312B-4 の Peak Power 表示

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 312B-4は平均出力表示なので、KWM-2等のSSB出力をモニターすると10〜20Wしか表示せず、兼ねてからピークパワー表示が欲しいと思っていた。ネットに手ごろな回路が掲載されていた(※1)ので、これを参考にしてピークパワー表示回路を組み込んでみた。

1.回路

 下記が実体配線図となる。INから入力された312B-4のCMカップラーからの出力を、時定数を持たせた前段のオペアンプによりピークホールドしている。後段のオペアンプはバッファーとなる。電源はKWM-2や32S-3等からAC6.3Vを貰い半端整流し、3端子レギュレータで安定化したDC5Vを得ている。


2.部品の入手と組み立て

 部品表は下表の通りである。
 D1はショットキー・バリア・ダイオードを使用する。
 Rmはメータがフルスケール時の内部抵抗を測定、その抵抗値とする必要があり、さもないと指示値に誤差を生じる。当方の場合は2台測定の結果、1.093KΩ、1.090KΩだったので、1.1KΩを選んだ。
 C3は入力からの回りこみ防止のパスコン。実際、バラックでテスト時に動作が不安定になったので、念のために入れておいた。
 組み立てはユニバーサル基板を使用して行った(下の写真参照)。

  

3.組み込み

 312B-4のフロントグリルの4本のネジを外し、メータ部分にアプローチする。

 基盤はメータの留めネジ(1箇所)にスペーサーを入れてメータと共締めした。入力はCMカプラーからメータのプラスに来ている配線を接続、出力はメータのプラスに接続、グランドはメータのマイナスに接続する。電源となるAC6.3Vはメータランプから配線した。

 312B-4への改造を極力、少なくする為に平均、ピーク表示の切替スイッチは組み込まず、また、CMカプラーからメータへの配線は基盤に直接半田付けをせず、一旦、絶縁シートにネジ留めし、ネジ止め部から基盤へ配線し、元に戻せるようにした。(下記、写真参照)。

 送信機から供給しているAC6.3Vは送信機側で片方がグランドに落ちているので、これを必ずグランド側に配線すること。さもないと、CMカプラーからのグランドループによりAC6.3Vがショートする。



4.調整

 D1に掛かる電圧(オペアンプ出力:U1-ピン7)はD1の直線性が良い領域が使えるようにR2を選択して調整する。調整手順は次の通り。

  • R2の代わりにVR(以降、VRtest)を挿入し6KΩ位にしておく。

  • 送信機と既知のパワー計を接続し、VRoutを調整しながら100Wでパワー指示を合わせる。

  • 20W位の出力で指示が合うようにVRtestを合わす。この作業は100Wと20Wの直線性の担保をする調整である。

  • VRoutを再度調整し、100Wの指示を微調整する。

  • 必要に合わせて数回、上記の調整を実施する。

  • なお、VRoutを回しきっても100Wの指示が調整できない場合は、適宜、ボリュームの値を見直す。

  • 調整後、VRtestは再調整する必要が無いが、適当な値の固定抵抗が無い場合はVRtestはそのままとしても良い。


5.考慮点

 電源やCMカプラーからは可也の高周波成分が流入して来るので、回り込みにより表示が不安定になる可能性がある。この場合が次の対策を試してみると良い。

  • AC6.3Vには可也の高周波成分が含まれているので、倍電圧整流にして入力側のグランドをアイソレーションする。(※)

  • 上記の対策で電源からの回りこみが解決しない場合は、AC6.3Vは諦め直流電源で稼動させる。

  • 出力側からバッファーのオペアンプへの回りこみがある場合は出力側にパスコンを挿入する(入力側は挿入済み)。

※入力の極性に注意が必要


6.使用感

 回路が簡単で作りやすく制作費が約1000円と安い(オペアンプ、3端子レギュレータ、ショットキーダイオードの余剰分含む)。
 当方は、余った部品を利用して何個か作り、そのうちの一つをDAIAMOND SX−200に組み込んだ。このパワー計でも良好な結果を得ている。

追1.SX-200への組み込み

 下記の回路となる。SX-200は照明用にDC13.8Vの端子が背面に付いており、前面のスイッチでON-OFFが出来るので好都合である。



 組み込みの様子は下の左の写真の通り。メータの後ろに空きスペースがあるので、そこに作成した基盤(以降、作成基盤)をスペーサーでマウントする。結線は右の写真の通り。メータ背面の4つの端子が付いている基盤(以降、背面基盤)にはスイッチを通過したDC13.8V、メータへの信号が来ているので、全ての配線はここに接続すればよい。手順は次の通り。
  1. 背面基盤の右端の白、黒の配線が半田付けされた部分(上が黒、下が白)の白はメータへの信号線なのでこれを外す。
  2. 外した白の配線を製作基盤のINに配線をする。
  3. 白の配線を外した部分に製作基盤のOUTからの配線をする(オレンジ)。
  4. 背面基盤の4つの端子の右端はスイッチ通過後の+電源、左端はグランドが配線されているので、各々に製作基盤のDC13.8V(赤)、グランド(黄色)からの配線をする。

組み込みの様子

結線部分


追2.使用感

 312B-4で発生したような問題もなく、気持ちよくピーク表示が稼動している。なお、AVG/PEP切替スイッチはAVGにしておかないと、表示誤差が発生するので要注意。

参考資料

 JR4MDA氏のブログ (※1)
 ECB No.2 アナログICを使おう (CQ出版社)