京大理系数学     文責/zalgo

1.概要

2.傾向

3.勉強法

4.お勧め参考書・問題集

5.その他

・試験時間:150分間

・配点:200点満点(学部によって換算あり)

・問題構成:数学 I 、数学 II 、数学 III 、数学Aおよび、数学Bは「数列」、「ベクトル」から、6題出題される。

 問題が学部によって甲・乙の2つに分けられていた時代は、骨のある問題が出題されていたが、近年は全体的に難易度はそう高くない。昔ながらの伝統として、シンプルで誘導の少ない問題文が与えられ、解法が幾通りもあるような自由な出題がなされる。また、しばしば似通った出題が繰り返されることも多いので、過去問の対策をしっかりと行っておくことは重要であろう。1966年の”鉄塔の問題”に代表されるような空間図形の論証問題などは、他の大学にはあまり見られない出題であり、注意しておく必要がある。

 「京大は頭のいいやつなら勉強しなくても入れる」と長らく言われてきたが、近年、京都大学は、基礎的な出題をするようになっている。2012[3]の、対称式の扱いを問う問題などは、従来の京都大学にはあまりなされなかったような出題である。教科書傍用問題集やチャート等で扱われる基礎的な問題の解法に精通していればいとも簡単に解くことが出来るが、思考力のみに頼るとなかなか解くことが出来るものではない。基礎的な学習を怠ってはならないということを、先に述べておく。

 しかしながら、やはり京都大学は、「頭の良い」生徒を取ろうとしているのだなと思わせるような出題が近年になってもやはり繰り返されている。つまり、ほとんどの問題について、「教科書傍用問題集やチャートで見た問題ほぼそのままで、よく勉強している受験生なら見た瞬間に解法が思いつく」ようなことは無いのである。従って、京都大学の数学を対策する上では、「見て数分で解法が思いつかないのは当たり前である」と考え、「わからなくても時間をかけて考える」ような習慣をつけておくことが重要である。「1時間かけてもわからなかった問題は、考えてもわかることが無い」と考える受験生が多いが、実は、1時間かけて分からない問題も、4時間かけるとわかったりするのである。もちろん本番の入試では4時間も時間をかけることは出来ないが、「わからなかった問題が、考えるとわかるようになる」という遷移は、トレーニングによって次第に早めていくことが可能である。このような遷移があることにまず気付き、その遷移を早めるようなトレーニングを積んでいけば、他受験生が諦めるような問題でも、「粘り勝ち」をすることができるだろう。

 また、傾向のところでも述べたように、似たような出題が繰り返されるため、過去問対策は重要である。ここで注意しておかなければならないのは、過去問を解いて解答を見るだけではいけないということである。確かに「似たような出題」は繰り返されるのだが、決して「同じ解法で対応できる」とは限らないからだ(ex.2009乙[6]と2013[3])。過去問に取り組む際には、別解や類題にもしっかり触れることや、「問題文の条件が少し異なっていればこういう解法もできた」というように、自分の頭のなかで類題を作ってみることが重要である。そうすれば、一問から何問分もの成果を得ることが出来るし、バラバラに存在している各問題をつなげて理解することが出来る。

 過去問に取り組む上で注意すべきもう一つの点は、時間の使い方である。解ける問題だけをぱぱっと解いて、解けていない問題を残したまま、150分を使い切ることなく答えを見る受験生が多いのだが、これは非常に勿体無い。分からない問題こそ、京都大学が要求する「頭の良さ」を鍛えるチャンスであるので、150分の試験時間をしっかり使い切って考える、場合によっては、150分をオーバーしてでもよいのでしっかり考えることが重要である。私がおすすめする過去問演習のやり方は、①まず本番の試験と同じように150分間で試験に取り組む。この際、「確実にとれる問題をとること」や、ミスのチェック等も本番と同じようにしっかりと行い、練習する。②適宜延長戦としてわからない問題を更に考える。③添削、別解、類題のチェック。類題にも、しっかり時間を使って取り組むことが望ましい。

 

 年間学習プランは、それぞれの学習状況による。基礎的な事項が頭にほとんど入っていない状態で応用に入ることは非効率的でありあまり望ましいことではないが、基礎的事項に多少抜けがあろうとも応用的なことに取り組むことはむしろ歓迎されるべきことである。勉強の方向性を掴むためには、過去問学習に早いうちから取り組んでおくことが大事だが、直前期に初めて触る過去問も数年分は無いと不安になってしまうことには注意しておく必要はあるだろう。

・『月刊大学への数学』(東京出版)

…「考える」トレーニング用。毎号の「学力コンテスト」と言うコーナーにある問題は、大学入試のレベルよりも難しいような問題が多いが、東大京大入試に使える考え方が盛りだくさんである。添削を東京出版に送ると貰える解説プリントも、非常に丁寧であり、別解や類題のフォローも確実になされている。「1時間考えてもわからなかった問題が、4時間考えるとわかった」という感覚を掴むためには、「学力コンテスト」は非常にオススメの教材である。他の項目についても興味深い内容は多いが、筆者が欠かさず取り組んでいたのは、この「学力コンテスト」のみである。

 

・『入試の軌跡/京大』(東京出版)

…京大数学の過去問を10年分掲載した過去問集であるが、この過去問集は他の過去問集とは一線を画している。別解や、京大や他の大学で過去に出題された類題を載せている「フォローノート」という事項では、一つの問題から、「立体的な」広がりを持って理解を深めることが出来る。甲乙含む理系の全問題および文系の問題についても取り組むことが強く推奨される。京大受験生の必読書!

 高得点を取ることは難しいと言われている京大理系数学であるが、効果的な対策を行えば、十分に得点を望むことは可能であろう。安定して3完以上を狙って行きたい。