京大英語     文責/地学マスター

1.概要

2.傾向

3.勉強法

4.お勧め参考書・問題集

5.その他

・試験時間:120分間
・配点:150点(学部によって圧縮あり)
・問題構成:長文2題と英作文の3つの大問で構成。(配点は各50点)

 長文は2005年度などごく一部を除いて、ほぼ毎年、下線部和訳だけで構成されていて、膨大な量の訳出が要求される。長文は他大学と比較すると単語レベルも高く、構文も見慣れないものが使われていることもある。英文の難易度は高いが長文の分量はそれほど多くなく時間的にもゆとりを感じる人が多いはずである。

 

 英作文はこなれた日本語で書かれた、まとまった量の文章を2題英訳することが求められる。過去に出題された日本語文を掲載するのでそれを見てもらいたい。

 

 きのう通勤帰りの満員電車でゆられていたら、小学生ぐらいの男の子が大きな声を張り上げて車内の人込みをかき分けて走ってきた。子どもは頬を真っ赤に染めて、「運転手さん、さっきの駅で降ろしてください!」と叫んでいた。そしてたちまちのうちに私の目の前から姿を消した。忘れものでもしたのだろうか?だとしたら、あの必死の形相からして、よほど大事なものだったに違いない。(2014年度 京大英語 大問3(2))

 

読んでもらえるとわかるとおりこなれた日本語で表現されており、日本語特有の表現(上の問題では「必死の形相」など)をどう表現するかが要求される。

 長文(和訳)問題を解くためには単語力をはじめとする基礎力と構文解釈力が必要である。

 

 単語力という面では『システム英単語』や『ターゲット1900』に掲載されている見出し語の訳がほぼわかれば良い、と考えている。余力のある人は『速読英単語上級編』のようなさらに上のレベルの英単語もおさえられたりすると良い。ただし、英文のなかに含まれている単語をすべて単語帳でまかなうことはできない。知らない単語の大まかな意味を文章の流れの中やその単語がもつ語幹から予測できると理想的である。こういった練習も京大の過去問や『速読英単語上級編』である程度しておくことをおすすめする。単語だけでなく熟語の知識や文法の知識も和訳のためには必要不可欠である。なんらかのテキストや参考書を1冊完璧にしておくと良い。

 

 構文解釈力はここでは英文の構造が分析できる力のことをいう。具体的には主語・動詞の把握にはじまり、関係詞等の修飾範囲の決定や省略を見抜いたりする力である。まずは構造を分析するための頭の動かし方を一通り網羅する必要がある。そのための手段として参考書や授業を利用してほしい。参考書の例としては『基礎英文解釈の技術100』、『英文解釈の技術100』や『ポレポレ英文読解プロセス50』がある。(参考書はそれぞれレベルが違うので本屋で自分のレベルに合うかどうか、分量は適切かどうか判断してほしい)。和訳はその構文解釈の結果を反映するように訳せばよい。京大の和訳が手におえないと感じてしまったら大阪大学の大問1がおすすめである。京大と比較すると形式が似ていて、難易度が易しいので頭の動かし方をつかむ良い素材である。いきなり2次レベルの文章が苦しいと感じたら、市販の参考書のやさしめの長文から精読を始め、徐々に難しい文章、過去問に移行すれば良い。過去問を解くときは信頼できる人に添削してもらうことをおすすめする。膨大な和訳が要求されているので自分のミスに気づけなかったり、解説と少し違うだけで正解にもかかわらずミスしたと誤認してしまったりすることを避けるためである。もし添削してくれる人が近くにいなかったらZ会の京大コースやベネッセのルートK等の添削サービスを利用するのも手である。訳出ミスしたときは自分はどこに気づけなかった、あるいはどの知識が不足していたからミスに至ったのかの原因をはっきりさせることは怠らないようにしよう。

 

 英作文はまず「英作文の書き方を学ぶ」ステップと「使える表現を増やす」ステップを経なければならない。書き方を学ぶステップとして授業や参考書を利用する。『英作文のハイパートレーニング-和文英訳編-』『大矢の英作文の実況中継』『英作文が面白いほどかける本』等がある。「使える表現を増やす」ステップとして有名な手段は例文暗記である。
英作文に対する姿勢として大前提としてあるのは「できるだけ易しい英語で表現すること」である。そのために「日本語の表現をとらえ直す」というテクニックが使える。このテクニックは重要なのでもう少し説明すると、「英語をうまく話せる日本人は少ない」という文章を英訳するとする。同じ内容を表現しつつもっと簡単に表現しようとすると「ほとんどの日本人は英語をうまく話せない」と捉えなおして「Few Japanese people speak English well」とすると少し簡単に表現できたと思う。(出典:『英作文ハイパートレーニング』) 京大英語は、難易度は高いが高得点は必ずしも必要ではない。多くの合格者が6割程度の得点率で合格している。みんながとれるところを確実にとれるような標準的な力の養成に取り組めば良い。

 

京大英語おすすめ学習プラン(あくまで一例)※常に基礎知識の復習を繰り返す
~3月 単語・熟語・文法を完璧に
~6月 センターから関関同立レベルの長文
~8月 解釈の参考書/英作文の例文暗記/英作文の書き方を学ぶ
~11月 和訳演習/英作文演習
~12月 過去問
~センター センター過去問
~2次 最終チェック

・『システム英単語』(駿台文庫)

…基礎~難関まで一通りの英単語がこれでそろう。単語帳の中でもヒット率が高く、覚えるべき訳も絞ってあり使い勝手が良くておすすめ。

 

・『速読英熟語』(Z会出版)

…熟語を網羅している一冊。50個の長文のなかで熟語を覚えるのがこの本の基本ポリシーであるが、熟語のまとまったページを活用して長文なしで覚えてもかまわない。長文のレベルはかなりやさしいが必要な熟語や文法事項が50文のなかで網羅されており完成度は高い。CDを購入しCDのスピードで長文が読めるように訓練するのも良い。

 

・『Next Stage 英文法・語法問題』(桐原書店)

…文法・語法等が網羅されている一冊。語彙や発音アクセントのコーナーも充実しているが使いたい人だけでよい。文法・語法の問題を解きながら文法事項や語法の知識の確認をしてほしい。もし知識不足、理解不足のところがあれば先生に質問したり、フォレストなどの詳しい文法書で確認してほしい。

 

<解釈の参考書>

・『基礎英文解釈の技術100』(ピアソン桐原)

…基礎~標準的な構文の知識、解釈のための思考法が身につく本。網羅性がかなり高いのでおすすめである。例文がまず掲載されており、その文章の解説が掲載されている。練習問題もついているが例題が完璧になればそれで十分、知識は揃うと考えている。

 

・『ポレポレ英文読解プロセス50』(代々木ライブラリー)

…標準~難レベルの素材をもとに解釈の方法や英文の読み方、とらえ方を教えてくれる参考書。プロセスが非常に重視され英文を読むときの頭の動かし方が丁寧に解説されている。ただその分、基礎知識はとばされがちなので磐石な基礎力がないと理解に苦しむかもしれない。ライオンマークの問題はかなり難しいので注意が必要である。

 

・『英文和訳演習-中級編-』(駿台文庫)

…解釈の知識を身につけた人で実際に演習をしてみたい人向けの一冊。採点基準までつけられておりコンパクトではあるが和訳のエッセンスが凝縮している一冊のように思う。

 

<長文の参考書>

・『英語長文レベル別問題集』シリーズ(東進ブックス)

…東進ブックスからの1冊。1-6のレベルに分かれているが、基礎からやりたい人でもレベル3からで大丈夫だ。それぞれのレベルに応じた長文を読んで、問題を解き、その後の、すべての文についてSVOCや修飾関係が記された解説をていねいに読んで、自分の文章のとらえ方と違う点がないか確認してほしい。

 

・『やっておきたい英語長文』シリーズ(河合出版)

…河合塾から出ている一冊。300、500、700、1000にレベルが分かれている。良質な長文がそろえられているため自分にあうレベルのやっておきたい英語長文シリーズをぜひやってほしい。

 

<レベルの高い参考書>※合格点プラスαを狙う人向け。

・『速読英単語 (2)上級編』(Z会出版)

…難しい単語を長文の中でおぼえる参考書。システム英単語と一部単語がかぶっている。語彙力を増やしたい人向けである。長文のなかで単語をおさえていく訓練にもうってつけである。

 

・『リンガメタリカ』(Z会出版)

…難しい単語が分野別にまとまった参考書。専門的な英単語を勉強したい人向け。ここまでの語彙力をつけると受験生のなかでもかなり上位になると思う。ただし時間や労力を要するので優先順位を考えた上で取り組んでほしい。専門的な内容の英文と、そこに登場する専門的な英単語がセットになっている。そういった専門的な内容の英文にふれることは京大の英語のような少し難しいテーマにも対応する力をつけてくれるであろう。

・時間配分の例

 これは第3問の英作文問題をどうとらえるか、によって変わってくる。英作文でミスなく高得点を目指す受験生は英作文に時間を十分に割こう、と考えると…
第1問長文&第2問長文(75分~80分)→第3問(40~45分)
 また、英作文で高得点は厳しいからある程度書いて、和訳に力を置こうと考えると…
第3問(30分)→第1問長文&第2問長文(90分)