コリンズの冷却FAN

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 古い真空管の機械では、熱によるストレスを減らし、部品の耐用年数を出来るだけ延ばす為に、冷却FANを取り付けるのが一般的に行われている。冷却FANは、音が静かな事やスマートに取り付けられる事がポイントとなる。入手し易い汎用の冷却FANを利用した具体的な装備方法を解説する。  

 
1.FANの選択

 冷却FANに求められる要件は、
  1. 廉価で入手しやすい事
  2. 動作音が静かである事
  3. 機械の電源と連動してON/OFFが出来る事

これらの要件を満たすには、中古の12Vで動作するコンピュータの冷却FANが適している。この類のFANは1を満たす。電源はヒーター電圧のAC6.3Vを整流してDC10V程の電圧を供給すると良い。これは2、3を満たす。

FANへの供給電圧を低くすれば静かな低速回転を得る事が出来る。ただ、余り電圧を低くするとFANの起動が出来なくなる。つまり、起動電圧をどれ程低く出来るかが、FANの動作音を低く抑えられるかのポイントとなる。

起動電圧と、FANの回転音の関係は、FANの固体により異なる。特に、中古のFANの場合は、経年変化も手伝い、そのばらつきが大きい。このため、FANを複数種類購入し、テストにより一番条件が良い物を選択すると良い。

筆者がSラインに使用しているFANは、電源トランスの唸り音よりも静かで、FANが回転している事がわからない程である。中古のFANは概ね500円以下で入手できる。

FANの回転方向が問題となるが、埃対策のために吐き出しとなる回転方向とするのが良い。

75S-3Bの上蓋の裏に取り付けたFAN


 
2.電源回路

 (1)ヒーター電圧の取り出し方

   機械により異なるが、概ね下記の通り。

  • 32S-X、KWM-2は312B-4の照明他の用途でAC6.3VのRCAコネクタが背面にある。
  • 75S-XはスペアのRCAコネクタが背面にあるので、これにヒータートランスから配線する。
  • 51S-1はヒータートランスがAC24Vとなる。特定の真空管のヒーターから6.3Vを取れば簡単だが、ヒーター電圧のバランス上、余りお奨めできない。AC24Vをそのまま使い、SHUNT抵抗で電圧を下げるのが無難。

 (2)整流回路(32S-X、75S-X、KWM-2)

  • AC6.3Vを半波整流し、コンデンサで脈流を平滑する。
  • コンデンサの値を適正に選択して、FANがスムーズに起動する限界の電圧に設定する。コンデンサの値が小さいと、脈流のリップルが大きくなり、FANが起動し難くなる。筆者の場合、コンデンサの値は、470μFであった。
  • この時の電圧は概ねDC10Vであった。
部品名 規格 個数
FAN DC12V用
ダイオード 適当な物
平滑コンデンサ 470μF 25V

 (3)整流回路(51S-1)

  • AC24Vを半波整流し、コンデンサで脈流を平滑する。コンデンサの値は470μFとした。
  • 平滑した後に、抵抗とFANを直列に接続して、FANに加わる電圧を分圧する。FANがスムーズに起動する限界の電圧に設定する様に抵抗を選択する。
  • 抵抗は300Ωとなったが、相当に熱を持つので、2Wの物を使用した。
  • この時の電圧は概ねDC10Vであった。
部品名 規格 個数
FAN DC12V用
ダイオード 適当な物
平滑コンデンサ 470μF 50V
分圧抵抗 300Ω 2W

FANの回路図

51S-1の上蓋の裏に取り付けたFAN
(整流回路、ケーブル固定のクランプが見える)


 
3.FANの取り付け

 機械の上蓋の裏に取り付ける。取り付けの注意点、機械による取り付け位置は次の通り。

 (1)取り付けの注意点

  • FANの取り付け穴と上蓋のパンチングのパターンを合わせ、穴は開けない方が良い。
  • FANを取り外した時に、上蓋にキズが残らないように、紙製のワッシャを使用する。
  • 整流回路の部品は、ラグ端子を使用して上蓋の裏にマウントする。
  • 配線は、上蓋に適当な間隔で固定して、ケースの後ろのケーブル導入穴から外に出し、RCAコネクタに接続する。

 (2)FANの取り付け位置

  • 32S-X、KWM-2はファイナルBOXとスラグラックに当たらない様に取り付ける。
  • 75S-Xはスラグラックに当たらない様に取り付ける。

75S-3Bの背面の接続の様子