語の試験問題は緻密に練られており、予備校講師が短い期限内で作る模試の問題や参考書の問題でその完成度を再現するのはどうしても困難だといわざるを得ません(実際に自らそうおっしゃっている講師の方などもいます)。

 ただし、基礎づくりや導入には過去問以外の教材を使うことももちろん有効なので、おすすめの問題集・参考書を紹介しつつ、勉強法についてお話ししたいと思います。

 

①第1問 現代文(評論)

 東大の現代文は意地悪な問題は少なく、基本的に設問(一)、(二)…は本文の順番どおりに問われます。裏技や特殊なテクニックが必要なのではなく、言い換えや対比などを見落とさずに論理の流れをどこまで追えるか、ということが鍵になるといえるでしょう。

 それゆえ、東大現代文を解く上で基礎となる力は学校の授業での学習で身につけられると思います。教える先生にもよるでしょうが、まずは授業を大切に。その上で、東大を意識した勉強をしていきましょう。

 現代文は確固たる勉強法がなかなか存在せず、理論も教える人によって様々です。それゆえ、ここでわたしがお話しするのも一個人の意見として参考程度に考えてください。

 

 わたしが現代文の問題を解く上でいちばん重要だと思うことは、その本文の構造把握です。筆者がその一節を書いたのは伝えたいメッセージがあるからであり、そのメッセージがあらゆる具体例や比喩や言い換え、あるいは対比や反論(とそれに対する再反論)を用いて説明されているのが評論だといえるでしょう。

 本文を読むにあたっては、まずさらっと全体を読んでから問題にとりかかる、という人と、前から順に読み進めていき傍線部にぶつかると問題を解く、という人がいると思います。東大の評論は前述のとおり基本的に設問(一)、(二)…の順が本文での記述の流れと対応しているので、後者の読み方でも問題ないと思いますが、個人的には前者をおすすめします。というのは、ほんとうにさらっとでいいのではじめに一度全体を見ておくと、筆者がなにについて話したいのかということと全体の流れについてなんとなく把握することができ、続いて問題を解くときもどんな論点に注目して解答すればいいのかが明確になるからです。

 本文を読む上でおすすめするのがラインマーキングです。大事だと思う箇所には傍線、言い換え表現同士は”=”、対比関係は”⇔”、因果関係は”→”など。これらをマークしておくことで本文の構造が頭の中でも整理されます。ただしあまりに傍線を引きすぎたり印をつけすぎたりすると、当然のことながらテキストが見づらくなります。慣れていないうちは加減が難しいかもしれませんが、模試や過去問演習を通して適度なラインマーキングがすばやく行えるようにしておきましょう。

 

 次に、問題を解く上でのポイントについて。

東大の評論の設問は、前述のとおり「~はどういうことか」「~はなぜか」に二別されます。ものすごく基本的なことですが、解答の際にはこれに応じて「~こと。」で答えるのか、「~から。/~ので。/~ため。」で答えるのか、を必ず先にチェックしましょう。

 

 「~はどういうことか」の説明問題は、「~」の部分の言い換えが求められている、と考えればよいと思います。「自分の解答」=「~」の式が成立するように解答を作成します。

 まず、「~」部分とイコールで結べる表現をそろえることが基本です。これについては前述のラインマーキングが役に立つと思います。次に、「~」部分に指示語(「それ」「これ」など)が入っている場合、その部分を具体的な言葉に置き換える必要があります。指示語はその前に示されているのが基本ですから、きちんとおさえて解答にいかしましょう。

 

 「~はなぜか」の理由説明問題は、「自分の解答」⇒「~」の因果関係が成り立つように解答を作成します。近年の東大の問題では、本文「…だから、○○○である。」→設問「『○○○である』とあるが、なぜか」、というように因果関係のはっきりした部分に傍線が引かれて理由説明を求められるパターンが多くなっています。この場合、解答の軸にすべき部分は明白です。この軸に、必要な要素を付加していって解答をつくります。

 また、「~はなぜか」の「~」の部分に指示語が含まれる場合は、その内容をはじめにチェックしましょう。

 

 120字問題について。この設問は現代文の問いのなかで唯一字数制限がある設問で、当然ながらこの制限は厳守する必要があります。1字でもオーバーまたは足りない場合は0点となっても文句が言えません。

 字数制限があるという意味でほかの設問とは異種のものに見えてしまうかもしれませんが、解き方の基本は設問(一)~(四)と同じです。ただ、年によっては「本文全体の論旨をふまえた上で」との条件が付されている場合があり、この場合は特に全体の流れを解答に反映させる必要があるでしょう。

 

 最後に、漢字の書き取り問題について。これは前述のとおり誰もが得点すべき問題です。特に対策をとる必要があるほどのものでもありませんが、常識的な漢字力はつけておきましょう。漢字の知識に特に不安がある人は、入試漢字の問題集をやっておくとよいかもしれません。ただし、私大の難問ばかりを集めた問題集、などに取り組む必要はないと思います。

 

②第2問 古文

 東大古文が求めるのはあくまで基本的な古文知識、そして必要な要素を解答欄の中で過不足なく表現する力である、というのは前述のとおりです。であるならば、自学によって細かな知識や技術を身につけようとするよりも、日々の高校の授業によって知識や読解力を身につけるのが最重要だといえるでしょう。現代文と同様、学校の授業を大事にしましょう。

 古文の学習では音読が効果的です。授業や教科書で扱われる文章は何度も音読し、訳まですぐに頭に浮かぶようにしておきたいものです。文法強化のため、全文の品詞分解は強くおすすめします。また、当たり前のことですが助動詞、敬語、基本的な古文単語は完璧にしておきましょう。助動詞はさまざまな意味をもつものもありますが、そのなかでどの訳をあてるかということが現代語訳問題で鍵となります。敬語は主語の判定に大いに役立つ上、訳にも影響します。古文単語は基本的なものがひととおりおさえられる単語帳を使えばよいでしょう。ちなみにわたしは学校で配られたもの以外は基本的に使っていません。

 

 勉強法の流れとしては、高校の授業を通して基礎的な知識・読解力を身につける→古文単語や文法を完璧にする→記述対策の勉強に入る→東大過去問の演習(→余裕があれば予備校各社の予想問題)といった形になるでしょうか。参考書・問題集で言うと、古文単語帳→軽めの記述問題集(『得点奪取』など)→東大古典過去問(『鉄緑会 東大古典問題集』など)→駿台や河合などの予想問題集(ほんものの試験より難易度が高いので、余裕がある場合のみ取り組めばよいです)の順で固めていくのがいいかと思います。おすすめ参考書・問題集については4.を参照してください。

 

③第3問 漢文

 漢文も古文と同じく基本的な知識や句形理解が問われ、マニアックな知識を身につけていく必要はありません。また、近年易化傾向がつづいており、ここでしっかりと得点しておくことが重要だといえます。現代文・古文同様、学校の授業で基礎づくりに努めましょう。

 よく聞くと思いますが、漢文はほかに比べて単語や句形など覚えることが少なく、短期間で点を伸ばしやすい科目です。もしこれを読んでいるいま漢文が苦手であっても入試までに得点を伸ばすことはじゅうぶん可能ですから、対策に力を入れてみることをおすすめします。

 

 基本事項の確認や重要句形の暗記に関しては高校の授業で行うものなので、ここでは勉強法などは割愛します。これと並行して、高校では様々な漢文の文章を扱うと思います。その際学習法として効果的だと思うのは、音読・白文読み・訓点振りです。まず、音読の際にはすべての単語の意味や動作の主体を把握し、現代語訳を頭にすぐ浮かべられる状態にしておきましょう。次に白文読み。これは訓点の振っていないテキスト(白文)を用意し、それを見て頭の中で書き下し文にしながら音読するものです。白文読みができるようになったら、最後に訓点振りをしましょう。これは白文を用意してそこに自分で正しく訓点を書き加えていくものです。振りおわったら教科書などのテキストと見比べて答え合わせをしましょう。送り仮名や返り点など、意外と盲点だったものがわかります。

 

 以上は受験勉強というより高校の授業の勉強法でした。これらを通して漢文学習の基礎ができたことを前提として、以下すこし実戦的な勉強法をお話しします。

 勉強法の流れとしては、古文同様、高校の授業を通して基礎的な知識・読解力を身につける→単語や句形を完璧にする→記述対策の勉強に入る→東大過去問の演習(→余裕があれば予備校各社の予想問題)といった形になると思います。参考書・問題集で言うと、これも古文とほぼ同様、文法書(学校で使うものでよい)→軽めの記述問題集(『得点奪取』など)→東大古典過去問(『鉄緑会 東大古典問題集』など)→駿台や河合などの予想問題集(ほんものの試験より難易度が高いので、余裕がある場合のみ取り組めばよいです)の順で固めていくのがいいかと思います。おすすめ参考書・問題集については4.を参照してください。

 

④第4問 現代文(随筆、または評論)

 第4問は詩的な文章や抽象的なエッセイが取り上げられることが多く、対策も難しいといえます。ただし、そうは言っても基本的には本文から解答要素を抽出できる設問です。第1問と同じく、本文の全体の流れや細かな対応関係(言い換え、対比、因果関係)に気をつけながら読んでいきましょう。解き方の基本はほんとうに第1問と同じです。

 随筆は苦手意識をもつ人も多く不安が残るとは思いますが、概してそうした問題では点差がつきにくいものです。第4問は半分とれればいいと言われます。過去問をしっかりと解き、場数を重ねることがなによりの対策だといえます。

◎現代文

・『東大の現代文25カ年』(教学社)

…自学で進めるなら買っておきたい一冊です。ときどき「?」な模範解答もありますが、おおむね正しい道筋を示してくれます。25年分ありますが、前述のとおり2000年度以降のものを重点的にやればよいでしょう。

 

◎古文・漢文

・古文単語

…東大古典がマニアックな知識を求めない以上、基本的な単語をきちんとおさえられる単語帳を使えばよいでしょう。わたしは学校で配られたものを使用していました。

 

・『得点奪取 古文』(河合出版)、『得点奪取 漢文』(河合出版)

…記述対策の導入として良書だと思います。例題・練習問題合わせて15題収録。解答・解説には細かな採点基準も載っているので自習教材として便利です。過去問演習に入る前につぶしてみるのがおすすめです。

 

・『鉄緑会 東大古典問題集』(角川学芸出版)

…毎年最新版が発行され、直近10年分の東大古典の過去問題とその解答・解説が収録されています。解答には細かな採点基準や、想定される解答例・その得点が載っています。解説はものすごく長いことで有名。本文を細かく細かく解説してくれています。また、巻末についている古文単語や漢文句形のまとめは、ここだけ切り取って製本しておくと模試や入試の前にさらっと見直せて便利です。全体として、赤本よりも詳細・丁寧で使いやすいと思うのですが、かなり値は張ります。

 大学側の発表がないので真相は不明ですが(年により異なる可能性もある)、模試や予想問題では

【文系】

              第1問:40点満点

              第2問:30点満点

              第3問:30点満点

              第4問:20点満点

【理系】

       第1問:40点満点

              第2問:20点満点

              第3問:20点満点

とされていることがほとんどです。

 

・合格者平均点

 文系なら60点台~70点台程度、理系なら40点前後でしょうか。ただし2014年度入試では国語の平均点が例年に比べ非常に低く、これが受験生の解答がひどかったのではなく採点が厳しかったせいだとすれば、今後平均点はこの傾向のまま低くなる可能性も考えられます。

 

・時間配分の例

 東大国語は古文・漢文が確実に点を稼ぎやすいので、これらを先に解く人が多いです。逆に第4問はとっつきにくさから最後に回されることが多いように思います。解く順序は、文理とも

第3問→第2問→第1問(→第4問)

というパターンの人が多い気がします。また、時間配分については

【文系】

第1問:65分前後

第2,3問あわせて:40分前後

第4問:45分前後

【理系】

第1問:60分前後

第2問:20分前後

第3問:20分前後

という感じでしょうか。

ただし、もちろん第1問から順番に解いていく人もいるし、人によって合う合わないがあるものなので、べつにこれに従う必要はありません。参考程度にどうぞ!

 

・解答の書き方

 解答欄は仕切られた1行の枠内に対して必ず1行のみで解答しましょう。同じ行に2行以上の文章を書くことは禁止されています(問題用紙の表紙に注意事項として記載。東京大学HPにてpdfファイルの過去問が閲覧できます。リンクは下記参照)。限られたスペースに過不足なく解答をまとめる力が試されています。

 また、1行に小さな字でたくさん書くのもやめましょう。採点官は老眼の人が多いと思われます…笑

 

・当日の様子

 文理ともに第1日目の1コマ目に試験が行われます。国語は他の科目と比べて点差がつきにくく、「なにも解けなかった…!!」ということにもなりにくいので、あまり気負わず臨みたいものです。一発目の科目ということで、試験前には受験票の顔写真の上に貼る透明シールが配られたりしていろいろ時間がかかります。また、膝掛けの使用の許可などもきちんと試験官に取りましょう。時計が設置されている教室の場合は、自分の時計と時間が合っているかなども確認しておくといいと思います。

 

・リンク

東京大学[学部入学]過去問題(3ヵ年分) http://www.u-tokyo.ac.jp/stu03/e01_04_j.html

…表紙の注意事項なども確認できます。