NRD-515のTCXO化

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 コリンズネタではないが、兼ねてから気になっていたNRD-515のSSBにおける周波数変動の改善にトライしてみた。このNRD-515は入社後間もない未だ船舶の艤装を担当していた頃に、オールウェーブ受信機が欲しくボーナスをはたいて購入し、それ以来、故障一つなく安定して稼働している。ただ、AM受信音が歪みっぽかったのでSherwoodのAMフィルターを装着した(音質が劇的に改善)。一方、SSBは文句はなかったが、最近のHiFi受信には少々周波数変動が気になり、物足りなさを感じていた。その中で、先日たまたまオークションで廉価な10MHzの小型TCXOを見つけたので、購入し基準発振器に装着する改造を実施してみた。以下にその過程と結果を記載する。

 

1.TCXOの要件
 
 特にハードル高くはないが、DC5Vで稼働し、現在の10MHz水晶が入っているシールドケースに収まり、出力が2〜300mV(P-P)有る事をクリアできれば、最小限の改造で実装する事が出来る。


 
2.TCXOの実装

 (1) 下の左端の写真が10MHzの標準発振器のシールドケースを取り外した様子。この写真の右側に見えている水晶、水晶の左側の抵抗を取り外し、
     DIP型のICの上にTCXOを両面テープでマウントする。

 (2) 取り外す部品、実装する配線箇所は回路図の通り。

 (3) 取り外す手順は次の通り。

    〇 受信機の下のケースを外す。そこにマウントされているのがシンセサイザー基盤なので、ネジを7個とりはずす。

    〇 RCAプラグ、フラットケーブルを取り外し、シンセサイザー基盤を取り外す(▼印が付いているネジは基盤にマウントされているPLLユニットの
       固定用ネジなので外さない)。

    〇 基盤の裏から標準発振器のシールドケースを止めているネジを取り外す。この状態が右の写真となる。

 (4) 下の回路図のTP15での信号レベルが500mV(P-P)位であれば問題ない。波形はサイン波ではなくてもよい。

 

シールドケースを取り外した様子 基準発振器の回路図 実装した様子 信号レベル

 
3.実装後の考察

 (1) 実装後の周波数偏差は下のグラフの様だった。
     ウォームアップ(1時間)後に1時間当たり3Hz程度に落ち着き、周波数が一旦+に振れ戻った。     

 (2) TCXOの精度が1ppm、水晶の精度が50ppmと思われるので、水晶発振回路によりこの様な特性が出ていると考えられる。
     NRD-515の周波数偏差仕様は、ウォームアップ後1時間当たり50Hz以内。

 (3) 周波数関連のブロックダイヤグラムを書くと下図の様になる(便宜的に一部の周波数表記を丸めている)。
     発振回路は、@基準発振、A2ndローカル発振、BΔf発振、CPBT発振、DBFO発振。

 (4) 周波数偏差の主要因は次の通りと考える。
     @はPDの基準周波数となるので、受信周波数偏差に影響する。
     Aは図中に↑マークで記載した通り、変動は1st MIXと2nd MIXの入力となりキャンセルされる。
     Bは1st MIXの入力となり周波数偏差が受信周波数偏差に影響する。
     C、Dはそれぞれ、2nd MIX、DETの入力となりキャンセルされる。
    よって、この偏差の主要因は@Bとなる。

 (5) 今回は@をTCXO化したが、Bは水晶発振子のままだったので、下図の受信周波数偏差が発生したと考える。但し、温度上昇と共に水晶の発振周波数
     は上昇するが、今回はその片方をTCXOにしたので、偏差の要因が1/2になったと言える。

 (6) Δf発振用水晶(19MHz)をTCXOに変更すると更に良い結果が得られると推定でき、今後の課題と考える。

 (7) 但しこれは数値上の話で、実際に試聴してみると、付属の2.4KHzフィルターでは電源投入後から大きな違和感がなく聞こえる。
     この為、多分19MHzのTCXO化は実施しないと思う。

 

周波数偏差 周波数関連ブロックダイヤグラム

【参考資料】

NRD-515取り扱い説明書 '81.12版 (日本無線)