センター物理     文責/いちかわ

1.出題形式/傾向

2.試験対策/勉強法

3.お勧め参考書・問題集

◎形式

試験時間は60分。大問は全部で4つ。

大問ごとの分野構成は次のようになっています。

 

第1問 小問集合(全ての分野から数問ずつ出題)

第2問 電磁気

第3問 波動

第4問 力学、気体の状態変化

 

基本的な問題が多く、基本的な物理現象をしっかりと理解していれば高得点を取るのも難しくないと思います。

 

一方で公式の暗記や典型問題の丸暗記は通用しません。

 

センター物理は見慣れない題材を扱い、物理現象を正確に見てくる問題や、定性問題(身の回りの現象を物理的に考える問題)なども多いので、公式を使って計算できるというよりは、各分野の物理現象はなぜ、どのように起こってどういう結果が得られるかなどの理解の点に重点を置くことが必要になってきます(特に第1問の小問集合でいきなり定性問題を問われることが多いので中途半端な勉強をしている人は面食らうかもしれません)

 

国公立の二次試験や私大の問題とはこの辺りの傾向形式が大きく違うので注意をしましょう。

具体的には2014年度の物理の問題で「立ち木への落雷」「ベルトコンベアをモデルとしたドップラー効果の説明」などの見慣れない題材の問題が出題されました。

 

平均点は

 

2013年度 62.70点

2012年度 68.03点

2011年度 64.08点

2010年度 54.01点

2009年度 63.55点

 

となっており、ほとんどの年が60点台で収まっています。

 

この平均点は他の科目と比べても低いわけではなく、苦手意識を持つ人が多い物理といえども、上記のような現象の理解を丁寧に出来ていればしっかりと点数は取れるということが分かります(数値計算問題も多くはない、というのも要因のひとつと考えることが出来ます)

 

 

◎傾向

前述したように物理現象や公式が何を表しているか、今の状況を式化、グラフ化できるかなどの理解の点に重点が置かれています。つまり問題を解くときも「与えられた状況は何を表しているのか」を丁寧に考えて確実に解くスタンスが重要です。

 

また、物理の場合は「初期の状態」「変化の過程」「結果の状態」の3点に目を向けることが重要です(力学を勉強した人なら分かると思うが、力学的エネルギーの保存などはこの3つの状態ごとに式を立てたりすることで問題を解きます)

 

初期の状態と結果の状態における位置や時間などが違うだけで別の式が立てられたり、変化の過程で変化した部分に着目してその後の行動を予測してグラフ問題に答えたりすることもできます。これは公式の暗記ばかり行っていて出来るようになる操作ではないのは分かるでしょう。

 

また各状態を把握するのと同時に考えなければいけないのが「今どの力が働いているか」ということです。

 

例えば、電磁気の問題で「今図中で発生している力はこの部分に電気抵抗Rとこの部分に電流I。この部分の電圧Vとの関係式ををグラフで考える問題だから、オームの法則V=RIよりこの部分の電流Iが増加すればするほど比例関数的に電圧も増加する。だから比例関係になっているものを選べばいいんだ!」などのよう思考をして解く場合があったとします。この後半部分のオームの法則を使う、という思考過程に至るには「電気抵抗Rと電流Iが働いている」ということを問題文や図から把握しなければなりません(解くにはさらにオームの法則がどういう規則で働いているかを知らなければいけませんが)

 

なので、問題を解くときは落ち着いて今発生している力を把握して書き出し、利用する法則や考え方を決める姿勢も重要になってくると思います。

 

 

最後に「単位」も意識しましょう。

 

例えば加速度aの単位やエネルギーの単位などは常に意識をしていますか?物理と言う科目はこの「単位」がものすごく重要になってきます。単位を計算するだけで解けてしまう問題もあります。また、公式やあらゆる物体物質の動きのイメージを捉えることも出来ます。

例えば速さv(m/s)、位置x(m)、時間t(s)の関係を考えてみましょう。

 

それぞれカッコ内が単位ですが、速さvは位置xと時間tの単位を使って出来ていますよね?つまり速さvというのは

 

v(m/s)=x/s(m×1/s=m/s)

 

ということが分かります。両辺ともに同じ単位ですよね。

 

つまり速さvは対象の物体が単位時間あたり(1秒当たり)でどれくらいの位置に到達できるかを考えたものであることもイメージできます。

 

そしてこのことを知っていれば、x=vt、t=x/vなどのように単位を考えて無理やり式を変形するだけで大抵の値は計算できます。公式など知らなくても導けるということです。

 

今のは簡単な例で当たり前だと思うかもしれませんが、

 

例えば加速度を使ったv=v0+atという公式

 

先程の速さvと時間tに加えて、v0は初速度、aは加速度ですがそれぞれの単位は

 

v0(m/s)…元々この物体はどの程度の速さvを持って動いていたのか(最初が静止状態なら初速度v0は0)

a(m/s^2)…この物体は動くにつれてどのくらいの速さずつ加速していってるのか

 

です。

 

これを見ると

 

v(m/s)=v0(m/s)+at(m/ss×s=m/s)

 

となり、こちらも両辺の単位は同じです。

 

このように物理法則や公式に出てくる単位は両辺で必ずイコール関係にあります(=なので当然と言えば当然ですが、これを意識しないでがむしゃらに式変形をしたり、無理やり計算したりする人が物理が苦手な人や初学者の中にはかなり多いと思います)

 

上のようなことが分かると

 

「加速度aの単位は(m/s^2)だから位置xと時間tを使ってx/t^2で表すことが出来るな。あ、じゃあ(m/s)は速度vだからこれを使えばv/tとも表すこともできる!つまりa=x/t^2=v/tと表すことが出来るから、問題文に直接加速度の情報がなくても、物体の位置やその時の経過時間があればこの物体の加速度や速度は求められるし、加速度や速度を使った公式を使うことも出来る!」という思考に至ることが出来ます。

 

また「加速度aはv/tだから単位時間あたりのvの変化…つまり1秒ごとに速度が変化していってるから加速度って言うんだな!」のように公式や物体の動きのイメージを深めることも可能です。

 

このイメージが出来れば、この公式はある物体が持っている速度は、元々この物体が持っている速度に1秒ごとに変化していった速度(加速度)を加えたもので表すことが出来るから、例えば「元々時速30kmで走っている自動車が1時間ごとに10kmずつ速度がアップしている。そしたら3時間後にはこの自動車の時速はおそらく60㎞になってるよね。」というイメージが出来ます。そうすればなんとなくこの3時間後にこ自動車がどれくらいの位置にいるかも考えられそうですよね?これが単位を絡めた理解の仕方です。

 

当たり前のことかもしれませんが、ここまで理解してようやく物理の問題を解くときに知識が活きてきます。公式を覚えてそれを何も考えず問題で使うような表面的な勉強や解き方をしている人は気を付けましょう。

解き方の部分で重要な点は一通り書きましたので、上記のようなことを意識して勉強をするが良いということは分かってもらえたかと思います。

授業を受ける際もこのような理解の仕方をするという意識をもって臨むと、より多くのことを吸収できると思います。

 

また初学者や独学の受験生に向けてはこのような理解を促してくれる参考書の利用をオススメします。このようなことは知識がないままだとなかなか気付くことが出来ないと思いますので。

具体的には『漆原の物理ⅠⅡ明快解法講座』や『センター物理の点数が面白いほど取れる本』などをオススメします。特に前者は公式のイメージ、問題の解き方、全範囲を網羅という点で物理の面白さにも気づけるような1冊となっていると思います。

 

また、基本的には物理と言う科目は数学と同様に問題演習を通してすべてを覚えていった方がいいと思います。その問題に含まれている考え方を習得していく方法が一番効率よく成績を伸ばせると思います。なので、1問に含まれている事項を徹底的に考え、その問題のイメージを捉えるようにしながら演習し、間違ったものや理解できなかったものはもう一度丁寧に説明を読むなり、自分より出来る人に聞くなりして解決し、もう一度自力で問題を解く、という地道な作業をオススメします。

 

 

◎勉強法 例

『橋元の物理をはじめからていねいに』を通読し、物理現象のイメージを捉える。深い理解にこだわらずに、表面的な理解でもすらすらと読み進めることを意識する。

この講義本を参照しながら『漆原の物理ⅠⅡ明快解法講座』の解説と合わせてこの参考書の問題を解く。出来た出来ないに終始せず、なぜその答えを導くことが出来たのかを自分の言葉で考えメモして一問一問こなす。出来なかったものには×を付け、自力でスラスラ解け、しっかりと理解出来るまで解く。

『短期攻略 センタ―物理』に収録されている問題をすべて解く。センター試験の物理に慣れ、分野ごとに分かれていることを利用して、分野別の逆転補強を行う。この後過去問に取り組み、演習と復習を繰り返す。

・『橋元の物理をはじめからていねいに』(東進ブックス)

…センター試験の範囲を網羅しているわけではないが、とりわけ初学者が理解しにくい物理という科目を懇切丁寧に解説してくれている参考書です。物理が苦手な人は勿論、何から始めていいか分からない人などはこの参考書からスタートしてみてもいいと思います。

 

・『漆原晃の物理物理I・II明快解法講座』(大学受験Do Series)

…はじめからていねいに多くの問題と範囲を追加したような本です。解説はとても詳しく、網羅性も高く、理解を逐一演習で確認できるためとても優れている参考書だと思います。ただその分それなりに時間がかかるので、はじめからていねいにで先に外観を固めてしまってから取り組んだ方が時間の節約になるかもしれません。

 

・『短期攻略!センター物理』(駿台受験シリーズ)

…センター試験の問題が分野別に分かれたシンプルな問題集。薄い割に基礎的な問題を網羅しており、短期間で一定の点数を取ることが出来ます。文系で物理を選択していてあまり時間をかけることが出来ない人には特にオススメの一冊。