東大の講義(理科) 文責/Troper
◎授業の分類
講義は1コマ90分で、基本的には1週間に5日間×5コマ=25コマ開講されます。
一般的には、進級要件を満たすよう、16~18コマ程度の講義を選んで受講します。
ただし、27年度以降はカリキュラムが大幅に変更されます。この記事に記載されている事項は全て26年度入学の学生に適用されるカリキュラムに基づいていますので、注意してください。
・必修科目…科類毎に指定。単位を取らなければならない科目。講義の大筋は決められているため、講師の裁量が小さい。
例:理科一類1学期は以下の12コマ。
数学3コマ・英語2コマ・第二外国語2コマ・力学・熱力学・情報・生命科学・体育
・準必修科目…科類毎に指定。理科類の学生は単位を必ずしも取る必要はなく、総合科目の一部。その科類なら取っておいた方が良いよ、というお勧めのようなもの(?)。
例:理科一類1学期は以下の2コマ。
基礎統計・基礎現代科学
・総合科目…選択して受講することができる。講師の裁量が大きく、様々な種類の科目がある。
○A系列(思想・芸術):宗教、芸術、言語、文学、哲学など。
○B系列(国際・地域):英語、第三外国語、国際関係論など。
○C系列(社会・制度):教育、法、経済など。
○D系列(人間・環境):脳科学、身体科学など。
○E系列(物質・生命) :物理、化学、工学、生物など。
○F系列(数理・情報):数学、統計、作図、プログラミングなど。
・主題科目…点数は付かない。少人数制のゼミのような講義から、外部の講師を招く講演会のような講義、フィールドワークという名目で旅行する講義まで様々。将棋、座禅、数学、法学のゼミなども。
◎総合・主題科目の紹介
総合科目、主題科目に関してはイメージが湧かないと思いますので、筆者が実際に受講した講義を軽く紹介します。(C,D系列は受講していません。)
○A系列:言語生態論
中世の英詩・仏詩(Geoffrey Chaucer, Gace Bruléなど)を原文で味わう。歴史的な背景や宗教的な価値観、身分制度の在り方、そして文学的な表現に着目し、時代を追いつつ読解を試み、言語の流動性を実感する。
朗読や歌の鑑賞、生徒の解釈の発表なども行う。
レポートと試験により成績評価。レポートも試験も詩の解釈。
○B系列:米英文学への誘い
英米文学の紹介。Earnest Hemingway, George Eliotなど。
時代の流れや作家の特徴、英米文学の歴史を捉えた上で原文で小説や詩を鑑賞する。
映像作品との比較なども。
試験により成績評価。試験は与えられたテーマから一つ選び、論述。
○E系列:自然現象とモデル
物理において自然現象を記述するには、モデル化が必須。
歴史的に重要なモデルの紹介、超伝導現象などのデモ実験など。
レポートにより成績評価。レポートは自主モデルの作成など。
○F系列:基礎統計
理一の準必修科目。
種々の分布、不偏分散や検定など、文理を問わず必要となるような統計的な分析の基礎を扱う。
試験により成績評価。試験は簡単な統計処理の問題。
○主題科目:仏教経典を読む
講師による背景的な知識の解説を交えながら仏典を読む。
また、生徒が感想や考察などを発表する。
◎進学振り分け(進振り)について
筆者の感じる、高校の授業と大学の授業の相違点を紹介します。
○幅の広さ
この記事でも紹介した通り、東大では非常に幅広く様々な講義が開講されており、文理を問わず自分の興味のある分野の講義を受講することができます。
与えられたカリキュラムの中で行う高校の授業との最も大きな違いです。
○選択の自由度
大学の講義は、総合科目は自分で選んで受講する科目を決めます。上記で述べた通り自分の興味のある分野の講義を選択することができるメリットがある一方、選択に対して自分で責任を取らなければならないリスクもあります。たいていの場合は初回のガイダンスで告知されますが、講義の中には予備知識がないと全くついていけないものもあります。
また、一週間のうちのどこに授業を入れるかも自分で考えねばならない訳ですから、それに合わせて生活スタイルも多様化します。
○授業の目的
高校の授業は明確に生徒の知識、技能の習得に目標が置かれていたはずですが、大学の講義は必ずしもそうではありません。学問分野の紹介を主眼に置いた講義、生徒の能力が全く考慮されていない講義など様々です。また、講義は高校の授業よりも一方通行的に行われます。そのため、殆どの生徒が理解できないことがあっても、多くの場合教員は気が付かず、助け船が出されることは稀です。従って、授業についていくための参考書などによる自主的な勉強の必要性が大きくなります。