暑過ぎる夏がどこまでも続きそうな気持ちでいたら、いつの間にか秋の風を感じるようになりました。季節は着実に変わっていくのですね。地震や台風に見舞われ、不安な夏でしたので、秋はゆったりと快適に暮らせたらいいなと思います。
夏に行われた絵本カフェ・アチェロさんでの展示の様子を紹介させてください。
田村理江と小野寺美樹さんとの二人による『テーブルの上のファンタジー』展は、夏休みの真っ最中に一週間、絵本カフェacero(アチェロ)さんで行われました。(7月30日~8月7日) アチェロさんでの初の展覧会企画ということで、「美味しそうで楽しく明るい」をモットーに、二人の色とお店の色とを合わせていきました。
入り口にも絵本や楽しい飾りがいっぱい。お店の中は広くて、なんと300冊の絵本が揃っています。
展覧会のシンボルになったコックさん人形は、小野寺美樹さんの作品。美味しいピザのあるカフェのイメージに寄せ、女の子のコックさんがお客さまを出迎えました。赤いエプロンが良く似合うコックさん。ピザも本物そっくり、良い具合に焼けています。
小野寺さんのコーナーには、チャーミングな花の妖精や天使、夏らしい甚平ザメなどが並びました。小さなお子さんたちには、本物そっくりでいながら、どこかユーモラスなサメが人気。 小野寺さんが今までに装丁を手掛けた本や、この展示のために書き下ろしたヒマワリ畑の絵もファンタジックです。
小野寺さんの様々なタッチのポストカードも素敵。 写真の一番左に写る”ガラスドームに入ったピンク色のバラ”は、私の豆本『星の王子さま』に出てくる”プライドの高いバラ”を再現してくれたものです。
このバラを境にして、右側が小野寺美樹さんの展示スペース、左側が私のスペースになっていました。私の展示は、夏っぽい豆本が中心です。
今まで出した絵本なども飾りました。上の写真の、ちょうど真ん中にある版画絵本『すてきなおかいもの』の絵を担当してくださった伊藤知紗さんもいらしてくださり、久しぶりにいろいろお話が出来ました。この絵本を作ったのは、もう二十年も前なんて、われながらびっくり。
世界の名作豆本として『不思議の国のアリス』と『星の王子さま』を小箱に入れ、貝殻やガラスなどの夏小物で彩りました。
卵の形をした夏のお話『たまご旅行』や、世界終末時計をモチーフにした『誰が時計を止められる?』など、季節や時世を考えながら選んだ豆本が10種類。『ねずみくんのおうち』は、小野寺美樹さんとの共作です。 どの本も、自由に手に取っていただけるように並べました。
小さなお子さんには、シンプルな赤い豆本『RED』も楽しんでもらえたようで、「自分のまわりにある”赤いもの”を探そう」と、色に対する興味を深めてくれたら嬉しいなと思います。
アチェロのオーナーさんから、色に関する面白い話を伺いました。マリー・ホールエッツが1944年に発表した『もりのなか』という絵本は、日本でもロングセラーで、本好きの子なら一度は目にしたことがあるのでは?
という名作ですが、ちょっと大人っぽいモノクロ絵本。散歩に出掛けた男の子が、森の中でいろいろな動物たちに出会う場面が、黒と白だけで表現されています。
小さな子どもには、モノクロ絵本は静か過ぎて、少し不安げに映るのかなと思ったら、オーナーさんは「いえいえ、子どもたちは、ちゃんと自分で色をつけて絵本を楽しんでいるのです」とおっしゃり、「へぇー、そうなんだぁ」と納得。 大人になった読者が、この絵本を開いて「あれ? 色がついてたはずなのに」と驚くことがあるそうで、それは自分が頭の中で色をつけた絵本のページを記憶しているからなのですって。
楽しいおしゃべりと、美味しいランチやケーキを満喫した『テーブルの上のファンタジー』展。夏の暑さや、忙しい日常を忘れるひとときでした。来てくださった方々、気に掛けてくださった方々、そしてアチェロさん、ありがとうございました。
展覧会といえばーーー。30年前に行った展覧会で、「また観たいなぁ」と思っていたジャン・ミッシェル・フォロン展がステーション・ギャラリーで開かれていて、もちろん行きました!
この水彩のにじんだ感じ、グラデーションの美しさ、懐かしい。今みると、どこかノスタルジックな風合いで、古き良き都会の風景というのでしょうか、やっぱり良いなと思いました。
フォロンは、反戦を訴える絵も多いです。ベトナム戦争ですね。その時代から50年近く経っていますが、戦争はこの世の中から消えていません。どんどん変わっているようで、変わらない世界。平和を守らなきゃと思います。
私の好きな『リリー』(くちびるのボートをこぐ紳士の絵)のポスターも見ることが出来て、嬉しい展覧会でした。
東京駅の古い駅舎を使ったギャラリーは、建物自体も美しい。階段スペースで天井を見上げたら、こんな可憐なライトがありました。
さて、この夏は新札も発行されましたね。最初見た時は、ホログラムの精巧さに「わぁーすごい」と目を見張ったけれど、たくさん流通するようになって、生活の一部になってきました。 お札は見慣れたけれど、このクッキーは初めて食べました。
渋沢栄一が描かれたクッキーです。『円クッキー』と缶にあり、日本銀行の建物がデザインされています。1万円札はひとりじゃ食べ切れなかったです。
食欲の秋、芸術の秋、読書の秋、スポーツの秋・・・みなさまの秋は、どんな季節になりそうですか?
2024年 9月
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