愛と自由への旅立ち 

松尾みどり


幸せになりたいと望んでいるのに
苦しいことばかり、家族や会社のためと頑張っても
人間関係はままならず、おまけに体も壊してしまったなど
思うようにならない人生の中で、人は癒しを求めています。
そこで、真から癒されるための1つの大切なポイントをお話しましょう。




第3章 癒しのプロセス

「癒し」(ヒーリング)の本来の意味

 最近、時々覗いてみるCD音楽ショップでは、ひと昔前にはなかった「癒し系」のヒーリングミュージックコーナーがあり、若者たちが視聴したり、贈物として購入している姿をよく見かけるようになりました。また書店の棚にも「癒し」に関する書物が次々に登場し、店内の奥には「ヒーリンググッズ」と称してインセンス(香り)コーナーが設けられています。つい10年ほど前までは「抹香臭い話は勘弁してよ」などと若者にとって線香の香りは仏壇とお坊さんの説教といったイメージが定着していたものでしたが、今ではその香りも、森林やフラワーエッセンスオイルを使ったリラクゼーションのための空間作りを演出する道具の一つに考えられるようになりました。また、アロマテラピー(マッサージオイル)などの設備を整えたホテルや旅館も女性客の人気を集めています。驚くことには、香港やバリ島などのアジアの国々でも日本人観光客目当ての「ボディ&フットマッサージ院」が各地に看板を掲げ、そのほとんどが日本人客で成り立っているといいます。

 一つには日本人のお疲れモード現象とも考えられますが、これまで疲労回復を薬品や栄養剤などに頼ってきた結果、症状は一時的に消えても根本的な解決には至らなかったことから「心の癒し」の必要性に目覚め始めたからではないでしょうか。特に人の手でマッサージをされる、しかも自分のために誰かにやってもらうという部分は、筋肉がほぐされて肉体的にラクになれることと同じくらい、自分を大切にしているという心理的解放感を促すものです。疲れた家庭の主婦が一人でホッとしたくなるのも頷けます。そんなお手軽癒しも結構ですが、ここではもう少し本来の「癒し」について考えてみましょう。

 ヒーリング(healing)、つまり「癒し」の語源はギリシャ語のHOLOSに由来し、宇宙と地球、人間と動植物、心と身体などすべての生命体が一つのもの(oneness)として繋がっている状態を意味するものでありました。従って、「個体」としての存在も全体の一部であり、全体は個の集合体としてエネルギーは途切れることなく循環しているということです。しかし人間は、何事も自分と対象を分離、比較し、優劣や善悪観念で自分を裁く癖による怖れが、本来のエネルギーの流れを遮っていることに気づかずに来てしまいました。その「怖れ」でブロックされたエネルギーを「元に戻す」ことこそが「癒し」でした。しかし現代医学はいつの間にか「治癒」(healing)を「治療」(cure)に置き換えてしまいました。その結果、ヒーリングという表現は本来の意味を失い、信仰で病気を治すことであると解釈されてしまったのです。

 ヒーリングの本来の意味は(他人からの評価で自分自身を○×で裁くような)偏った考え方を修正し、その苦しみや悲しみの感情を手放してゆくことにより、生体エネルギーが反応して自然治癒力に働きかけ、細胞の活性が安定すると同時に、何よりも自分自身の存在の感覚に目覚めてゆくというものです。また、そこから更に多次元に通じる意識の進化へと移行が可能になってゆきます。

 一方「治療」(cure)は身体の外部から患部に薬品を塗布したり、注射したり、施術することで、患部の痛みや症状を取り除く西洋医学的対処療法を指したものです。もちろん、現代医療技術の進歩による恩恵に浴している部分も充分に認める所ですが、最も大切なストレス(心因)と病気の関係をもしっかりと考慮に入れた併行治療こそが、これからの医療に求められる方向性だと信じます。元来、「病」とは呼吸によって体内に取り入れる気(プラナ)のエネルギーの流れが滞り、乱れることを意味したので「病気」と表されました。その反対に気の流れが元に戻り、血液によって体中に酸素が運ばれると「元気」になります。


 ヒーリングとは、基本的に人間を含めて大自然のエネルギー循環を元に戻すことですから、あらゆる存在が、共に共存共栄する「愛」の状態に帰ろうとして、私たちの深い意識は肉体や人間関係を利用してサインを発信します。そこで人間は本能的に「私自身」という自然感覚を取り戻したい欲求にかられます。そのために、人は無意識に水や土に触れたくなったり、動物や小鳥や、音楽や絵画に魅かれたり、独りになりたくなったりします。また一人で楽しむスピード感のある運動、呼吸法、ヨガ、瞑想などのセラピーが効果的に自分をサポートしてくれますが、中でも感情体(アストラル体)と精神体(メンタル体)の癒しが肉体細胞の癒しと直結しています。逆に考えると、肉体的な「痛み」や「症状」は、自分自身が本当に求めているものを教えてくれる神のメッセージでもあるのです。

自分を押さえつけることで起こる身体の変化

 では「心と病気」の関係についてみてみましょう。もし、あなたが長年「コリ」や「痛み」で苦労してきた人であるならば、それは長い間、自分の本当の気持ちを表現できずに我慢してきた人であるという意味です。本当の気持ち(直感)を表現すると、誰かを傷つけるのではないか、あるいは、他人に嫌われるのではないかという「怖れ」で自分をずっーと抑えてきたのです。その「怖れ」で、私らしくなれない自分に嫌気がさすと呼吸が乱れ、酸欠状態を招きます。そして血液は粘度を増し、ドロドロ状態になり、鬱血しやすくなります。つまり、「痛み」は「怒りや恐怖心」の表れです。また「病」の多くが自責や罪悪感から生まれます。

 中でも自己免疫疾患と呼ばれる「ガン・膠原病・糖尿病・アレルギー疾患(アトピー性皮膚炎、喘息)・甲状腺機能障害・関節リュウマチ・パーキンソン病・エイズ」などの原因は、諸説あるものの、未だ解明されていません。しかし最大の原因として挙げなければならないものが強烈な「自己嫌悪、劣等感、自分を許せない、自分が哀れ、生きていたくない」気持ちなのです。これらを総称してストレスと呼んでいます。自分自身を攻撃するこのストレス情報は、脳神経系→ホルモン系→免疫系を次々に破壊してゆきます。

 今から20年ほど前のある夜のことです。寝る支度をしていると、突然、誰かに呼びかけられたような気配がありました。しかし私の他には誰も居ない部屋です。20代の美しい凛としたその女性の声は、最初微かに、そしてやがて澄み切った声が次第に大きく私の内側に響いてきました。その時の私の指導霊(ガイド)であったようです。その中で、これから先に地球上で起こる様々な分野における変化や社会現象などが次々と空中スクリーンに映し出されたのです。特に印象に残ったのは、現在のエイズ患者の末期症状(カポジ腫)を呈した体の部分が拡大されて見えたことです。次に人間の胸腺(ホルモン分泌線)が大写しになり、病気の原因や対策の鍵がここにあることを示しているように感じました。そして最後に、ガイドは次のように言うのでした。

 「やがて、ガンで亡くなる人はいなくなるでしょう。しかし次々と新たなウイルスによる病気が増えるでしょう。」「では医学の進歩で解決されるのでしょうか」「いいえ(現代の)医学の力だけでは完治できません。(胸腺の部分が映し出されて)ここが解明され、人間の意識と呼吸との深い関係が解かれる必要があります。」

 この場所は別名、ハートチャクラとも呼ばれています。この部分は自分に寛容か否定的かのエネルギー状態を一番よく反映させてくれる所です。恋をしても失恋しても、自己の存在を受け入れた時の歓びもここで感じます。私は「今の自分」のままでいいのだ。起こることすべてが自分にとって必要なのだと自然体で思えるようになると、みぞ落ちから上部にかけて温かくなり深く呼吸ができるようになるでしょう。「自分はいつも誰かにコントロールされている、そして他人によって苦しみがもたらされているのだ」と思う時には、胸がしめつけられる感じになり、体がこわばってゆくのが分かるはずです。


これまでの人生で、自分を責め続けてきた感情を解放することに優る癒しはないのです


自己免疫システムと意識の関係

 このような日常体験から「癒しのメカニズム」について知る機会がありました。まさに私たちの生き方のパターンはリンパ液の働きや免疫反応のパターンと全く同じ結果を導いていたことに気づかされたのです。その世界をほんの少し覗いてみましょう。私たちの骨髄で造られる血のもとになる幹細胞から白血球、赤血球、血小板、リンパ球などに分かれてゆきますが、中でもそのリンパ球は胸腺を経て造られるTリンパ球(T細胞)と肝臓を経て造られるBリンパ球(B細胞)、そしてナチュラルキラー細胞(NK細胞)などの専門職をもつ細胞へと変化します。特にT細胞は「自己」と「非自己」に対して敏感に反応し、「非自己」とみなした細胞を攻撃します。一方B細胞は外敵(ウイルスや病原菌)と直接結合し柔軟に対応できる新しい自分をつくり、その百万種類に及ぶ抗体で特定の相手だけを攻撃するという仕組みです。そして、T細胞は同時にB細胞をつくる働きを助ける指示も担っているのです。こうして日夜、体内では自分の免疫システムという「防衛庁」が、本人のつくるストレスで傷つきながらも文句も言わず働き続けています。

 しかし限界に達すると、外側の自分へ「ストレスをつくるな、SOS!」と病気をつくって警報を発信します。「無理に前向きに生きるのはやめよう。今のままでいいのだ」と自分自身の感覚で生きている時は、免疫系は安定していますので、自律神経が病むことはありませんし、ホルモン状態も全く問題ありません。しかし、「自分以外の人になろう」としてもがいていると、「自己」細胞が「非自己」細胞へと変化し、自分のTリンパ球が自分を攻撃する仕組みになっています。こうして自分で自己を認識できなくなると、自己破壊が誘発されるのです。これを自己免疫病と呼んでいます。免疫の研究が始まってまだ1世紀も経っていません。その後、医学も臨床医学から予防医学へ、そして遺伝子治療へと流れが変化する中で、1990年にスタートしたヒトゲノム計画プロジェクトによる遺伝子の暗号文字解読作業がほぼ終了したことを受けて、2000年の6月にアメリカのクリントン大統領は「人類の月着陸」以来の大偉業であったと発表しました。

 私が啓示として初めて自己免疫疾患が意識と連動して起こる病気であるとのヒントを受けてから僅か20年間に、病気は遺伝子の損傷で起こることや、その傷を修復する栄養素(核酸)の存在もつきとめられました。そして、驚異的な抗腫食品なども発見され、確かに時代の恵みを享受できるようになりましたが、過去2万人を超えるカウンセリングセッションを通じて確信したことは、水や空気、呼吸、食品の大切さはさることながら、これまでの人生で自分を責め続けてきた感情を解放する癒しに優るものはないということでした。いかに他人の言葉や行為や評価に振り回され、自分の感覚を見失ってきたのかを静かに眺め、「○○のために頑張るのはよそう。在りのままの自分に戻ろう」と決めると、これまでの怖れや怒りがスーッと消えてゆきます。

 そして、「怖れ」の象徴だった「痛み」や「症状」も消えてゆくことになります。この肉体と感情のおかげで私たちの本質を見出すことができるのです。肉体は感情を映し出すスクリーンです。「怒り」は肝臓を攻撃します。強烈な「我慢」は心臓や肺を圧迫します。言葉(音声)で表現できない時は呼吸器や喉の病に現れます。また、「行動」できない無念さや悔しさは自己嫌悪となり、腎系及び脚の疾患を招きます。性に対する嫌悪感や罪悪感は性病や子宮内膜症などを誘発します。激しい自己抑制への怒りは、アトピー性皮膚炎や喘息を起こし易い結果がでています。

 


第4章 自らを癒した女性


子供時代から苦しい思いをしてきた女性が20代で難病に

 今から17年ほど前のことです。心と免疫力について身をもって教えてくれた一人の女性と出逢いました。

 彼女の子供時代は両親が不仲で、家庭の中は荒れていました。父親はある宗教団体の幹部でしたが、いつも家を空けることが多く、たまに帰宅すると金銭問題や暴力で子供たちはビクビクしていたようです。何時も母親を気遣っていた長女の彼女は、小学校三年生の時、「虫の知らせ」のように母親のことが気になり学校を早退して帰宅しました。玄関の扉を開けると、いつもは居ないはずの父親が彼女を母親と思い込み、片手に刃物を隠し持って玄関先で待ち構えていた姿を目撃することになりました。ちょうどその時、母親は外出していて難を逃れ、事無きを得ましたが、幼い彼女は強烈なショックを受け、そのことをずーっと誰にも話すことができませんでした。その時の彼女の恐怖と心痛はいかばかりであったか想像に余るものがあります。

 その後、そんな生活が暫く続いた後、両親は離婚したものの、二人の妹と母親と働けない叔母との五人の生活は大変だったようです。彼女は子供時代から苦しい環境の中で育ちましたが、歌が大好きな三姉妹として明るく振舞っていました。しかし彼女はいつも体が不調で、気がついた時は「病気の問屋」と皆に笑われるほどでした。そして20代になったある朝、鏡の中の自分の姿に驚愕しました。頭の先から足の先まで赤紫色の吹き出ものが全身を覆っていたのです。体中が激しい痛みで眠ることもできなくなっていました。ひどい時は誰か人が側を歩くだけで頭痛や吐気がおこり、カレーの臭いがすると、それだけで刺激を受けて体中が真赤に晴れ上がりました。大学病院を転々と転院してみても結局、原因も分からず治療法もありませんでした。世界でも52人、日本で12人しか症例がないと言われるリンパ球の好酸球の異常で起こる膠原病の一種だと診断されました。大学病院では毎日脊髄から髄液を採られながら、まさしく生体実験に使われているようだったと述懐しています。

 ある日、教授がやって来て「新しく開発された新薬を使ってみましょう。」と言われ、びっくりした彼女が尋ねました。「ちょっと待って下さい。私の他に誰か飲んだ人がいるんですか?」「あなたが初めてです。」そこで彼女は咄嗟に「もし私に何か異常が起きたら先生が責任を取ってくれますか?一筆書いてくれますか。」と尋ねました。すると、ドクターからの返事はこうでした。「その責任は取れない。」これを聞いた彼女は、怒りがこみあげてきたと言います。そして、さらに問い直しました。「責任が取れないモノを私に飲ませるんですか。」「では、すぐ退院してくれ。うちはベッドを待っている患者さんがたくさんいるんだ。協力しない患者は要らない。」こう言われた彼女は、そのまま病院を出てきたのでした。

自己を否定してきた感情エネルギーを解放する

 今から思えば、それで命拾いしたようなものです。まさに自分の直感が救いの手をさしのべたのでしょう。しかしながら、退院しても何の治療法もなく、働くこともできなかった彼女は当時、二人の妹と共に歌の仕事でやっと生計を立てていました。30代になって、ある人の紹介で私の英会話のクラスにやって来ました。英語を勉強したいというよりは、直感に惹かれてやって来ただけでした。時折、私の話が「心と病気」の関係に及ぶと彼女は目を輝かせて砂が水を吸うように聞き入っていました。そしてある日、彼女は自分の生い立ちについて話し始めました。そして私もまた様々なことを話し、最後に私の手から放射するエネルギーで体に調律を施したのです。そしてまた、その病気の原因(心因)が、父親を許せない強い気持ちや、子供時代から抱え込んできた自分への無力感や劣等感などが複雑に入り混じった感情であったことなどに及び、彼女も驚いた様子でした。 しかし、今まで誰にも言えず蓄積してきた我慢が涙となり、嗚咽となって思い切り涙を流したのでした。私も泣きました。「本当の意味がわかって嬉しいです。ありがとうございました。」と帰ったのでしたが、その数日後、早朝彼女からの電話を受けたのです。その声は苦しそうで、「先生、夜中からずーっと頭が割れそうに痛むんです。顔も目も腫れ上がって、一体どうなったんでしょうか。助けて下さい。」というと彼女はすぐに私の家にやってきました。

 私は彼女の顔を見た瞬間、声が詰まって息を呑んでしまいました。彼女の顔は左側へ大きく歪み、すっかり人相が変わるほどに膨れ上がっているではありませんか。ものも食べられず水も飲めないほどでした。その彼女の波動をリーディングしながら、それが「感情の癒し」に必要なプロセスであり、排毒反応であることが分かりました。彼女が初めて、心から自分を受け入れ始めると、その反応がこのように表に現れてくるのでした。強烈な痛みが襲ってきます。それこそが長い間の苦しみや怖れの表出現象でした。自己免疫不全を起こすエネルギーはこのようにして本人が確認する行程を経て初めて消えてゆくのです。「痛み」が自分自身を知るための神の愛であることに気づくまでは中々「感謝」には至れないかもしれません。しかし、必ず誰もが到達できる素晴らしい境地です。

 こうして彼女は、この病気をきっかけに「自分自身」と取りくみ始めました。積極的に自分が求めるものを探求して、最後に行き着いた所が「食と心と遺伝子」の世界はすべて「ひとつ」のものであったと悟ったようです。どれが一つ欠けてもダメでした。すっかり元気を取り戻し若々しい素肌に戻り、パワフルで笑いの人生に様変わりしてしまいました。本当の癒しを求める人々に自分の体験を通して自分の知り得る最高の情報を提供し、サポートしてゆくことに歓びを感じています。「私は今では全く病気と無縁になりました。だって私は、ア・ホ・カで暮らしているんですもの」と笑う彼女。アは明るく、ホは朗らか、カは活発にという心です。自分の心に自分自身のすべてを受け入れる準備がある限り、どんな人でも必ず「本当の癒し」を体験できるのです。

∞次回 第5章 身近な癒しの存在 ∞