日々のエッセイ


  カレンダーが9月になったとたん、季節がガラリと移り替わるわけではないのに、「9月」の声を聞くと、急に涼しく、物寂しくなったような気がします。 夜が長くなり、落ち着きの出る秋の始まり。 人恋しくなって、誰かに手紙でも書きたくなる季節。

           

今年も「ギャラリーウシン」で、絵封筒展が開かれ、私も参加します。 手紙をモチーフにした短編を書きました。 タイトルは『お返事待ってます』。 一人暮らしを始めた若い女性のもとへ届く、宛名も差出し人の名も無い手紙。 誰も返事を待っているのでしょう? 興味を持たれた方は、是非、ギャラリーで読んでみてください。









        絵封筒展    8月31日(水)~9月4日(日) ギャラリーウシンにて
        埼玉県所沢市小手指町1-22-13-102  ☎ 04-2997-8720  (オーナー 細野敦子さん)


 細野さんから頂いた美しい絵封筒には、ローズウィンドウというロマンティツクな切り紙が同封されていました。








 三角にたたまれた薄いペーパーを、そっと広げると、アンティックローズいくつも現れます。「紙のステンドグラス」と言われるクラフトなのですって。 軽いし、かさばらないし、それでいて豪華。 手紙に同封する贈り物にぴったりですね。


   書いた手紙は、散歩途中の坂道で、ポストに投函。 目白の坂には、こんな派手なポストがあります。

                

       漫画好きな人ならお気づきでしょうが、楳図かずおさんの代表作、『まことちゃん』に出てくる幼稚園児の主人公・沢田まことちゃんのまん丸い瞳と、「グワシ」という掛け声とともに指で作る“決めポーズ”が描かれています。  赤と白のストライプも、楳図さんのトレードマーク。 かなりインパクトがあり、遠くからでも目立ちます。 普通のポストとして使われていますが、手紙を入れたら、まことちゃんにいたずらされて、届かないかも・・・なんて気がかり、かな?


   さて、私の書いた、文庫サイズの短編集『虹色モザイク』(朱鳥社)が、「くわのみ書房」で、このように素敵に展示、販売してくださっていて、嬉しいです。
              

   「くわのみ書房」は、厳選された絵本・童話を読みながら、美味しいお茶も楽しめるブックカフェで、とても居心地の良いお店です。

               
   赤い幌が目印の、可愛らしい外観。 近くに小学校もあるので、子どもたちも集まってきそうですね。  ラックに無造作に置かれた月刊童話誌は、親子で読むのに打ってつけ。
                


        

ぬくもりあふれる店内。 大きな窓から、明るい通りが見渡せます。




    椅子や小物も可愛くて。 オーナーの那須さんのお嬢さんが作る手書きメニューやポップ類も、絵本の一ページみたいに良い雰囲気。




     
    那須さんお勧めの絵本出版社『きじとら出版』から刊行された『木の葉つかいはどこいった?』は、これからの季節に読みたくなるお話です。
            
               
   葉っぱたちに「落ち葉としての散り方」を伝授する“木の葉つかい”が、なぜか今年は現れません。秋になっても、枝にしがみつき、戸惑う葉っぱたち。 このまま秋になってしまうのか・・・。

           
   落ち葉色のページが続く、不思議でユニークで真面目な物語に、大人も勇気づけられそう。 この作品は、いたばし国際絵本翻訳大賞を受賞したイタリアの絵本です。広島にある「きじとら出版」の社長さんも、この絵本翻訳大賞の受賞者だそうで、優れた受賞作品の数々が、本として世に出されないのを残念に思い、自ら出版社を立ち上げられたとか。 文学において、最近は地方の出版社が元気と聞きますが、まさにそんな感じで良い絵本を出されています。

             
   長いお休みが終わり、学生さんたちの中にはテスト期間を迎えている人もいるでしょう。 国語のテスト問題に、私の書いた物語を使っていただく機会がありました。 全国統一小学生テスト・小学五年生(四谷大塚出版)では、『リトル・ダンサー』(国土社)からの設問。 自分でも好きな場面が問題として取り上げられているので、こういう形で子どもたちに読んでもらえるのも嬉しいです。 今年の帝京八王子中学校の入学試験問題には、『夜の学校』(文研出版)が出題されました。

                 

  森忠明さんの新著『ともきたる 空谷跫音録』(翰林書房)を読みました。『下男のためのパヴァーヌ・松谷みよ子回想』の章に、二十数年前、童話雑誌『びわの実学校』へ私の作品を載せて頂く際のエピソードが載っています。この時に掲載されたのは『コスモス・マジック』で、その後、加筆して本になったのですが、
雑誌と本とでは、ラスト・シーンを大きく変えています。雑誌では、主人公が独りになる切ない感じの終わり方。本では、家庭が修復するハッピーエンド。 機会があれば、読み比べてください。 『びわの実学校』は坪田譲治さんが始められた伝統ある童話雑誌で、今は無いのが残念です。 当時、森忠明さんから受けた丁寧で適切なご指導は、今も童話を書く力になっています。


     読書の秋、心に響く本に出会えますように。

                               2016年9月



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