愛と自由への旅立ち 

松尾みどり


私たちは色に囲まれた世界に暮らしています。
そのわりに、色の意味については知られていないようです。
色のもつパワーについて、さまざまなケースをみてみましょう。




第13章 イメージングと色彩療法


色のイメージによってつくり出される意識や感情パターン

 私たちの世界を見渡すと、あたりまえのように「色」が溢れていますね。もし、一瞬にして目の前から「色」が消えてしまったらなんて、考えてみたことはありませんか。そうすると、まさに、牛や馬の視界になってしまいます。ついでに、犬やネコも基本的には色盲らしいのです。その代わり、聴覚や臭覚がとても発達しているんですね。

 したがって、スペインの闘牛士たちは、牛が反応する赤いマンとをヒラヒラさせて、牛を興奮させていたのかと思いきや、あの赤い色に反応していたのは、実は人間のほうだったのです。「赤い色」が、血の色を連想させることから、観客の心をハラハラ、ドキドキさせて、血圧を上げ、ショーを盛りあげていたのでした。もし、赤色の補色である緑色や青色のマントだったら、きっと、ショーは成功しなくなるでしょう。

 ほかにも、交通信号の「赤」は、波長が長く、遠くまで光が届きやすいから使用されているらしいのですが、個人的には、赤色が[事故→けが→血]を連想させ、[危険→死→停止]という意味につながるからではないかと思ったりします。

 また、真っ赤なバラを口にくわえて、情熱的なフラメンコを踊るカルメンを見ると、やはり、スペインといえば、「赤」をイメージしてしまいます。国旗は、まさにその国のシンボルカラーで構成されていて、その国の歴史や思想などの情報が、言葉を超えて感覚的に伝わってきます。

 日本では、赤に白を加えて「紅白」とし、めでたい祝事の象徴として使われています。すべての色彩を反射する「白」に「赤」を組み合わせた、「日の丸」(国旗)は、とてもシンプルなデザインでありながら、太古からの深い民族の意識や歴史を物語っているのかもしれません。

 こうしてみると、その民族特有の考え方や、宗教や伝統により、また、各地域の日照時間や、温度差によっても色の嗜好が違っていることが分かります。いつの時代も、その時々の国の支配者たちは「言語」にとって代わる「色彩」を使って、階級制度をつくり、宗教によって、国民を統一する歴史を繰り返してきました。

 たとえば、古代中国では、黄色は王家の色として、庶民が建物などに黄色を使うことを禁じていました。一方、キリスト教民族では、黄色はイエスを裏切ったとされるユダが、最後の晩餐会で、黄色い服をまとっていたところから、卑怯、裏切り者、臆病などを象徴する意味に使われるようになったという説があります。

 こうして、過去には、人為的に意味づけされた色に、多くの人々が長い間、翻弄されてきたこともあったのです。一度、意味づけされて、植えつけられた色によるイメージは、思想と同じように、定着性が強く、マインド・コントロールされやすい性質があります。

 その他に、人類共通のカラーイメージがあり、「色彩心理」として都市計画や、映画や舞台、インテリアや照明などの生活環境の中で、感情表現や、精神の安定や癒しの効果を狙って、多方面に利用されています。

 色には各々の波長があり、波動を通じて、人間の感情や、健康状態、そして、潜在意識に刻印された、その人特有の意識や感情パターンを投影する性質をもっています。つまり、直感的に選ぶ色は、過去世から持ち越してきた、考え方のクセを始め、今、自分は何を必要としているのか、また将来、自分自身は、どのように生きたいと思っているのかを知る手がかりになります。



人によって異なる色に対する感性 

 私は、昔「色」そのものに、人生を変える「力」が潜んでいるのかと考えていましたが、その後の体験や研究で、同じ「色」でも、そこからイメージする内容は、人によってまったく違っていることが分かりました。各人のDNAに刻まれた過去世での体験から来るものもあれば、今生の子ども時代の感情体験が「色」と結びついて意味づけされたものも含まれていて、各人各様に反応は微妙に違っていることも分かりました。

 色は決して固定化したものではなかったのです。観念を取りのぞき、本当の自分の感覚に身も心も委ねることで、自分の内側の情報を掴むことができるのです。「3+2=5」の、たし算の答えのように「5」以外は間違いと決められる考え方のスタイルでは、自由な発想が妨げられてしまいます。

 「山は緑、海は青」と教え込むのは、人間の心を束縛してしまう危険性を伴っていると言えましょう。「5=○+−×÷○」のように、山が赤でも、海が黄でもいいわけです。どのように、自分の心を感じているのか、色という手段で、あるいはそのfeelingを他の表現で表わしていくのか、またその行為こそが大切であると感じています。

 今から9年ほど前になりますが、ヘレン・ケラーの指導にあたったサリバン先生が残したヘレンの観察日記について書かれた本の中で、興味深い箇所が目に止まりました。それによると、1歳8ヶ月の時にかかった重い病気のため、聴力と視力を失ったヘレン・ケラーは、7歳近くまで、ほとんど何の教育も受けてはいませんでした。

 「7歳になったばかりのヘレンは、『色』にとても興味を示すようになり、家中を歩き回っては、その色の意味を知りたがる」と記されています。また、「ヘレンの心の中には、色について何か漠然とした感じがあるのではないか、光や音について、何らかの印象を記憶しているように感じられる。ヘレンは触覚(feeling)を通して、知ることのできないものについても、たくさん話すようになった。空や、海や山、そして、昼や夜について、色々な質問をしてくる…」とも記録されています。

 「考えることは、どんな色なの?」というのが、ヘレンの求めていた真剣な答えでした。そこで、サリバン先生は、「幸せな時には、輝く色をしているし、そうでない時は、悲しい色をしているわ」と話してやると、ヘレンは使用人の娘でヘレンと変わらない年齢のヴィニ−が、強制的に彼女の遊び相手をさせられていたことに対して、「それじゃあ、私の考えは白、そしてヴィニ−の考えは黒ね」と言ったのでした。

 私はこの時初めて、色は観念的に名前で理解しているのではなく、感覚的に理解していることを知って、嬉しくなりました。特にサリバン先生のみごとな解答に、とても感動したのでした。



色の持つ言葉を超えた波動のメッセージ

 さて、この色彩を使ったヒーリングやセラピーの歴史は古く、幻の大陸ともいわれる、アトランティスやレムリヤの時代から、そして古代エジプトやバビロニア、ギリシャでも広く実践されていたといわれます。

 今から約千年も前に、アラビアのアヴィセンナは、青色が血流を和らげ、赤色は血流を刺激するので、貧血の治療法としても効果があることを発見していました。太陽スペクトルについて発表したニュートンを始め、ゲーテやシュタイナー、スイスのM・リュッシャー博士など、世界中の多くの人々によって、色彩を医学や科学や生活一般に利用、応用する研究がなされてきました。

 また、日本でも、東洋大学教授の野村順一博士や、「色彩学校」を開いた末永蒼生、江崎泰子両氏の研究などは私の「色彩ヒーリング」の内容を確認するうえで、とても勉強になりました。

 私は数年前から、音楽と色彩と左手(利き手ではない方の手)を使って、誘導しながら潜在意識に働きかけ、過去世や子ども時代から、さまざまに抑圧されてきた感情を表現し、確認作業を通して、自己を解放するワークショップを行なってきました。

 その中で、人によっては涙や鼻水やあくびがでたり腸が動き出したり、一時的に落ち込んだり泣き伏してしまう人など、さまざまな現象を見ることがあります。また身体を動かしたり色彩呼吸法などを併用すると、大きな変化が起こりやすいことも経験しました。その後の人生が明るくなり自信を取り戻して、勇気をもって行動的に、積極的に人生を楽しめるようになる人が毎回、多く出てきます。

 人間にとって「怖れ」を手放すことは難しいと思ってしまっている人たちには、特におすすめしたいセラピーの一つでもあります。何よりも自分が描き出した色彩は、言葉を超越した波動のメッセージを送ってくることが分かるでしょう。そして、もうひとりの自分に合ったような懐かしさと、いとおしさも感じ取れるはずです。また「色」が、ある瞬間の心の内側を語ることについては、音と子どもで体験したことがありました。

 まだ、娘が8歳の頃、何となく私が惹かれて買ったリトグラフを、リビングルームの隅にかけていました。すると、ある日、その絵の前にしばらく立って、じっと眺めていた娘が、「お母さん、この絵を書いた人って、誰なの」とたずねるので、私は「さあ、あんまり知られていないフランスの画家だと思うけど、どうして?」と答えました。娘は絵を見つめたまま、「この絵を描いている時、この人はもう精神異常になっていたんだよ。だから、この色使って描いたんじゃない。この絵を飾るのヤメテ。早く外してよ」と言うので、仕方なく納得いかないまま、その絵を外すことになりました。内心私は「本当に変な子!」と思い、ちょっぴり残念な気持ちになったものでした。

 しかし、それから数年経ったある日のこと、偶然その作家がこの絵を描いた直後に自殺していたことを知って愕然としたのでした。無意識にこの絵を買った私は、もしかしたらその当時、自分を追い詰めていて、この作家と同じ波長を持っていたのかもしれないなんて想像して「ぞっ」としたものです。

 こうして眺めてみると、人にはその時そのときの心理状態で、気になる色彩や絵があることが分かります。自分の体験から、「何とか自分の考え方や生き方を変えたい」と思っている時は、室内の色彩を変えたくなったり、けっこうひんぱんに壁紙やカーペットの色を変えたり、絵や服の色を変えてみたりしていたことが思い出されます。

 その直後にあることがあって、アート・ブリージングの方法を思いつきました。これは、結構楽しんでやりました。そのことは、後になって自分の行動に自信が持てるようになった要因でもあったと感じています。

 では、その方法について少しだけですが、ご紹介しましょう。ここでは、5枚の絵を使ってみます。

 これらの絵は、私の対談本『宇宙意識の扉』(中央アート出版社)の表紙を描いてくださった、橋本佳代子さんの作品です。彼女の作品には、どれも「光」や「色彩」が溢れ、明るく希望に満ちた自分の将来をイメージしやすいので、それぞれの代表的な色調の絵を選んでみました。

 このアート・ブリージングは、あなたが、したい時にいつでも何回でもやってみてかまいません。自分で「もう、これでよい」と思ったらやめます。これは、ほんの一つの例です。ご自分の目的に合わせて工夫してやってみてください。身体に不調な箇所があれば、効果のある色を使って、充分にそこを照射してみましょう。

 基本的には、自分の生きる方向性が定まれば「痛み」の症状はとれていきます。「痛み」は、「自分には、できない」「がまんするしかない」と思い込んでいる「怖れ」が原因です。

 参考までに、色彩のエネルギー効果について、簡単に記しておきますので(下記参照)、心あたりがあれば利用してみてもいいでしょう。


 
  絵 : 橋本 佳代子
 
インナーライト 円形     

勇気と冒険心が欲しいと思っている人。性急に行動することをやめて確実に、一歩を踏み出したい。ユーモアのセンスがほしい。自分のための時間がほしい。膀胱炎、低血圧、食欲不振、胆石、痛風、シコリ、腎臓 病、消化不良の人。




 
大洋の島 地中海     

明るく、元気になりたい人。希望をもちたい、知性や探究心を求めている人。安全と中立を求めている人。神経系と筋肉が疲れている人。肝臓や胆のうの働き、胆汁の流れなどを促進させたい人。関節炎、糖尿病、肝炎、肝臓病、筋萎縮症、リウマチ、膵臓病の人。





 
オープン カリブ海     

しさ、愛情、細胞を若返らせたい、ゆっくりしたい、エレガント、美しくなりたい、筋肉を緩めたい、性ホルモン分泌、女性らしさ、愛らしさ、生命力を活性化させたい、自分に自由を与えたい。





 
オデッセイ 地中海     

平和、柔軟性を求める、信頼、誠実、リラックスしたい人。解毒作用、高血圧の人、早い脈拍、日射病、頭痛を取り除きたい人。喉の痛み、せき、かすれ声、喉や声の障害を取り除きたい人。生理痛、腰痛、月経困難、目のトラブル、大腸炎、偏頭痛、不眠症、下痢。




 
朝の光の中で カリブ海  

何にでも、まじめに取り組みたい人。他人と感情を分かち合いたい、寛容になりたい、自分の感情を表現する勇気がいる人。やさしくて、誠実な人になりたい、他人との協力関係、一緒にいて自分とくつろげる人と交際したい、罪悪感や無気力感を解放したい、家のまわりをグリーンでいっぱいにしたい、生命力を復活させたい、心臓と肺機能回復、炎症を取りのぞく、ガン、頭痛、血圧を下げたい人。




<アート・ブリージング>

@ まず、上の5枚の絵の中から、今の自分の感覚で、将来の自分のエネルギーとしてイメージするものを1枚選びます。周囲を黒い紙で覆ったりして、その絵だけを、1分間、じっと瞼の裏に焼きつけるような感じで眺めてみます。

A その時、姿勢はラクな姿勢をとり、座禅スタイルでも仰向けになってもいいでしょう。

B 次に、その絵のメインカラーを、腹式呼吸でゆっくりと頭頂から首、背骨を通って、手足を巡り、また逆のぼり、おヘソへ意識を集中させます。お腹が熱くなってきたらその後、その意識を、ハートチャクラ(胸腺あたり)に戻して、そこでしばらく呼吸を安定させます。

C 次に、自分の意識全体が、ハートチャクラの入口からその絵の中に飛び込んでゆくような感覚を味わってください。その絵の中に入り、あなたは、たたずんでいます。周囲の風や波の音、そして空気感、嗅いや香り、人々の感触、鳥の声など、とてもリアルに感じてください。

D 今、あなたはその中で、自分が光の粒子となり、また、そこに存在している人としても感じてみましょう。

E 両手を広げ、その胸に、全身全霊で、あなたの実現するはずの夢を抱きしめてください。

F また光の粒子となったあなたは、ゆっくりと全景を、高い空の上から眺めるように見わたしています。

G ゆっくりと下を見降ろすと、もう一人のあなたが見えます。あなたの望む、色彩のオーラがその身体を包みこんでいます。はじめから何の不安も、怖れも存在していないことが分かるはずです。とても平和な状態です。

H 次に、再び、光の粒子となって、その絵の場所から、三次元の今の場所へと還ってきます。その色の粒子(光子)は、あなたの痛みや、症状や、心配など全部を吸収し、その光と同化してしまいました。

I 最後に光子体となった、あなた自身は肉体へ戻ってきます。頭頂から、スーッと入ってきます。最初と同じように、ゆっくりと複式呼吸をしながら、ハートに戻り、静かに、数を5つ数えたら、目を開きます。

J 目を開いたら、お水を飲んでください。以上です。


<次回 第14章 古人(いにしえびと)の生活の知恵に学ぶ>