センター世界史     文責/9点

1.出題形式/傾向

2.試験対策/勉強法

3.お勧め参考書・問題集

◎形式・解き方

制限時間は60分。大問4つに分かれており、大問1つにつき9問、全36問となっている。

また、大問1つがA・B・Cの3つに3問ずつ分かれており、A・B・Cの最初にあるリード文に基づいて問題が作られている。

 

センター世界史の各小問の問題形式は、

1.単純選択問題

2.正誤文判定問題

3.組み合わせ問題

4.資料問題

の4パターンに大別できる。

 

 

1.単純選択問題

→4つの選択肢から、リード文の空所や設問に対して適切な語句や人名などを選ぶ形式。

 センター世界史において基本~易レベルで最も解きやすい形式であり、2点配点であることが多い。

 年度によって出題数が変化しやすく、2014年度では7問、2013年度では4問出題されている。

 

例)

問8 下線部⑧に関連して、19世紀にパン=イスラーム主義(現イスラーム主義)を唱えた人物の名として正しいものを、次の①~④のうちから一つ選べ。

 

① アフガーニー

② イブン=ルシュド

③ アラファト

④ シャー=ジャハーン

 

(2013年度 世界史B 本試験 第3問 問8 正解は①)

 

上に例として挙げておいたが、比較的容易に解けることがわかるだろう。

 

≪解き方≫

単純選択問題は、上の例で挙げたとおり、問われていることは基本事項である。

教科書や参考書などの太字などの重要部分とその前後を理解していれば、確実に解答できるようになっている。

 

 

2.正誤文判定問題

→リード文の下線部に関連した設問の4つの選択肢の正誤を判定する形式。

 センター世界史で最も多く出題されている。

 

この形式には、

⑴正文選択パターン

⑵誤文選択パターン

⑶条件付正誤選択パターン

があり、例年⑴の正文選択パターンがこの形式の中心となる。

 

 

⑴正文選択パターン

→4つの選択肢のうち正文を1つ選択する。他の3つは誤文である。

 

例)

問2 中華民国の歴史について述べた文として正しいものを、次の①~④のうちから一つ選べ。

 

① 山東半島のフランス利権をめぐって、五・四運動が起こった。

② 五・四運動は、上海での学生デモから始まった。

③ パリ講和会議に参加し、ヴェルサイユ条約に調印した。

④ ワシントン会議に参加し、九か国条約に調印した。

 

(2013年度 世界史B 本試験 第1問 問2 正解は④)

 

  1. ①誤文。「フランス利権」が誤りで正しくは「ドイツ利権」。
  2. ②誤文。「上海」が誤りで正しくは「北京」。
  3. ③誤文。「調印した」が誤りで正しくは「調印を拒否した」。
  4. ④正文。中華民国は、ワシントン会議(1921~22年)に参加し、中国の主権尊重・領土保全を約束した九カ国条約に調印している(1922年)。

 

 

⑵誤文選択パターン

→4つの選択肢のうち誤文を1つ選択する。他の3つは正文。

 

例)

問9 19世紀のイギリスのアジア・アフリカ支配について述べた文として誤っているものを、次の①~④のうちから一つ選べ。

 

① 威海衛を租借した。

② ビルマ(ミャンマー)をインド帝国に併合した。

③ ウラービー(オラービー、アラービー)の反乱を制圧した。

  1. ④南アフリカ連邦を成立させた。

 

(2013年度 世界史B 本試験 第4問 問9 正解は④)

 

  1. ①正文。イギリスは19世紀末(1898年)に中国(清)から九竜半島とともに威衛海を租借した。
  2. ②正文。イギリスは19世紀後半(1885年)にビルマ(ミャンマー)のコンバウン朝を滅ぼし、翌1886年ビルマをインド帝国に併合した。
  3. ③正文。イギリスは19世紀後半(1882年)にウラービー(オラービー)の反乱(1881~82年)を制圧し、エジプトは事実上の保護国とした。
  4. ④年代が誤り。イギリスは20世紀初め(1910年)に南アフリカ連邦を成立させ、自治領とした。

 

 

≪解き方≫

センター世界史で時間が足りないということはほぼ無いと思われるが(時間が足りない場合は知識不足)、正誤判定問題の形式は問題数が多いため、すぐに解けない問題は一時保留し、時間を使いすぎないように対処する。

正誤判定問題では、「明らかな正文」「明らかな誤文」と即答できない場合、消去法で選択肢を絞り込める。

正誤判定問題では、選択肢の文章が、正文が誤文、誤文が正文と迷うような構成になっている。正文・誤文を見分けるためには、上の例で挙げたように、選択肢に異なった年代(時代)や似ている名称・混同しやすい事項が書かれている、述語が変えられている、因果関係や年代の前後が逆になっているなど、こうした部分に留意することで正解を導くことができるだろう。

 

 

⑶条件付正誤選択パターン

→4つの選択肢の中から、問題の条件(時代など)に合う(合わない)ものを選ぶ。

 

例)

問9 第一次世界大戦中に起こった出来事について述べた文として正しいものを、次の①~④のうちから一つ選べ。

 

① フランスで、「平和に関する布告」が出された。

② ドイツ領南洋諸島が、日本によって占領された。

③ イタリアのキール軍港で、水兵が反乱を起こした

④ 中国で、共産党が結成された。

 

(2012年度 世界史B 本試験 第3問 問9 正解は②)

 

  1. ①誤文。「フランス」が誤り。「平和に関する布告」は第一次世界大戦中の1917年11月、ロシア革命によって成立したソヴィエト政権が発表した。
  2. ②正文。第一次世界大戦が勃発すると、日本は日英同盟を口実に参戦し、ドイツ領南洋諸島や、ドイツが中国から租借していた膠州湾を占領している。
  3. ③誤文。「イタリア」が誤り。キール軍港はドイツの軍港で、第一次世界大戦末期の1918年11月に水兵が反乱をおこした。これを機にドイツ革命がおこり、ドイツ帝国は倒れて新たに成立したドイツ共和国が連合国と休戦条約を結んだ。
  4. ④誤文。時期が誤り。中国共産党は第一次世界大戦後の1921年に結成された。

 

 

≪解き方≫

この形式の問題では、年代(時期)に関連した問題(年代をある程度把握していないと解答できない問題)が出題されやすい。年代だけでなく世紀を問う形での出題も見られるため、普段の勉強から年代を常に意識して出来事を把握していくことが必要である。

上の例では、文章自体の正誤を判定するだけでなく、「第一次世界大戦中」という条件に合致しているかどうか、時期も判定しなければならないため、やや難しい問題となっている。

この形式では、条件となっている「第一次世界大戦中」の重要事項を中心に解き進めていくことが肝要である。

 

 

3.組み合わせ問題

→リード文の下線部に関連した設問において、年代や正誤などの4つ(または6つ)の組み合わせのうちから正しい組み合わせを選ぶ形式。

 しっかりとした知識を必要とするため、センター世界史で間違えやすい形式である。

 

この形式には、

⑴空所補充パターン

⑵年代配列パターン

⑶正誤組み合わせパターン

がある。

 

 

⑴空所補充パターン

→2つ以上の空所に入る用語の正しい組み合わせを選ぶ。

 

例)

問8 選挙法改正について述べた次の文中の空欄(ア)と(イ)に入れる語の組み合わせとして正しいものを、下の①~④のうちから一つ選べ。

 

 イギリスでは、第2回選挙法改正によって(ア)などが、第3回選挙法改正によって(イ)などが選挙権を得た。

 

① ア―農業労働者 イ―都市労働者

② ア―農業労働者 イ―女性

③ ア―都市労働者 イ―農業労働者

④ ア―都市労働者 イ―女性

 

(2013年度 世界史B 本試験 第4問 問8 正解は③)

 

イギリスでは、19世紀前半の第1回選挙法改正(1832年)で産業資本家に選挙権が与えられた後、19世紀後半の選挙法改正で、さらに選挙権が拡大した。まず1867年の第2回選挙法改正により都市労働者に選挙権が与えられ、ついで1884年の第3回選挙法改正により農業労働者や鉱山労働者に選挙権が与えられた。

したがって、正解は③となる。

 

 

≪解き方≫

空所補充問題は、単純選択問題と同様に教科書の太字部分などの基本事項を正確におさえていれば確実に解答できるものが大半である。空所の前後に正解のヒントとなる語句が必ず書いてあるため、それを参考に、しっかりと得点すべきである。

 

 

⑵年代配列パターン

→事件や出来事などについて年代が正しく配列されているものを選ぶ。

 

例)

問3 中国の文化について述べた次の文a~cが、年代の古いものから順に正しく配列されているものを、下の①~⑥のうちから一つ選べ。

 

a 欧陽脩らの名文家が、活躍した。

b 顧炎武が、考証学の基礎を築いた。

c 『永楽大典』が編纂された。

 

① a→b→c

② a→c→b

③ b→a→c

④ b→c→a

⑤ c→a→b

⑥ c→b→a

 

(2013年度 世界史B 本試験 第2問 問3 正解は②)

 

a. 欧陽脩(1007~72年)は、唐宋八大家の一人とされる北宋の名文家で11世紀の人物。官僚でもあり、王安石の新法に反対して退官している。

b. 顧炎武(1613~82年)は考証学の祖とされる学者で、明末清初の17世紀に活躍した。

c. 『永楽大典』は中国最大の百科事典(類書)で、明の第3代皇帝である永楽帝の命で編纂され、15世紀(1408年)に完成した。

以上から、aの北宋→cの明→bの明末清初となり、正解は②となる。

 

各選択肢の正確な年代を知らなくても、aが宋(北宋)、bが明末清初、cが明初と確定できれば、宋→元→明→清という中国王朝の流れから、正解②が導き出せる。

 

≪解き方≫

年代配列問題では、主に同一地域(中国やインドなど)で起きた内容的にも関連のある出来事や文化などが扱われる。基本的には、地域の大まかな流れをおさえていれば、細かな年代を知らなくても解答できることが多いが、年代を覚えていないと解きづらい問題もあるため注意すべきである。

 

 

⑶正誤組み合わせパターン

→2つ以上の選択肢の正誤を判定させる。

 センター世界史において、難レベルになりやすい。

 

例)

問8 世界史上の奴隷制について述べた次の文aとbの正誤の組み合わせとして正しいものを、下の①~④のうちから一つ選べ。

 

a 古代ギリシアでは、戦争捕虜などを奴隷として使った。

b アメリカ合衆国では、奴隷が綿花などの栽培に従事した。

 

① a―正 b―正

② a―正 b―誤

③ a―誤 b―正

④ a―誤 b―誤

 

(2013年度 世界史B 本試験 第1問 問8 正解は①)

 

a. 正文。古代ギリシアは古代ローマと同様に奴隷制を基礎にした社会で、市場において売買された戦争捕虜や債務者を奴隷として使役した。

b. 正文。アメリカ合衆国では、綿花やタバコ・米・インディゴを栽培する南部のプランテーション(大農園)において黒人を奴隷として使役した。

 

≪解き方≫

正誤判定問題の変形ともいえるが、消去法が使えないため、個々の選択肢を十分に検討する必要があり、しっかりとした知識を持って対応すべきである。基本的な事項と歴史の流れを正確につかむことが必須である。ここ数年はこのパターンの出題数が増加傾向にあり、要注意の出題形式である。

2013年度本試験では、「19世紀に、東南アジアで展開した植民地経営の歴史について述べた次の文aとbの正誤の組み合わせとして正しいものを選べ」という形で出題され、年代判定も求められた。文章の正誤判定だけでなく、時代も判定する必要があるが、設問の時代を見落としがちであるため、慎重に解かなければならない。

 

 

4.資料問題

→リード文の下線部に関連したことに、地図や写真・絵などの資料を利用して作られた設問。

 応用力や思考力が試される問題。

 

この形式には、

⑴地図問題

⑵写真・絵の問題

がある。

 

他にもグラフ・表の問題や史料問題なども存在するが、これらは2003年以降出題されていないため、ここでは省略する。

 

 

⑴地図問題

→ある一つの地域(インドや中国など)を対象にした地図と、広い地域(ユーラシア大陸やアフリカ大陸など)を対象にした地図があり、地図から特定の場所(都市や地域の位置)または経路(旅行・交易・征服過程など)を選択する形式。

 大まかな場所を把握していれば解答できる問題がほとんどである。

 

ここでは例を省略する。

 

≪解き方≫

普段の学習の中で、教科書に載っている地図を見て、都市の位置(河川や山脈、半島を目印に)、領域や征服(獲得)地を確認しておくことが重要である。

主要都市の位置や(帰属をめぐる紛争地を含む)国家・王朝の領域が問われるほか、貿易など経済に関連した出題もある。特に大西洋奴隷貿易などの交易ルートと交易拠点都市(ゴア・マラッカなど)には注意が必要である。

アジア・ヨーロッパ・アフリカについては、近年は広域図や地中海周辺図の中で問われることも多くなっている。

アフリカやアメリカ大陸からの出題はそれほど多くないが、アフリカの黒人王国(ガーナ王国など)や古代アメリカ文明(インカ帝国・アステカ王国など)の位置関係は得点に直結しやすいため、学習は必須である。

 

 

⑵写真・絵の問題

→写真・絵は主に設問の答えへと導く道具として利用されるが、知っていないと解答できない問題も存在する。

 

ここでは例を省略する。 

 

≪解き方≫

教科書に確実に載っている写真や絵、それに付された説明を読んでいれば容易に解答できる。教科書の隅々にまで目を通し、資料集なども活用すべきだ。

 

 

長くなってしまったが、この項の最後に世界史Bの平均点を記載しておく。

 

2014年 68.38点

2013年 62.34点

2012年 60.93点

2011年 61.46点

2010年 59.62点

 

2014年は70点近いが例年はおおむね60点付近で収まっている。

◎勉強法

 

世界史を始めとした社会科目すべてに共通していることだが、まずは教科書や参考書などで基礎知識を学び、覚えることが問題を解く上で大前提である。特にセンター世界史は教科書がベースとして作られているので、まずは教科書を読まなければならない。ただ、教科書を漫然と眺めているだけでは意味がないので、太字で書かれているなどして強調されている基本事項に加え、その前後の事項・説明(人名や民族、時期など)などの出題されやすい部分を、いつ頃の出来事なのかを意識しながら理解すべきである。

 

社会科目を一から独学する人には、教科書を読むことから始めると少々難しいため、講義本などを使用してから始めることをお勧めする。具体的には、『ナビゲーター 世界史B』などが例として挙げられる。

 

しかし、センターの過去問を解いていると教科書には載っていない事項が出てくることもありうるので、用語集などを使用してカバーすることも必要である。ただ、教科書に載っていないような時には、消去法で選択肢を選べることがほとんどであり、センター対策では用語集の使用は若干オーバーワークとも言えるだろう。

 

センター世界史では、時代も地域も幅広く覚えていることが要求される。古代から現代まで、地域に関しても特定の地域に偏ることなく出題されている。

 

出題のされ方から見ていくと、

 

①同時代・同地域からの出題

②同地域の通史

③同時代の世界各地について

④世界各地の通史

 

といったように、「タテの歴史」だけではなく「ヨコの歴史」もしっかりと頭に入れておかなければならない。

 

勉強法としては、

 

①タテの歴史→ヨコの歴史

②ヨコの歴史→タテの歴史

 

の2通りがあると思われるが、まずは①のタテの歴史から学んでいくこと方が取り組みやすいと思われる。教科書でも、特定の地域(中国やヨーロッパなど)の歴史が順々に書かれており、このように学んでいくのがいいだろう。タテの歴史を学んだ後に、この年代・時期には世界各地でどのような出来事があったのか、というヨコの歴史を学ぶのが頭にもはいりやすいだろう。

 

センター世界史で落としやすい問題として、文化史や資料問題、女性史や日本史に関する問題などが挙げられる。文化史の問題では、人物名や作品名が入れ替えられたりするので、細かいところまでしっかりと覚える必要がある。資料問題では、教科書に記載されてある歴史上で重要な都市・河川・領域や条約に関連する割譲地などをチェックし、資料集で建造物や作品を見ておくことで解けるようになっていく。こうした問題も、手間を惜しまず教科書や資料集を利用し、整理しておくべきだ。

・『世界史年代ワンフレーズ』(パレード)
…年号がとにかくたくさん暗記できます。