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◎ 井上ひさし氏 「平和憲法を守る県南の集い」講演に思う   (08.05.14)

日本国憲法は、世界の歴史によって奇跡的に生み出された

1999年、日本国憲法が世界の目標になった

 5月9日(金)、一関市文化センターで井上ひさし氏の講演会がありました。それを聞いて考えさせられました。
 日本の憲法に対して、「占領軍による押しつけ憲法だから、日本人が自主的に変えるべきだ」という意見が、保守層から強固に出されています。その点に関して氏は、この100年間の戦争と平和に関する国際的な動向をふまえ、次のように述べました。( 要点のみ )

  オランダのハーグは、昔から紛争に関わりが薄かったので、戦争の調停の話し合いの場所だった。そこで1899年、第1回の国際平和会議が開かれた。その後1907年に、44ヶ国が集まって2ヶ月間、第2回の平和会議を開いた。そして「 中立国の義務と権利 」を条約にした。それは日本も批准し、国際的に認められた。その結果第2次世界大戦では、アフガニスタン、アイルランド、ポルトガル、スペイン、スウェーデン、スイスの6ヶ国が中立国となった。
 中立国は、兵器を売ってはならない。そして戦争が引き起こす不幸を引き受け、人質の交換や、そのための船舶の提供などを行う。
 昭和16年12月8日(日本がハワイの真珠湾を攻撃し、アメリカとの戦争を始めた日)、アメリカのカリフォルニアには16万人の日系人がいた。12月26日、アメリカは強制収容所を砂漠に造り、日系人は1万人ずつ10ヶ所に分けて収容された。日系人は1メートル四方の荷物を2個のみ持たされ、財産は没収された。( 中立国の )スペインが収容所を査察に来たとき、日系人から納豆菌をほしいと聞き、それを( 中立国の )スイスを経て日本に伝え、( 中立国の )スウェーデンの船が運んで届けた。この納豆と豆腐で日系人は命をつないだという。
 だから、1907年以来、国際紛争に対しては、どちらかに味方して戦う以外に、どの国とも敵とならずに中立を守る権利がある。戦争には加わりません、と、良心的に戦争を拒否する権利があり、戦争の不幸を引き受けると宣言すればよいのである。
  第1次大戦の1928年に、パリ不戦条約が結ばれた。これは国際連盟で常任理事国だった日本も幹事国として根回しに尽力し、その結果「 紛争は、話し合いで解決する 」ことが決まったのである。
 しかし日本ではその後首相がテロで暗殺され、軍が台頭する。世界は、国の利益は貿易で、という時代になったのに、日本は1・2時代前の植民地獲得の発想で事件を起こし、満州国を作り上げる。しかしそれは国際連盟で日本以外の42ヶ国が承認せず、日本は常任理事国であった国際連盟を脱退し、戦争に突き進んだ。この後遺症があるから、国際連合の常任理事国になれない。
 1999年、第3回国際平和会議が100ヶ国以上で開かれた。そして「 公正な世界秩序のための10原則 」を定めた。その行動原則の第1条は、「 各国議会は、日本の憲法第9条にならい、政府に戦争を禁止する決議をすべきである 」
  日本国憲法が世界の目標になったのである。
 今や戦争は巨大な公共事業になっている。アメリカはドルを刷って石油を買っているのだが、イラクのフセインが石油の決済をユーロにすると言った。それでは困るので、フセインをたたいたのがイラク戦争の発端とも言われる。戦争でもうかる業者は世界に50ある。民間戦争会社が物資を補給したり食事を作ったり作戦まで立てている。その中の最大手がハリバートン社で、7万人の従業員がいる。CIAやFBIの就職先になっている。その最高経営責任者がチェイニー副大統領。この人たちは戦争しないと食べていけない。そんなところと一緒になっているのが日本。
 イラク戦争がそうであったように、なぜ話し合いもせずに攻撃していくのか。日本国憲法のもとで海外派兵をしていいのか。アメリカの肩代わり装置に組み込まれていいのか。
 ハーグ条約にはオープン・シティもあり、パリ、ローマ、マニラがそうだった。そこは無防備都市で、鉄砲を撃てない。しかし日本の軍部は国際法の知識が皆無で、マニラを攻撃してしまった。それで山下奉文はフィリピン法廷で裁かれた。
 第1次世界大戦では死者の95%が給料をもらっている軍人で、民間人は5%だった。第2次大戦では死者の52%が軍人で一般市民が48%。朝鮮戦争では軍人が16%で一般市民が84%。ベトナム戦争では軍人が5%で95%が民衆で、第1次世界大戦と逆転した。今は戦争になったら、戦争に賛成も反対も関係なしに、みんな死んでしまう。
 イラク戦争での死者は、発表では米兵4,000人、イラク人15万5,000人となっているが、一説にイラク人の死者は70万人とも言われる。国外に逃れた難民は、人口2,500万人中400万人で、日本の人口なら2000万人が難民になったことになる。尤も、日本なら海のため難民にもなれないが。
 もともと中立国になる権利があるのだから、戦争することは何もない。
 国内を見ていると暗いが、外を見ると世界は日本国憲法第9条に基づく、戦争禁止を目指している。日本国憲法は国際的に尊敬されているのだ。( 後略 )

  感想を書くつもりでしたが、長くなったのと、読んでいただければ意は通じるのでないかと考え、とりあえずここまでとします。

                 

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