センター倫理・政治経済 文責/いちかわ
この項では倫理と政治経済、2つの科目について記述します。
これは「倫理」「政治経済」という科目だけについて言及するのではなく、「倫理・政治経済」という科目に対しても記述をしていきたいと考えたからです。
勿論、倫理、政治経済単体ごとの記述は行いますが、近年では倫理・政治経済選択の需要が高まってきている点から考えても、「倫理・政治経済」を中心に書いていきたいと考えています。

1.出題形式/傾向
2.試験対策/勉強法

◎形式
「倫理・政治経済」は全部で6問。問題構成は以下のようになっています。
第1問 青年期分野・現代の諸課題(現代社会、倫理)
第2問 源流思想・日本思想(倫理)
第3問 源流思想・西洋思想(倫理)
第4問 国内政治・国際政治・国内経済・国際経済のテーマから出題(政治経済)
第5問 国内政治・国際政治・国内経済・国際経済のテーマから出題(政治経済)
第6問 国内政治・国際政治・国内経済・国際経済のテーマから出題(政治経済)
倫理分野が3題、政治経済分野が3題となっており、倫理、政治経済の全範囲から万遍なく出題されます。元々2科目だったものが1科目に集約されたからと言って、内容が薄まるわけではないので、文字通り2科目分の学習をする必要があると言えます。
2012年に再導入されたこの科目の平均点は以下のようになっています。
2014年 67.29点
2013年 60.68点
2012年 67.14点
2013年度だけ低かったものの、他の年は60点台後半と、公民分野では比較的高い平均点となっているのが分かります。
次に「倫理」の形式について記述していきます。
倫理の問題数は全部で4問(2012年以前は5問)。問題構成は以下のようになっています。
第1問 青年期・現代の諸課題
第2問 源流思想
第3問 日本思想
第4問 西洋思想
倫理の各分野につきひとつの大問が設定されている形になっています。
また、平均点は以下のようになっています。
2014年 60.87点
2013年 58.83点
2012年 69.01点
2011年 69.42点
2010年 68.66点
2009年 71.51点
倫理・政治経済が出現してから平均点が10点近く下がっているのが分かります。
これまでは倫理と言えば高得点が短期間で取りやすいお得な科目として扱われることも多かったが、そうではなくなったか、もしくは(こちらの方が主な原因と考えられるが)旧帝国大学などの上位大学では「倫理」「政治経済」は使うことが出来ず、公民は「倫理・政治経済」指定になり、上位層の受験生が受験しなくなったことが考えられます。
いずれにしてもしっかりとした対策が必要なのは言うまでもありません。
最後に「政治経済」の形式について記述していきます。
政治経済の問題数は全部で5問。毎年大問ごとに必ず出題されるテーマのようなものがあるわけではないですが、出題されてきた分野は以下のようなものがあります。
・戦後の日本経済(経済)
・社会資本(経済)
・福祉国家(政治)
・労働問題(政治)
・選挙(政治)
・消費者問題(政治)
・地方自治(政治)
・市場経済(経済)
また平均点は以下のようになっています。
2014年 53.85点
2013年 55.99点
2012年 58.97点
2011年 59.16点
2010年 59.16点
このように、社会という教科の中で最も低い平均点となっています。
形式の部分で後述しますが、政治経済という科目は細かい事例の暗記や図やグラフの読み取り、時期による制度の変遷や時事的な問題までかなり幅広い出題範囲になっており、中途半端な勉強だと一定以上の点数が取れないということが主な原因として考えられます(常識で解ける問題もあるので、全く解けないということはないですが)。
そして、歴史科目と同様に(またはそれ以上に)倫理・政治経済もともに「正誤判定」の問題が中心となっています。
以上が各科目のおおまかな形式です。
◎傾向
倫理で最も重要なことは「思想の内容を理解している」ということです。
倫理は各思想家の思想の内容を問う問題が出題されますが、出てくる用語や思想の内容を文章化したものを丸暗記すればいいというものではありません。
思想の内容を「自分の言葉で端的に説明できる」レベルの理解が必要です。
「この人物はこのような用語を用いて…」のような知識の重要性はかなり薄いです(なぜなら用語等は内容を理解しようとする段階でほとんど覚えてしまうし、この部分を積極的に聞いてくる問題はセンター試験には出ないから)
「この人物が言っていることはつまりこういうこと!」というような姿勢で理解することが重要です。
例えば「垂加神道」や「上下定分の理」などのような用語が倫理にはりますが、
「垂加神道は山崎闇斎で上下定分の理は林羅山だよね!」
というような知識はあまり意味がないのです。
「垂加神道は山崎闇斎の言葉で、外来の儒教と日本の神道を融合させ独自の新たな宗教をつくったもの。つまりは儒教と神道が混ざったもの。上下定分の理は林羅山の言葉で身分秩序を表し、江戸幕府の思想的基盤であったもの。つまりは身分制度のこと」
というような理解が必要です。ここまで理解して、初めて倫理の問題が解けるようになります。
次に政治経済について記述をします。
政治経済は政治と経済が混ざった科目であるため、出題内容が多岐に渡ります。形式の部分にも書いたように、大問に特定の範囲が出題されることはなく、戦後経済や市場経済という経済全体に関した広い範囲からの出題や、実際に起こった事件を題材にした労働問題や社会福祉に関連した部分的な範囲からの出題、最近起こった事件や問題を題材にした時事問題などかなり内容は豊富です。
こういった傾向のため、勉強範囲は意外に広く、社会科目全体の中でも一番高得点が取りにくい科目と言えるでしょう(時事的なことに詳しい人は除くが)。
さらに、正誤判定は形式の中心なので、ひとつの事件、ひとつの用語を取っても正確に内容を覚えていなければいけません。紛らわしい用語がたくさんある政治経済でしっかり覚えるとなるとかなりの労力を要するのは覚悟してください。
以上がおおまかな傾向となります。

◎対策
・倫理の対策
傾向にもあった通り、倫理は内容を具体的に自分の言葉で説明できるくらいに学習をする必要があるので、まずは丁寧に各思想家の思想内容を理解することから始めましょう。
このような具体的な内容は教科書等では把握しづらいので『解決!センター倫理』のような、図や絵も豊富で分かりやすく内容が説明されている参考書を使うと良いでしょう。そして、このような参考書を読むときにオススメなのが、「各思想家の思想内容を自分で要約してみる」ことです。漠然と読むよりは、自分で何を言いたいのかを考え、手を動かして書いてまとめてみることでかなり内容が頭に入ってきやすくなります。倫理はそれほど覚えることがあるわけではないので、質よく勉強をしていきましょう。
また、各思想家の内容を理解しながら同時進行で、センター試験の過去問を解いていきましょう。これも『解決!センター倫理』などが取り組みやすい形式になっています。
これはなぜかというと、実際に問われる形ですぐに問題を解いた方がより深く内容を理解できるからです。様々な角度から思想内容を観察することで、より様々な問題に対応できる力がついてきます。
倫理はこのような作業を全範囲において行えば、倫理で高得点を取ることはそれほど難しいことではありません。
・政治経済の対策
政治経済は倫理のようなある意味でのアバウトさは通用せず、用語の正確な理解を要求されます。
なので、『センター政治経済の点数が面白いほど取れる本』などを通読した後には、実際に問題を解いて、その問題文、選択肢に書かれてある言葉、キーワードをひとつひとつ丁寧に吸収していく姿勢が必要になってきます。かなり地道な作業ですが、問題を解きながらだと、政治経済は1問がひとつのテーマを持っているので、そのテーマの内容の多くを吸収できます。なのでそれほどつらいと感じることも少ない気がします。
これも『解決!センター政治経済』などが問題集として取り組みやすい形式となっているので、解説をしっかりと読みながら丁寧に取り組んでいきましょう。
政治経済ではテキストに書かれていないマニアックな選択肢がよく出題されますが、その正誤は残りの選択肢の正誤が知識で判断できればおのずと決まるので焦る必要はありません。知識で解ける問題を増やしていくことが最優先です。
おおまかな対策は以上です。
◎勉強法 例
①
まずは倫理から。『解決!センター倫理』の解説ページを読み、頭の中で要約しながら(もしくは要約したものを書きながら)思想家ごとのおおまかなイメージをつくる。
②
各思想家ごとに、右ページについてるセンター試験の過去問を解く。このとき合ってる間違っているに関わらず、他の選択肢の思想も確認しておく。選択肢のどこが間違っていて、どこが合っているのかを明確にしながら問題を解く。間違ったものには×を付けて復習に回す。
③
次に政治経済に取り組む。『センター試験政治経済の点数が面白いほど取れる本』を読み進めながら内容をまとめる(かなりの量があるので、繋がりを意識しつつも小分けにしてまとめるのも有り)理解を重視する。
④
講義本を読みながら分野ごとに『解決!センター政治経済』で問題演習をし理解を深める。このときすべての選択肢に対して関連事項を考えメモをする。根拠を持って答えること。間違ったものには×を付けて復習に回す。
⑤
倫理・政治経済の過去問を解き、目標点に達するまで演習⇔復習を繰り返す。

・『解決!センター倫理』(Z会出版)
…個人的に、倫理の参考書で一番優れていると思う本がこの一冊です。前述したような思想家の思想内容をイラストや分かりやすい具体例などで、ここまで詳しくするかというほど詳しくまとめてあります。さらにセンター試験の過去問が練習問題としてついていて、知識を入れたらすぐ演習して整理していく、というオーソドックスな方法が取りやすい点も魅力です。センター倫理の対策はこの一冊で十分、と自信を持って言える参考書です。
・『センター試験政治経済の点数が面白いほど取れる本』(中経出版)
…政治経済はその量と内容からなかなかコツがつかめないことが多いです。なので、分かりやすく、体系立てて解説がされているこの参考書をオススメします。問題集が少ないので、この本で得た知識を必ず過去問や問題集等を使って確認していきましょう。
・解決!センター政治経済(Z会出版)
…倫理のものとは異なり、解説はかなり少なく的を絞ったものになっています。なので、面白いほど取れる本などで知識を一通り詰めた後の演習書として活用するのが望ましいです。演習書としてはかなり優秀だと感じます。