センター地学     文責/9点

1.出題形式/傾向

2.試験対策/勉強法

3.お勧め参考書・問題集

◎形式・解き方

制限時間は60分。大問が5つに分かれており、各大問につき小問が6問で全30問。

 

センター地学の各大問の問題形式は、

第1問 地球

第2問 鉱物・岩石

第3問 地質・地史

第4問 気象・海洋

第5問 天文

となっている。

 

また、平均点は以下のようになっている。

 

2014年 50.22点

2013年 68.68点

2012年 69.48点

2011年 64.30点

2010年 66.76点

 

2014年は今までの「地学は得点が取りやすい」というイメージを覆すほどの低い平均点となった。たしかに地学は高得点を取りやすいが、このような急な変化もあるので、対策はしっかりやっておこう。

 

 

それでは問題別の対策に入っていく。

 

 

第1問

地球の形や大きさ、内部構造などに加え、地震やプレート、火山などに関する地球に関する様々なことが問われる。地球のさまざまな基本事項に関しては、教科書や参考書を利用して覚えていけば比較的容易に解けるが、「地震」に関する問題は、地震そのものに関するものだけではなく、「地球の内部構造」「プレート境界」「地殻変動」などと関連させて出題されることが多く、注意が必要である。特に日本列島付近のプレートの動きと地震・火山活動は重要で、よく出題されている。

 

対策として、地震活動や造山運動をプレート運動と関連させて押さえなければならない。プレートに関しては、プレート境界の地学現象を理解することが重要であり、特に日本付近のプレートの名称やその動きについては覚えなければならない。地球の内部構造については、P波とS波の性質と関連させて理解しておく必要がある。また、第5問とも関連してくるが、地球の内部構造については、地球表面のようすや大気などと合わせて、ほかの惑星との比較も重要である。地磁気の三要素やアイソスタシーなどの問題は、頻出であるためしっかりと理解しておく必要がある。

 

 

第2問

この分野の出題の5割以上は、マグマの発生を含む火成岩とその造岩鉱物に関するものであり、マグマの発生条件や結晶分化作用による化学組成の変化などについては、読図問題も頻繁に出題されている。マグマの性質(粘性、温度)と噴火の様式、火山の形が問われることもある。鉱物に関しては、火成岩の主要造岩鉱物についてその結晶構造(SiO4四面体のつながり方)や化学組成、火成岩の分類との関連などを問う問題が多い。

火成岩以外では変成岩に関する問題が多く、C(石墨とダイヤモンド)やAl2SiO5(紅柱石、珪線石、藍晶石)の鉱物の安定領域のグラフを利用した問題が要注意である。変成岩については、造山運動と関連させて出題されることもある。

堆積岩についての出題は比較的少ないが、第3問の地質の分野ではこの知識が必要となる。

 

火成岩については、SiO2量によって分類された、火成岩の種類が示された図表(下図)を理解して覚えておく必要がある。

火山岩と深成岩の組織の違いについては、それらが形成されるまでの過程を理解しておくべきである。また、火成岩、変成岩、堆積岩に共通することであるが、見かけの特徴や、顕微鏡で観察した時のスケッチ図や写真の特徴は整理して覚えておかなければならない。

「マグマの発生」に関しては、プレート境界とマグマの発生との関連についても押さえておく必要がある。

 

 

第3問

地質図・地質断面図を用いた問題が毎年出題されており、地史と組み合わされて出題される。「走向・傾斜」「地層の厚さ」「地質構造の形成順序」などを読み取らせる問題が多く、化石が地質の問題に組み込まれることが多い。古生物の写真やスケッチ図を選ばせる問題も見られるため、対策が必要である。

 

地質図・地質断面図に苦戦する受験生が多いが、地質図・地質断面図の読み取りには、教科書的な知識だけではなく、ある程度の慣れも必要であるため、過去問などを利用して、図のどこに着目して読み取ればいいのかをつかまなければならない。地質図から立体的な地質構造が描けるようにしたい。また、近年は写真を用いた問題もよく出題されているため、教科書や資料集などの写真も参考にしたい。

示準化石や示相化石については名称だけでなく、ビジュアル的にも確認しておくことが必要なので、三葉虫やアンモナイト、フズリナなどをはじめとした化石をしっかりと確認しておこう。

 

 

第4問

気象分野では、「風の吹き方」「力のつり合い」「大気の大循環」などが頻出である。「風の吹き方」では、上空の風、低気圧、前線付近の風など、「力のつり合い」では気圧傾度力と転向力のつり合いやその向きに関連する問題が多い。「大気の大循環」では「北半球と南半球の違い」という視点から問われることも多く、注意が必要である。

海洋分野では、「海水の運動」(海流や鉛直循環)に関する問題が多い。「エルニーニョ現象」のように「大気と海洋の相互作用」に関する問題や、「海水の塩分」「海洋の層構造」についても繰り返し出題されている。海洋分野は出題範囲がせまいので過去の出題内容が繰り返し出題されることが多い。

 

「風の吹き方」については、風が安定に吹いているときに「はたらいている力がつり合っていること」「転向力の向きは風向きと直角方向(北半球では右向き)になること」の2点を押さえておけば、ある程度は対処できる。風の吹き方での力のつり合いのメカニズムは、海洋分野の「海流」についても同様のメカニズムが働いているため、必ず押さえておかなければならない。「太陽放射と地球の熱収支」についても近年よく出題されていて、温室効果と関連させて理解しておきたい。

気象分野では、「温帯低気圧と前線」「前線で発達する雲」について理解を深め、「日本の天気」における天気図や雲の画像の特徴などを気団と関連させて覚えるべきだ。

海洋分野では、扱われる内容が限定されているため、確実に得点すべきである。出題内容は「海水の運動」に関する問題が多いが、「風の吹き方」と同じように理解すればよい。「鉛直循環」も重要で、海水の温度や密度と合わせて理解しておきたい。

気象・海洋分野では、環境問題と関係している部分が大きいことにも留意しよう。

 

 

第5問

天文分野は、

①惑星と太陽系(惑星の視運動、惑星の性質、ケプラーの法則、太陽の構造と活動)

②恒星(恒星の基本的性質、HR図、恒星の進化)

③銀河系と銀河(銀河系の構造、銀河の性質、宇宙)

の3つに大きく分けられる。

惑星と太陽系では、地球の運動、惑星の運動、ケプラーの法則、太陽の構造と活動などが主な出題範囲で、標準的な問題が多い。

恒星では、HR図が頻出であり、これに関連して、恒星の性質(明るさや温度)や恒星の進化について問われることが非常に多い。また、明るさと距離の関係、明るさと大きさの関係など基本的な事項もよく問われている。

銀河系と銀河では、銀河系の構造、宇宙の構造と進化などについて出題されている。

 

惑星と太陽系では、基本的な事項がよく問われている。ケプラーの法則など、色々な法則の意味などを理解しておかなければならない。

恒星では「HR図の読み取り」を最優先にし、HR図には「太陽近辺の星のHR図」「星団のHR図」の2種類しかないため、過去問などで重点的に学習すべきである。HR図上の位置によって恒星の性質によって恒星の性質(半径・表面温度など)がどのように違っているか、太陽や主要な恒星がHR図上のどの辺りに位置するかなどを把握しておこう。

銀河系と銀河では、「銀河系の構造」「ハッブルの法則」などが中心になる。特に「銀河系の構造」については、「銀河系の大きさ」「ハロー」「バルジ」「円盤部」など、各部の名称と位置関係をしっかりと押さえておこう。

また、計算問題が多いため、ケプラーの第3法則、年周視差と距離、恒星の明るさと距離などの計算に慣れておく必要がある。

◎勉強法

地学は理科の中で最も覚えることが少なく、短期間の勉強でも点数が取りやすい教科と言われている。まずは、教科書や参考書を使用して基礎知識を身に付け、問題演習をこなそう。基礎知識を身に付けるときには、実際にセンター試験で問われたり、覚えているだけで解けたりするような、プレートの厚さや岩石の色指数、古生代などの年代などの数値に注目しながら勉強するといいだろう。しかし、単語や数値の暗記に留まらずに、それぞれの現象をイメージしながら理解を深めていくことで、応用力や思考力も身に付けるとよい。たとえば、フェーン現象の問題でも山や雲が問題文に書かれていれば、容易に解くことが可能であるが、山や雲がフラスコなどの実験器具に変わった途端に解けなくなってしまうことが考えられる。単語の意味や定義だけを覚えておくのではなく、さまざまな視点から理解しておくことが必要である。

 

また、地学だけではなくセンター試験では過去問と同じような問題が出やすいため、過去問を解いて問題演習を積み重ねよう。上に書いた解き方も参考にしながら勉強していくことが高得点につながるだろう。

・『センター地学の点数が面白いほどとれる本』(中経出版)

…この参考書は地学の全範囲を講義形式で網羅する参考書です。地学なんて中学以来勉強したことがないという初学者でも理解できる参考書です。また、説明がたいへん詳しく知識量についてはセンター試験レベルだと十分すぎる量が掲載されています。覚えるべきところが参考書のなかでまとめられているのでそのポイントはしっかり覚えていきましょう。この参考書はセンター試験の過去問を解いたりする際の辞書にもなる参考書で、問題演習でわからないところがあればこの参考書で調べてください。

 

・『短期攻略センター地学』(駿台文庫)

…この参考書はセンター試験の過去問や模試の過去問のなかから分野別に問題が並べられた演習用の問題集です。前提として基礎知識がないと解けないので講義本や授業で地学の概要を知り、基礎知識の暗記が終わった人がやる参考書です。問題を解いてわからないところがあれば解説を読み、それでも分からなければ講義本に戻って解決してください。解説があまりなく、特徴としてレベルの高い問題が揃えられているので、すでにある程度、点数がとれており高得点を目標にする人がやるべき参考書です。計算問題も充実しているので不安な人はやってみると良いかもしれません。

 

・『マーク式基礎問題集地学』(河合出版)

…基礎的な地学の知識をマーク形式の問題で演習する参考書です。この参考書も前提として基礎知識を問う参考書なので、講義本や授業で地学の概要をつかみ、基礎知識のインプットを終えた状態で取り組みたいです。センター試験でも易しいレベルの問題が中心なので、暗記した事項がきちんと覚えられているかどうかをチェックできる位置づけでもあります。まず基礎知識の定着をはかりたいひとにオススメの一冊です。高得点を安定して狙う人はもう少しレベルの高い問題集を追加すると良いかもしれません。