75S-3のAGC改善

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 コリンズSラインの受信機である75S-1、2、3、3B、3C(以下75S-3と記載)は。アナログの静かな受信機で、現代のDSPやSDRと比べると聞き疲れしないので、今なお人気がある。ただ、75S-3はAGC SLOWのリリースタイムが早く、受信音が歪っぽい欠点がある。
 
 これを改善するために、AGC時定数の変更やプロダクトディテクターの動作点変更の改造が数々発表されている。

 このなかで、受信機研究で有名なSherwood EngineeringのRob Sherwood:NC0Bが発表した改造を実施し、ある程度の成果が得られたので、その内容と改造方法を紹介する。

 

1.改造のポイント
 
 以下の3点となり、各々を以下に説明する。

 (1) AGC時定数の変更(SLOW、FASTとも)
 (2) プロダクトディテクターの動作点変更
 (3) プロダクトディテクターの入力レベル最適化

 なお、説明中の部品番号は75S-3Cの物となので、他の機種の場合は読み替えが必要となる場合があります。

 

 
2.AGCの定数変更

 (1) AGC切替スイッチ回りにマウントされている、時定数を決定する部品を全て交換する。

 (2) 交換する部品番号と定数は下表のとおり。

部品表

回路図










交換前の部品配置









交換後の部品配置

 
3.プロダクトディテクターの動作点変更

 (1) プロダクトディテクター(V8:6EA8)のカソードバイアスを増加させ、歪率の改善を行う     

 (2) これにより歪率が30%→3%に改善する。(Sherwood測定結果)

 (3) カソード(ピン8)に接続のL16(100µH)とグランド間に、下記部品表の抵抗とコンデンサーを並列接続したものを挿入する。
     (右の写真「部品搭載箇所」で、AはL16、Bは追加した抵抗とコンデンサー)



部品表



回路図


部品搭載箇所

4.プロダクトディテクターの入力レベル最適化

 (1) プロダクトディテクター(V8:6EA8)のIF入力信号レベルを下げ、歪率を改善する。

 (2) V8のグリッド(ピン9)に接続されている入力信号分圧回路C33(220pF)、C46(10pF)のC33側に220pFコンデンサーを並列に入れる。

 (3) 上記によりC33は容量が2倍となり、入力レベルが6dB下がる。これにより、歪率は3%→1%に改善する。(Sherwood測定結果)

 


5.利用感

 (1) 75S3独特の早いAGC、歪っぽい再生音は改善し、落ち着いた音となり聞きやすくなった。

 (2) 難点として、Sメーターの振れがインフレ傾向となり、9+30dB程度でメーターが振りきり改善が必要と感じる。

 

 
6.Sメーターの振れ過ぎ改善

 (1) Sメーターの+もしくはーの端子にSメーターと直列に抵抗を入れて、メーターの振れを調整する。

 (2) 抵抗挿入後にSメーターZERO、IF GAINを調整して、−73dBm入力でS9に合わせる。
     SSGが無い場合は、調整された状態で、7MHzでマーカーがS9+20dB振れる様にIF GAINを調整する。

 (3) 挿入抵抗は適当な物を選ぶ必要が有る。一例として、テストした結果を下記に記載する。

 (4) テストの結果、200Ωが最も本来のSメーターの読みに近かった。
     但し、改造前のメーターの振れも本来の振れになっていないので、使用上違和感がない妥協点を見つければよいと思われる。




本来のSメーターの振れと挿入抵抗によるSメーター読みの変化
 

 
【参考資料】

75S-3B/C AGC and Product Detector Changes by NC0B Rob Sherwood October 1, 2006