* B.マルチヌー:サンダーボルトP-47 *

春の低気圧、もやもやを吹き飛ばす1曲:
"サンダーボルト P-47"

ブルノ・ステイト・フィル/ぺテル・ヴロンスキ指揮
SUPRAPHON「Works Inspired by Jazz and Sport」
SUPRAPHON 30582011


1945年9月にアメリカのケープ・コッドで書かれたもの。 同年6月に書き上げた交響曲第3番の2楽章(やはりスケルツォ)を書いているときにアイデアとして持っていたものである。 『速さを讃えて』と書かれており、後に‘サンダーボルトP-47’と名付けている。拍をぎざぎざと不協和音で刻んでいく マルチヌーお得意のトレモロが延々と続き、緊張感が高まる。この音型は弾いているうちにどんどん早くなってしまうパターンで、 心して弾き始めないと演奏家の命取りにもなりかねないというスリリングな曲である。
実際スコアには「出だしを速く弾きすぎると最後には収拾つかなくなります」との断り書きが書かれている。 ゆっくりなトリオとダ・カーポの伝統的なスケルツォの形式であるが、作曲家が注意を促しているように2/4のアレグロは あまり速く弾き始めると、リズミックな音型が速さを印象づけられない。
このオーケストラ作品はワシントン・ナショナル・オーケストラに委嘱されたもので、彼のパリ時代の友人、 ハンス・キンドラー(7年後に彼にチェロ・ソナタ第3番を書いた)に捧げられた。 (MARTINU Brian Large: Bohuslav Martinu HIS LIFE AND WORKS Milos Safranekより)
サンダーボルトP-47 *"サンダーボルトP-47"とは第2次世界大戦中にヨーロッパを飛んだアメリカの戦闘機。


*その他*
なべやふきんが恋愛ごっこをするというストーリーの「キッチンのレヴュー(1927)」、 ヤン・パネンカのピアノが美しい「6重奏(1929)(ピアノとウィンドアンサンブル)」、 歌が入り、のんびりほのぼのした気分になれる「ル・ジャズ(1928)」、 人生のまさに中間地点であり、円熟期にさしかって第1作目のオーケストラ曲「ハーフ・タイム(1924)」 (それにしてもどこかで聞いたことのあるような出だし・・・)、 ボストン交響楽団/クーセヴィツキー指揮の初演(1927)によりマルチヌーの名をアメリカに知らしめた「ラ・バガール(1926)」 など。
‘サンダーボルトP-47’以外は パリ時代(1923-1940)に書かれたもので、ジャズ、ストラヴィンスキー、 6人組などの影響が随所に見られます。マルチヌーにとっての新天地パリで、それらの音楽に作曲家としての本能をくすぐられ 新しい曲作りに没頭している姿は無邪気な子供のまね遊びのようですが作曲家の個人史をかいま見るようで興味深く、 何よりも聴いても聞いてもとっても楽しい。
憂さ晴らしやハイウエイのお供にぜひどうぞ!