(邪馬台国と大和朝廷を推理する)
  
Ⅲ古里の巻  七章 聖地移植 (23・2425・26)
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24 広域対応(中)

ヤマトタケルの三つの墓

 広域対応を語るときには、ヤマトタケルの三つの墓も忘れてはいけません。ヤマトタケルの墓もまた、広域対応に基づいて移植された聖地だからです。そこには、三人の天皇の墓に関わる情報が隠されています。

 『日本書紀』の景行天皇の40年の条によれば、ヤマトタケルの三つの墓について、次のように書かれています。

    …(日本武尊を)伊勢国(いせのくに)の能褒野陵(のぼののみささぎ)に葬(はぶ)りまつる。時に日本武尊(やまとたけるのみこと)、白鳥(しらとり)と化(な)りたまひて、陵(みささぎ)より出(い)で、倭国(やまとのくに)を指(さ)して飛(と)びたまふ。群臣等(まへつきみたち)、因(よ)りて、其の棺櫬(ひつぎ)を開きて視たてまつれば、明衣(みそ)のみ空(むな)しく留(とど)まりて、屍骨(みかばね)は無し。是(ここ)に、使者(つかひ)を遣(つかは)して白鳥を追(お)ひ尋(もと)めぬ。則(すなは)ち倭(やまと)の琴弾原(ことひきのはら)に停(とどま)れり。仍(よ)りて其の処(ところ)に陵(みささぎ)を造(つく)る。白鳥、更(また)(と)びて河内(かふち)に至りて、旧市邑(ふるいちのむら)に留(とどま)る。亦其の処に陵を作る。故(かれ)、時人(ときのひと)、是(こ)の三(みつ)の陵を号(なづ)けて、白鳥陵(しらとりのみささぎ)と曰(い)ふ。然(しかう)して遂(つひ)に高(たか)く翔(と)びて天(あめ)に上(のぼ)りぬ。


 ここに伝承された三つの墓は、全て移植された聖地で、本物ではありません。ただし、ヤマトタケルの本当の墓を探すときのヒントになりますから、検討する価値があります。

 第三の墓は、大阪府羽曳野
(はびきの)市白鳥に伝承地があります。奈良盆地と粕屋郡を中心とする広域対応では、河内は御笠川の流域に対応しますから、白鳥陵は博多区那珂1丁目の那珂八幡古墳に対応します。つまりヤマトタケル3世(開化天皇)の墓にあたります。

 第二の墓は、奈良県御所市冨田にあります。国見山の西のふもとです。孝安天皇(ヤマトタケル2世)の墓の伝承地は、冨田の北、玉手山にあるとされますから、墓の伝承地は二つあることになります。これを粕屋郡に置き換えると、冨田は須恵町上須恵に対応し、玉手山は乙犬山に対応します。上須恵には皿山公園があり、その西に須賀神社と秋葉神社が並んでいます。皿山公園付近に墓が見つかるのでしょうか。

 第一の墓は、三重県亀山市能煩野にあります。ここは、福岡県行橋市(旧豊前国京都
(みやこ)郡)上津熊(かみつのくま)の恒富八幡宮に対応します。

 『日本書紀』によれば、景行天皇の九州遠征のときに、京都
(みやこ)郡に行宮(あんぐう)を置き、それによって京都(みやこ)という地名が生まれたといいます。この行宮が実は、3代安寧天皇(ヤマトタケル1世)の行宮です。この行宮は、行橋市与原にある白庭神社だと思います。

63ヤマトタケル(大阪・奈良)

64ヤマトタケル(福岡平野)

行橋市・3代安寧天皇・4・

 安寧天皇の都といえば、『古事記』や『日本書紀』によれば、片塩の浮穴の宮といいます。比定地は、大和高田市片塩町の多久蟲玉(たくむしたま)神社です。墓は畝傍山に設定されています。都も墓もトンボの交尾の左岸側にあります。これを行橋市と比較してみましょう。

 行橋市では観音山が高千穂峯で、多武峰に対応します。長狭
(ながお)川が寺川に対応し、下崎川が飛鳥川に対応します。行橋市にもトンボの交尾の地形があって、地理的に大和とよく対応します。

 畝傍山は飛鳥川の左岸にありますが、恒富八幡宮も下崎川の左岸にあります。小波瀬川が葛城川に対応し、それぞれの左岸に白庭神社と多久蟲玉神社があります。白庭神社はヤマトタケル1世(安寧天皇)の行宮跡、そして恒富八幡宮はその墓と見られます。ただし本当の都や墓は、朝鮮半島にあると思います。

 ついでに言えば、大阪府堺市鳳
(おおとり)北町には大鳥神社があって、ヤマトタケルが祭られています。この神社は、広域対応では伊都国の細石神社に対応します。したがって、大鳥神社のヤマトタケルは2世、孝安天皇です。

65ヤマトタケル(鈴鹿)

66ヤマトタケル(行橋)


追記 三重県には、ヤマトタケルの墓の有力候補が他にもあったようです。 2009・9・23
三重県では江戸時代まで、加佐登駅の北にある鈴鹿市・白鳥塚古墳がヤマトタケルの墓の有力候補と考えられてきました。
本居宣長もこの立場だったそうです。
明治政府も一度はこの見解を採用しましたが、のちに亀山市・丁子塚(能褒野王塚)に改定して、現在に至っています。

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