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  いろは歌


ここに掲載しています短歌は住岡夜晃先生の短歌集「讃仏乗」の中に「いろは歌」としてある歌です。
この短歌集は住岡夜晃先生が最晩年(戦時中から戦後にかけ)に作られた短歌を集成したものです。
見出されたノートを元に佐藤虎男先生が書き起こされ昨年出版されました。


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い 一劫にとくともつきじと宣らす徳を念仏《みな》にたまはる誓願の慈悲

ろ 六道に流転する身も誓願の船に乗りなば仏土へぞ往く

は はかなきは人の命よ露の身のきえぬ間に聞け本願の道

に 荷にならぬ御慈悲と知らではからいの重き荷おふはおろかなりけり

  
柔なんの心に生きよ和を以て貴しとすと太子宣らせり


ほ ほのぼのと明けゆく空は念仏の人のこころのすがたにぞある
 
へ 徧照の光に摂め取られたりせん術もなく唯み名をよぶ

と とらわれの氷も今はとけはてて浄土の池にそそぐうれしさ

ち 智慧光の力なりけり梵筵《ぼんえん》にみ法聞く身と育てられしは 

り 輪宝を転ずるがごとく名号は衆生の闇をくだきこそすれ







わ 
わが心きのふも今日も暗かりき業報に泣くはらからゆえに

か 
願生の君のすがたにたるかなけだかくかほる寒月の梅

  
かの岸によびますみ名はそのままに地に我生かす願力なりけり


よ 世をあげてほろびの風に狂ふともわがゆく道は念仏の道

た たらちねの親の心も念仏の心にまさる慈愛やはある

れ 
蓮華咲く七宝の池に柔軟の水わき出でて清く流るる


そ そしられておのれを知れよそしられて念仏申せ無碍道光る

つ つくることなきみ光の中に育てられ念仏申す身のゆたらけき

ね 

な なるようになる世なりけり任運に念仏称へなば足る世なりけり

ら 来年はらい月はとて今日の日をあだにすごすとあはれなりけり

む 無量寿の仏の廻向の念仏のうちに生かされて生く人の幸かも

う 憂きことのたえまなき世も信心の光になごむ道はありけり

ゐ 為失大利為得大利と大聖は誡めたまふぞ疑いを去れ

の 残りなくいだきとられし身の安さ手ばなしにして唯念仏をよぶ

お おのがじし称ふる念仏も誓願の根は一なることの嬉しさ





ま 
ますらをの道ゆきつくしたらちねのみ手に帰りし尊き君かも


け 

ふ 
吹雪たつ曠野をゆきて忍終不悔と誓いしおやのこころ身にしむ

 
 不可思議の弥陀弘誓の大船のなかりせば五濁の海に沈みぞはてん

こ 
コロコロと蓮葉にたまる雨水のそれにも似たり流転の相は





あ 
秋ふかみ万象なべて色づきぬ大自然の親の意のままに



き 
きけぬ日は念仏申せ法《のり》の友同じ大悲のむねにしあれば

ゆ 
唯一のまことの作業ぞ念仏は貫き生きよ念仏ひとすじに




み 念仏ひとつ遠つ仏祖《みおや》ゆうけつぎて道一すじに生きんとぞおもふ

し 
しろじろと道一すじに光りおり水火は猛《たけ》く消えも果てねど


え えも云はぬ光に摂めとられなば柔なんの徳その身をかざる

  
越路なる雪の旅路に愚禿ぞと名のりたまいし祖師のしのばゆ

ひ ひれふせばほのかにひびくみ名の招喚《こえ》われこのままにすくはれてあり

も もろともに念仏《みな》一すじに生きぬきて国の鎮めとかくろい果てん

せ せめてもよひれ伏し生きん罪の子は卑湿淤泥に蓮華も咲くなり