室根山のふもと

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 「 ノラネコ 後編 」です。


ダシを取った後の昆布も

 裏庭で子ネコたちが夢中になって食べている物があった。それはダシ昆布だった。妻がダシを取った後ゴミに出す前に乾燥させていたのである。

             
                        < 裏庭で干していた昆布を食べる子ネコたち >
 

 こうしてみると、食べられる物はなんでも口にしていたものと見える。かなり飢えているようだ。


食事の残りをこっそりと

 それまでは、ご近所に迷惑をかけてはと餌をやるのをためらっていた妻も、見かねた風で時々餌を与えるようになった。

                       
                             < 餌に群がる子ネコたち >
 

 「飼うつもりなの?」と尋ねると、「ううん、これはたまたま残ったから。残り物しかやらないから、飼うんじゃないよ」と言って、残飯を庭に置いておくのだったが、たちまち子ネコたちが群がり、あっという間に食べ尽くしてしまうのだった。
 メグサは子ネコたち優先で自分から割り込んで食べようとはしなかった。

 妻に習って、私も時々ベランダの脇で「おやつの残り」を与えた。少量ずつ2ヶ所に分けて置くと、あっという間に食べてしまうのだが、その様子がかわいらしいのだった。         

                           
                             < 親子で仲よくおやつを >


平和な日々  

  時々与える「食事の残り物」が子ネコたちの警戒心を弱めたのか、私たちの姿を見ると一斉に逃げていた子ネコたちも、2メートルぐらい離れている分には、側を通っても逃げなくなった。
 そしてのんびり毛づくろいをしたり、居眠りまでするようになったのである。

                      
                           < ベランダ脇でひなたぼっこ>

                 
                          < バラの根元でくつろぐ子ネコたち >
 

 夏から秋にかけての4ヶ月、母猫メグサに甘えながら子ネコたちは比較的平穏な日々を送ったのだった。
 競って柿の木に登ったり、花壇や畑で追っかけあい取っ組み合って、コスモスやバラの枝を折ったり豆の枝を倒したりしながら、自由で気ままなギャングエイジ(?)を満喫していた。


晩秋の異変

 秋になると、それまで我が家を根拠地にしていたメグサ一家は、隣の庭や畑に移動したり、その姿が見えなくなったりした。我が家の庭にも日に何回か顔を出すのだが、餌がないとすぐどこかへ行ってしまうのである。
 体も大きくなったので、餌探しに遠出をしているのだろうか。

 そのうち、我が家を訪れるのも一家そろってではなく、子ネコたちだけ、それも何匹かで交互にやって来るようになった。たまにメグサが一緒に来ても、餌を前にすると「フーッ」と息を荒げ、子ネコたちを威嚇するのだった。

 どうやらメグサは子育てを終え、子ネコたちに自立を促しているようだった。                    


見えなくなったカララとクロロ

 11月下旬、カララの姿が見えなくなった。他の3匹は変わらずにやって来るのだが、カララだけは来ないのである。

 そのころ久しぶりに散髪のため道路向かいの理髪店に行った。髪を切りながらの四方山話がノラネコに及ぶと、ご主人は「昨日の朝家の前で黒猫がペッシャンコになっていてさ、片付けて跡を水で流しておいたんだけど」と言う。車に轢かれたネコがノラネコのどれかでないかというのである。ノラの中で黒っぽいのはクロとクロロだ。

 驚いて帰って妻に話すと、そういえば昨日も今日もクロロは来てない、と言う。
 その後しばらく注意して見ていたのだが、確かにクロロはカララ同様二度と姿を見せなかった。
 やはり轢かれた黒猫はクロロで、もしかしたらカララもどこかで同じような事故にあったのでないか、と私たちは話した。 


餌をねだるネコたち

 その後我が家を訪れるのはクロとカラ、それにカラヤンとシロの4匹となり、メグサは時々畑を横切るのを見ることはあっても、我が家に来ることはなくなった。どうやらすっかり子離れしたようだ。

                       
                          <「おやつの残り」を仲よく食べる4匹 >
 

 上の写真では手前がカラ、上の3匹は左から順にクロ、カラヤン、シロ。写真で明らかなように、カラはクロと比べるとかなり大きい。同じ兄妹(?)とも思われないほどである。
 それは、2匹の気性の差による。

 カラは食事となると、母猫メグサの顔を前肢で押しのけてまで食べようとする、気の強い子ネコだった。他の子ネコたちが食べようとする餌を、カラが前肢で押さえて奪う場面もよく目にした。それで他の子ネコたちはカラに一目おいていた。

 その中でもクロは、唯一メスのせいもあってか、遠慮してみんなの後から食べ始めるのが常だった。そのせいだろうか、母猫メグサが最後まで一緒にいたのもクロだった。他の子ネコたちに比して餌不足なのが不憫だったのかもしれない(4枚前の写真参照…この時もメグサはクロと一緒)。

 12月になると、その2匹にカラヤンとシロが加わって、一緒に食べ物をねだりに来るようになった。
 カラヤンは飼い猫だし、シロもカラヤンの餌を食べているはずなのだが、それが一緒に来るのはもしかしてクロとカラに加勢してなのだろうか。そういえがカラヤンは2匹の父親とおぼしく、シロも叔父の可能性があるのだった。まだ独り立ちできない子ネコたちを案じているのか。

                
                               < 庭で餌を催促する4匹 >
 


餌やりの成果

 結局妻は毎日餌を準備するようになった。カラヤンとシロは裏の家で食事を終えてからしか来ないので、妻は朝のうちにクロとカラの分を用意するのだった。

 餌の食べぐあいはどうしてもカラの勢いが強い。魚やソーセージなどクロの分までカラが食べてしまう。それを見かねた妻は、クロの分を別の場所において両腕で囲い、カラが割り込んでこれないようにしてクロに食べさせたり、カラが食べようとするのを「ダメ !」と手でさえぎって、始めにクロに食べさせてから後でカラにも食べるのを許したりしていた。

 その情が通じたのか、ある日妻はクロを抱き上げて私に見せに来た。離れにいる私に「お父さん! お父さん!」と外から声をかけるので、ドアを開けると妻が両手でクロを誇らしげに抱いている。それは予想外のことだった。それで記念に撮ったのが下の写真である。

                      
                             < クロを抱いて喜ぶ妻 >
 

 一方カラは警戒心が強く、1メートルも近づくと素早く逃げて触ることなどできないのだった。


つのる寒さと、カラの失踪

 毎日餌にありつけるようになったせいか、2匹はまた我が家の床下で寝泊まりするようになった。
 12月ともなると昼でもかなり寒い。クロとカラは、寒さをしのぐため2匹でぴったり寄り添っていることが多くなった。 

                   
                         < 庭のバラの脇で寄り添うクロとカラ >
 

 暮れも押し迫ったころ雪が降った。裏の畑にスズメが餌を探しに来ていたのを、カラがねらっていたことがある。    

                      
                             < スズメをねらうカラ >
 

 写真の位置から2メートルほど這い寄った時、スズメは一斉に飛び立って逃げた。
 見通しがいい上に雪の白さの中では目立つので、失敗したのは無理ないと思うのだが、その行動はいかにもカラらしく野性味にあふれていた。

 そのカラが、年越しの日を境に姿を消してしまった。それで上の写真が、カラの最後の写真となった。


1匹残されたクロ

                            
                             < 離れの脇でションボリ >
 

 こうしてクロは、たった1匹で正月を迎えることになったのだった。


 

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