認知症について(コウノメソッド に基づいた診療を行っています。)





2017年6月7日リバスタッチで目が覚めた



前回よりリバスタッチパッチを開始した患者さん。



@急に目が覚めた。

A日中傾眠的だったが、起きている時間が倍以上になった。

Bニュースを見て、政治の話をし始めた。

Cデイサービスでも眠らなくなった。



奥様に、「びっくりした」 と何度もいわれました。





明日から役立つ認知症のかんたん診断と治療より



348ページより

活動低下型せん妄の治療



 入院患者さんの中には元気がなく、寝てばかりで食事も摂ってくれなくなる高齢者がいます。せん妄というと興奮する症状だけがイメージされますが、実は過活動型と同じくらいこの活動低下型せん妄も多いのです。



 リバスタッチパッチは4.5mgを貼付します。

 1−2日観察し、リバスタッチパッチだけで効果が不十分な場合にはグルタチオン点滴(1000mgから1600mg)を実施します。



   通常は1−2日で効果が現れます。治療成功率はリバスタッチパッチだけで約60%、グルタチオン点滴を併用すれば80%です。



もしグルタチオン点滴を併用しても効果が不十分な場合にはシチコリンを500mgから1000mgを併用します。



  治療期間は数日から1週間程度ですが、元気がなくて食べられなかった患者さんが、元気がでて食事が出来るようになったらグルタチオン点滴は中止します。



 リバスタッチは効果を認めたあとも4.5mgあるいは2.25mgで入院中継続したほうがよいようです。










2017年5月26日 シロスタゾールが認知症に効く





平川先生は2012年より前向き研究を行い、プレタールの有効性を明らかにされたとのことです。



(ジェネリックでは効果がない)



内容が正しいとすれば、すばらしいブレークスルーだと思います。







方法:シロスタゾールは全例プレタールOD錠に統一する。50mgx2でスタートし、効果が不十分だと考えられた場合は、100mgx2に増量する。



併用療法の場合

有効率は、ATDで30.6%、DLBでは44.8%で有効となっています。全体では34.4%が有効でした。



DLBの場合は、記憶力はさほど良くならなくても、ほぼ全例で幻視を改善させる効果が認められました。







プレタール単独療法の場合

有効率はATDで49.5%、血管性認知症で33.3%、DLBで70.0%、全体の有効率は45.9%。







MCIに対するシロスタゾールの効果

 MCIに対してもすぐれた効果を認める。



シロスタゾールの副作用

 頻脈、頭痛、ほてり感。まれに狭心症や心不全の悪化を認めることがある。 出血のリスク。



せん妄にも効果あり。







以下引用

  筆者は最近ではプレタールでの反応をみるために、認知症の治療はまずプレタール単独で開始することがよくあります。プレタールでできる限り治療し、効果が乏しくなったと判断されたらそこからコリンエステラーゼ阻害薬を開始するのです。



 ただしDLBや重症のATDで、早々にアセチルコリンを補充したほうがよさそうな場合には、はじめからコリンエステラーゼ阻害薬を開始します。














2017年5月23日 リバスチグミンが意識障害に効く!?





この本は、すぐに使えるメソッドが満載されています。





以下引用

筆者は現在、軽度から重度まで様々な意識障害の患者さんにイクセロン・リバスタッチパッチを使っています。



効果は、重症の場合、軽度の改善を含めて30%くらいで有効です。



軽症の場合、80%くらいで有効です。







 大事なポイントは2点。

開始量は必ず4.5mg以下にすること。

そして9mgまで増量しても効果がなければ、それ以上増量しても効果はないということです。



(筆者は2.25mgからの開始を勧めている。)







 リバスチグミンの半日貼付法



 リバスタッチパッチを貼付したことで元気になり、夜も覚醒し、寝なくなることがあります。そのような場合には睡眠薬を使うのではなく、朝に貼付し、夜にはがすようにしてみましょう。 夜に寝るようになることがあります。



 リバスタッチパッチの効果ははがすと30分でなくなりますので、このような使い方もできるのです。












2017年5月22日 重症例ではドネペジルをとめる







下と同様に、アリセプトの中止で状態が改善し、食事が食べれるようになった患者さんがおられます。







重症例ではドネペジルをとめる



 既にねたきりになり、食事も摂れないような高齢の患者さんに、漫然とアリセプト5mgあるいは10mgが処方されていることが多々あります。おそらく重症の認知症だからということで、良かれと処方しているのだとは思いますが、間違いなく状態を悪化させています。



 このような場合は、すぐにアリセプトを中止してください。中止することで、あれよあれよという間に状態が良くなることがあります。



食べられないはずなのに、また食事が出来るようになることもあります。筆者はこれまでに何十例も見てきました。 もしそういった症例があった場合には、ぜひ試みてくささい。










2016年12月3日再掲 ケトン食と認知機能



昨日、ココナツオイルを内服中の方の記事を書きました。(長谷川テストの改善)



関連の論文を再掲します。







2016年10月27日 素晴らしい研究報告





「ケトン食」で高齢者の認知機能が向上か 糖を極端に減らし脂肪を増やす







また1つ、糖質制限食の治療エビデンスがでてきました。

このような地道な研究報告が大事ですね。

問題は、本人がケトン食をとることができないことです。



ご家族や、介護施設のスタッフの方々に、新しい栄養学について学んでいただきたいです。

本当はその前に、間違った栄養学の訂正が必要なのですが・・・・。





「ケトン食」を食べることで、高齢者の認知機能の向上が期待できるとする研究結果を、国立精神・神経医療研究センター神経研究所の疾病研究第三部・太田深秀室長、功刀浩部長らと株式会社明治の共同研究グループが発表した。



一般的に脳は糖をエネルギー源としているが、長時間の絶食や極端な高脂肪低糖質な食事を続けたときなど糖が不足すると、脂肪酸や一部のアミノ酸が肝臓で「ケトン体」に変えられ、糖に変わるエネルギー源として利用することができる。



「ケトン食」は糖の摂取を極端に減らし、摂取エネルギーの60〜90%を脂肪にすることで、積極的にケトン体を利用する状態にする食事療法のひとつで、小児の難治性てんかんの治療に取り入れられていることで知られる。



共同研究チームは、加齢や何らかの要因で脳が正常に機能しなくなると、糖をエネルギー源とすることができなくなることから、ケトン体をエネルギー源に置き換えると、認知機能を改善できるのではないかと推測。 認知症を発症していない60歳以上の高齢者19人を対象に、ケトン食の影響を調査した。



調査内容は、対象者に現在医療用のケトン食として医療機関に販売されている粉ミルク「明治ケトンフォーミュラ」と、対照食(同カロリーのミルク)を、それぞれ別の日に摂取してもらい、血中のケトン体濃度の変化と認知機能テストの成績を比較するというもの。



テストの内容は、読み上げられる数字の並びをどれだけ正確に、同じ順序で復唱したり、逆の順序で復唱し、点数化する「作業記憶テスト」と、テスト用紙に無作為に配置された数字と平仮名を「1→あ→2→い→3→う・・・」という順に、線で結び終えるまでの時間を測定し、点数化する「遂行機能テスト」の2種類。



調査の結果、ケトン食を摂取した場合、対象食と比べて血中ケトン体濃度が高く推移し、一連の認知機能テストの総合成績が高いという結果が得られた。



また、対象者を、対照食を摂取した時の認知機能テストの総合成績が低かった群と高かった群に分けたところ、成績の低かった群でケトン食による総合成績の向上がより顕著に見られたという。研究は、2016年8月27日、精神薬理学分野の専門誌「Psychopharmacology」オンライン版に掲載された。





参考論文

Effect of a ketogenic meal on cognitive function in elderly adults: potential for cognitive enhancement.

DOI: 10.1007/s00213-016-4414-7 PMID:27568199

Effect of a ketogenic meal on cognitive function in elderly adults: potential for cognitive enhancement.













2016年12月2日長谷川テストの改善・・・たまたま?



症例 81歳女性



2011年 認知症専門医でアルツハイマー型認知症と診断された。

長谷川スケール21点 

アリセプト10mg+メマリー10mgの内服を継続。







2015年6月当院を受診。4年間悪化していないとのこと。長谷川式スケール22点 

フェルガード100m4T/日、糖質制限、ココナツオイルを勧めた。







2016年11月 特に変わりないとのこと。

糖質制限はあまりできないが、ココナツオイルは毎食後に内服しているとのこと。フェルガードも継続中。

長谷川式スケール 25点







特筆すべきは、3アイテムスリコール(桜、猫、電車)が1点(6点満点中)から5点へ改善している点。



この検査は、短期記憶を見る最も大切なポイントです。

河野先生によると、アルツハイマー病では、年間平均2点づつ低下しいくはずですが、時間経過とともによくなっているようにみえます。





症状に波があり、たまたま、よいタイミングで検査をしたのでしょうか?







2016年4月10日

アリセプトの副作用のひとつ、易怒性の増加には気をつけているつもりなのですが・・・。



介護者に教えてもらって、あわてて他剤に変更しました。





@80代女性。 家族より、最近すごい言葉遣いで怒ることがあるとのこと。

 数年来使っていたアリセプト5mgをレミニールに変更したところ、落ち着かれた。



A90歳男性。 施設のナースより、怒りっぽくて介護者が困っていると報告。

アリセプト5mgをリバスタッチパッチに変更したところ、落ち着いた。



こうなってくると、そもそもアリセプトを避けたほうが無難に思えます。

何しろ、診療で全く気づかないので。





2015年11月28日

以前から通院いただいているピック病の方がおられます。

先日より、コントミンを開始しました。

(これまでは、あまり必要性が感じられず処方せず)



ご家族によると、介護負担が半分以下に減ったそうです。

私が診察しただけでは、全く変化がわかりません。

やはり、家庭天秤法が大切ですね。




2015年10月29日



認知症治療研究会に入会したところ、学会誌が送られてきました。

ドネペジル(アリセプト)関連の論文が数本出ています。



以下引用

ドネペジルの副作用から回復できた症例  小早川 浩之先生

症例 75歳、女性
診断 レビー小体型認知症
考察より

当院に転医後、ドネペジルを完全に中止してリバスタッチパッチに変更し、マドパーをはじめとする抗パーキンソン病薬を漸減あるいは中止とした。
さらにNewフェルガードLA、グルタチオンによるFG療法を開始した。
この結果、幻視、幻覚、日中の嗜眠、夜間の寝言、食思不振は速やかに消失した。
パーキンソン症状はドネペジルの中止とFG療法によりかなり改善したものの、小刻み歩行、歯車様固縮は残存したため、ペルマックスの併用を要した。
経過から見て、本症例の歩行障害はドネペジルによる薬剤性パーキンソニズムが主因である。

また、食思不振もドネペジルの副作用であったと推測される。

本症例のようなケースではまずドネペジルによる副作用を疑い、減量、中止を躊躇しないことが肝要である。



当院の患者さんでも(レビーではないですが)、ドネペジルからリバスタッチパッチへの変更で、食事が食べれるようになった方がおられました。





2014年10月14日


10月10日は (Dementia with Lewy Bodies)すなわちレビー小体病の疾患概念の提唱者、小阪賢司先生の講演会でした。



小阪先生講演メモ



レビー小体病は、現在「第2の認知症」といわれているとのことです。すなわち、アルツハイマーについで2番目に多い認知症ということです。



  頻度的には認知症全体の20%になります。実際は、多くの患者さんはきちんと診断されていないそうです。

診断が重要な理由は、抗精神病薬などに過敏性、すなわち薬剤投与によって悪化する危険性が高いためです。



 レビー小体病の示唆的特長

@レム睡眠行動異常・・・夜中の寝言

A幻視・・・なくてもレビーを否定してはいけない。

B先にうつと診断されていることが多い。

C画像に頼りすぎてはいけない。



2013年10月07日

患者さんのご家族よりお聞きしました。レビー小体型認知症の発見者 小阪憲司先生が「ためしてガッテン」にでられたそうです。

NHKためしてガッテン【レビー小体型認知症症状幻視対応ポイント原因 薬 小阪憲司】



 大変勉強熱心なご家族で(私がその方のことをレビー小体型認知症ではないかと話していたこともあり)見られたようです。

幻視、小さなごみを集めていた、大汗をかいていた、前かがみ、斜めになっていたなど、ぴったりあてはまったそうです。


これまで多くのドクター(神経内科、一般内科)や看護師さん、福祉関係のスタッフにみてもらっていたのですが・・・。

私もコウノメソッドを学ぶ前なら何も気づかなかったと思うので、批判する気は全くありませんが。




2013年10月01日

久山町研究より「米の摂取量と認知症」

著名な久山町研究で上記が報告されています。





2013年9月24日


認知症のコウノメソッド 実践医に登録いただきました。

認知症診療が的確にできるよう研鑽を積んでゆきたいと考えています。





認知症のコウノメソッド について勉強中です。2013年5月10日。




認知症の方の心理状態と、認知症の方とどう接したらよいのかについて理解を深めるために、トム・キットウッド氏の「パーソンセンタードケア」および認知症の人は何を必要としているかを掲載しました。



認知症の原因は60あまり知られていますが、その中でもアルツハイマー病は50−60%をしめ高齢化社会において大変大きな問題となっています。アルツハイマー病の原因は今もって未解明ですが、近年興味深い報告がなされています。米国で行われ、現在も継続中というナン・スタディについて下記にまとめてみました。

100歳の美しい脳(Aging with Grace)−アルツハイマー病解明に手をさしのべた修道女たち

 デヴィッド・スノウドン(David Snowdon Ph. D. )         2001年 DHC出版

ナン・スタディについて(ナン=修道女)

 ナン・スタディとは、ノートルダム教育修道女会に所属する修道女678名を対象に、加齢とアルツハイマー病について研究するプロジェクトであり、現在も続行中である。
1986年より開始。

 ナン・スタディ参加者は年齢が75歳から106歳までで、年に1回、身体能力と精神能力の詳しい検査を受けるほか、修道院に保管されている個人記録や医療記録も提供する。また、死後に脳を取り出して解剖することにも同意している。

対象の特徴

 未婚、タバコを吸わない、食事や生活様式が一定、教職をかねている人が多い、20過ぎ頃に入信し、教会活動を中心に、奉仕、教育などを行う。入信時に自伝の提出が義務付けられている。
 65歳以下での死亡率が一般の米国女性より25%低い。

アルツハイマー病

 短期記憶の消失が目印。米国では85歳以上の45%がアルツハイマー病といわれている。
 病理的にはアミロイド沈着、神経原繊維変化を認める。病因論としては、アミロイドカスケード仮説とタウ仮説などがある。根本的には未だ解明されていない。
 遺伝子要因としてはアポリポ蛋白E4(19番染色体)を二つ持っている人は8倍リスクがあるといわれている(後述1)

若年発症型アルツハイマー(65歳前に発症、アルツハイマー全体の5−10%、家系内集積)


21番染色体上のAPP遺伝子、14番染色体にあるプレセニリン、1番染色体にあるプレセニリン2
(ダウン症は21番染色体が3つあり、50歳までにほぼ全員がアミロイド沈着と神経原繊維変化が広範囲に見られる様になる。このため21番染色体が詳しく調べられている。)

認知症

 さまざまな原因がある。アルツハイマー病、クロイトフェルト・ヤコブ(プリオン病)、ビタミンB12欠乏、甲状腺機能低下、薬物の副作用、毒性物質、腫瘍、卒中、外傷(パンチドランカーなど)、ハンチントン病、パーキンソン病など60ほど。アルツハイマー病が50−60%をしめる。


スタディで報告されたこと


1 平均22歳で書かれた自伝を分析すると将来の予測ができる。自伝の得点が高い人ほど80歳での精神機能検査の点数が高い。
 文章を言語心理学の手法で解析する(一般の医師にはなじみがうすい方法ではある)。

 @意味密度(単語10個あたりに表現される命題の数) 多いほど得点が高い 語彙力と読解力に左右される。

 A文法的複雑さ(節がひとつだけの単純な文を0点、さまざまな文法単位が大きな文法単位に埋め込まれ、従属関係ができている複雑な文を7点とする。)


点が低い例(ただし元は英文)
 お父さんのL.H.ハラシャーは、アイルランドのコーク州、ロスという町で生まれました。今はオークレアで板金工をしています。

点が高い例(ただし元は英文)
 父はいろいろな仕事を手広くやっていますが、中心になっているのは大工仕事です。それは母と結婚する前からすでにやっていたことです。


2 約半数が生前、認知症症状を呈していたが、剖検で脳にアルツハイマー病変化があってもラクナ梗塞がなかった人では43%が認知症症状を示さなかった。一方、ラクナ梗塞が並存していた場合はほとんどが認知症となっていた。結論としては 血管性因子のコントロールが認知症全体の予防につながる可能性。

 言い換えると筆者らはアルツハイマー病と脳卒中の相互作用が痴呆をまねくと考えている。

3 アポE4遺伝子を二つ持っている16人のシスターがいたが、2人は90歳近くでもアルツハイマー病を発症しなかった。

4 20歳の自伝で前向きな感情表現が多い人は長命であった。

5 脳萎縮と血清葉酸値との関連 



認知症の予防に役立つこと(筆者の考え)

子供には読み聞かせを(強い脳をつくるために)

(脳は生涯を通じて変化し、成長を続けるが、発達が最も著しいのはやはり生まれてまもないころだ。

乳児期から幼児期にかけて、子どもの脳はすさまじい勢いで成長していく。

性的成熟が始まるずっと前から、脳のなかでは神経細胞どうしの無数の接続が行われている。)

成人病(高血圧、高脂血症、肥満、糖尿病、禁煙)の予防を

歩くこと(週に4回、どんな運動でも楽しくできること・・・楽しくなければ続かない)

果物と野菜をたくさんとること(葉酸が大切らしい)


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