今回は催眠療法についてのお話です。
私が最初に催眠療法に出逢ったのは、あるヨガ教室でのことでした。
その不思議な光景に驚きは隠せませんでしたが
一方ではその療法に全くの違和感を感じていない私がいたことも事実です。
その数年後、実際に催眠療法を学ぶこととなり
その根底にあるものが宇宙の法則と深く繋がっているように思えましたので
ここにご紹介させていただきます。途中、皆さんにも<催眠>を体験していただきますが
催眠に対するイメージがたぶん変わることと思います。
これを読んだからといって、催眠にかけられて犬や鳥になるわけではありませんので
安心して読んでくださいね!
ある時期、私は自分自身の不思議な体験がどこからやって来るのかを知りたくて、気功やヨガを習っていました。ヨガ教室にもいろいろとありますが、私が通っていましたヨガ教室には様々なコースがありました。その中でも印象的だったのが、潜在意識を探るコースで病院では治らない病気を患っておられる方に退行催眠をかけ原因を探るというものです。実際に私が目の当たりにしたケースは、26歳の過食症で悩む女性でした。目の前で退行催眠にかかった彼女は3・4歳の少女期に戻っていましたが、彼女の瞳からは大粒の涙がこぼれ落ち始め、しばらくするとしゃくりあげるような嗚咽へと変化していきました。ヨガの先生が「どうしたの?」とやさしく声をかけると、彼女は筆談にて「父親が母親に暴力を振るって自分は子供でどうすることもできない」と言いました。その後も父親の暴力は続き、父親が大嫌いになったことや一緒に食事をする時に顔を合わせたくないために、急いで食事をかきこむように食べてしまい、食欲が不適切なかたちでしか満たされていないことが判明しました。それが、彼女の当たり前の習慣となってしまっていたということです。
それから、その先生は彼女を子供の頃、最初に父親の暴力を目撃した場面へと退行催眠をかけ、その状況の中で嗚咽している彼女に戻しました。彼女は激しく泣いていましたが、ヨガの先生はその父親に対して諭すように「暴力を振るうのは止めなさい!」と言いました。そして横にいたアシスタント(男性)が父親役になって「ごめんなさい、ごめんなさい、もう暴力は振るいません。」と謝りました。すると今まで泣きじゃくっていたその女性の表情が嘘のようにとても穏やかになり、微笑へと変わりました。そばで見ていた私はとても不思議な感覚になりましたが、と同時にある映画を思い出していました。皆さんご存知のスピルバーグ監督の<バック・トゥ・ザ・フューチャー>です。過去の一瞬を変えることで未来が変化するというストーリーの映画です。26歳の彼女の意識下において、過去の一瞬を変化させることで潜在意識についた傷を癒し、今を変えるというものです。
私はそこで3ヶ月程、ヨガ教室に通いましたが催眠療法に興味を持ち始めたのはこの頃です。催眠の歴史を調べてみますと驚くほど長い歴史を持っていることがわかります。古代エジプトにあった<眠りの寺院>では、僧侶が信者を眠りに誘導してから病気を治癒する暗示を与えていました。この手法は紀元前4世紀にはギリシャに伝わり、その100年後にはローマに伝わってローマ帝国内で継承されました。現在でもヒプノセラピスト(催眠療法士)が「催眠誘導」に使っているものとよく似ています。ある本には「催眠は人類の歴史上もっとも古くから存在した自然なセラピーである。」と紹介されており、最近では心理療法としてばかりでなく、医療の分野でも有効で安全な補助テクニックとして認められ始めているようです。
そこで最初に催眠療法についての本を探し、「ヒプノセラピー」(A.M.クラズナー著)という一冊の本に出逢いました。その本の冒頭に<オズの魔法使い>の話が出てきます。臆病ライオン、ブリキの木こり、かかしの3人を連れて、主人公のドロシーと愛犬トトは彼らの夢を叶えてくれるオズの魔法使いに逢いに冒険の旅に出発します。ライオンは「勇気」を、ブリキの木こりは「心」を、かかしは「脳みそ」を手に入れることがそれぞれの夢でした。魔法使いはライオンに勇気の薬を与え、ブリキの木こりには胸におがくずを布でくるんで入れて、かかしには針と釘とヌカの混ぜ物を頭に詰め込みました。するとライオンはこわいものがなくなり、ブリキの木こりは暖かくて優しい自分になった気がし始め、かかしはとても賢くなったように自分を思えたのです。魔法使いは彼らが求めていたものをそのまま与えたわけではありません。彼らが求めていたものが本当は自分自身の中に存在することを、信じる力で表出するということを教えただけだったのです。これは、催眠療法にとてもよく似ています。
その後「ヒプノセラピー」の著者であるクラズナー博士が来日された時に私は催眠療法を受講しました。博士は最初に「すべての催眠は自己暗示であると言っても過言ではない。」と話されました。その意味は、日常において自分自身がインプットしているもの(思考や想念・言葉)が、アウトプット(現実化)されているということです。ですから、いくら現実だけを変化させようと思っても、インプットを変えなければ何も変わらないということなのでしょう。催眠療法は、そのインプットの過程を助けるもので、ヒプノセラピストがアシストすることもありますが、自己催眠では誰の手も借りずに自分に暗示をかけ自分自身を癒すことさえできるのです。催眠療法では、あくまでも主役は本人自身になります。
催眠療法を学んで私自身が<催眠>に対して思い違いをしていたことがあります。今までTVなどで催眠術の特集などが放映されると、その中で催眠術にかけられた人がまるで催眠術師に操られているかのような印象を受けていました。しかし、実際はその人達は催眠術を楽しみ、自分自身がそれをやっても構わないと思っていることがわかりました。例えば催眠術師がスカートをはいている女性に「ここで逆立ちをしてください。」と暗示をかけたとしても、その女性が逆立ちをすることを望んでいなければ、その女性は逆立ちをしないということです。私達は自分のモラルに反しないぶんの暗示を受け入れるようになっています。そして、催眠にかかっている状態は決して自分自身をコントロールできなくなるわけではなく、周りの状況もわかっていますし、そばにいる人々の声もちゃんと聞こえています。まるで眠りに就く前のトロトロ状態に感じが似ています。この状態が脳からアルファ波やシータ波が出ていて一番暗示を受け入れやすいようです。
そして、私達の肉体は日頃の思考や想念という暗示(思考・想念が暗示であることを普段認識されている方は少ないとは思いますが)にコントロールされています。頭で理解したことに肉体が従うという傾向があるのです。ここで催眠療法の一部ではありますが、皆さんにも少し体験していただきたいと思います。これから先に書いてあることを想像されてみてください。
さあ、ゆっくりと上手に想像してみましょう。今、皆さんの目の前には一個のレモンがあります。やや大きめの果汁がたっぷり入っている新鮮な黄色いレモンです。あなたは、片手にそのレモン、もう一方の手には切れ味の良いナイフを持っています。そして、そのナイフでレモンを切ると勢いよく果汁が吹きだしてきました。そして果汁たっぷりの半分に切ったレモンをガブリッとかじってみてください。いかがですか…皆さんの身体に何か変化が起きましたか?例えば「唾液が出た」とか「舌の付根の両脇がキュッとなった」などの反応があった方はとても上手にレモンをイメージできた方です。
しかし、レモンは実際に皆さんの目の前に存在していたわけではありません。レモンは想像の世界に存在していました。皆さんの意識は「レモンをイメージする」という暗示を受け入れ、ここにはないレモンをイメージの中に登場させ、身体はその暗示(イメージ)に従って行動したまでです。このように私達の身体は想像したことと現実の区別をすることができません。私達が脳にインプットしたことに身体がその内容を信じ従うということです。ですから、良いエネルギーを持った暗示(思考・想念・言葉)を与えると私達の身体はそのように反応し始めます。よくビジネス書の成功哲学にも良い方向へと向かうイメージをすることの大切さが書かれています。これは<言霊><想念>のコーナーでも述べましたが、私達が普段心に描く意識の法則(宇宙の法則)だと思います。
私が学びました催眠療法は、こうなりたいと望む自分を助けるツールとして効果があると思います。ヒプノセラピストはそのためにアシストしてくれますが、あくまでも私達自身が本当に心からそれを望み、やる気があって行動に移していかないかぎりは何かを変えることはできません。毎朝・毎晩、起きた直後や眠りに就く直前などのリラックスしている状態の時にこうなりたい自分をイメージし、言葉に出してみましょう。そして実現するまであきらめずに継続していくことが大切です。自然と身体がこうなりたい自分に近づくために行動を起こし始めます。途中、失敗と思われるような事態になったとしても、それは希望している自分の姿になるために必要なことですから心配は無用です。
催眠療法には、なりたい自分になるために自己暗示をかけるものと最初に登場した退行催眠のように心の傷を癒すタイプとがあるようです。後者について興味がおありの方は「前世療法」ブライアン・L・ワイス博士著がありますのでご覧になられてはいかがでしょう。ワイス博士は、米国で催眠療法(退行催眠)による患者の治療を行なっている過程で驚くべき事態に遭遇し、その体験が記されています。
催眠という世界は、テレビや映画で紹介されたり、今まで私達が認識していた<イブカシイ>というイメージのものとは大違いの世界です。何だか怖いもの…というイメージをお持ちの方もおありでしょうが、良い方向へ使えばとても私達を助けてくれるものだと思います。どのように活用し、どのように選択していくか…それもまた、私達の考え方次第のようです。こうなりたいと思う自分がいるにも関わらず、そうなれないのは自分自身のインプットの部分に目を向けてみる必要があると思います。
自分自身を本当に変化させることができるのは、自分自身しかいませんので…他の人からの影響だと思えることでも、それを受け入れる自分がいて、自分が選択したことでその状況が訪れているわけです。内なる宇宙への旅を読み続けてこられた方は、今までのテーマに共通していることがあることにお気づきでしょう。そして、自分自身に起きていることを人のせいにはできなくなったと思います。私自身も日々いろんな体験をさせていただいています。皆さまも同じでしょうが、どんな状況下にあっても物事をプラスに考えていけるようになっていきたいと思っています。共に明るく、元気に前向きにこれからも進んでいきましょうね!
∞ 月ノ宮 沙季 ∞
※参考文献 : クラズナー博士のあなたにもできる ヒプノセラピー A・M・クラズナー著 (VOICE)