日々のエッセイ

 夏休み真っ最中のかたも多いでしょう。毎日、暑いですね。30度を超して35度近くなる日が、もう当たり前になってきました。今年は早くから気温が高かったので、夏が長い気がしますが、どうでしょう?

        
 夏らしい和菓子が売っていました。ゼリーの食感、ほんのりとした甘さが暑い季節に似合います。赤い金魚と黒いデメキン、よく出来ているので食べちゃうのが可哀そうなくらい。

        
 短編集『静かなネグレクト』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)が電子書籍として発売されています。各ブラウザで一話目の、タイトルにもなっている「静かなネグレクト」の冒頭が読めます。出てくる商店街は、東京の鳩の街がモデルです。この地域は、赤線跡の古い建物が残っていたり、リノベーションされた可愛いカフェがあったりで、不思議な物語が潜んでいそうなイメージの街。一話目の話も、不思議で、ちょっと怖い内容になっています。

         
 夏の花といえば、ひまわり、朝顔、つゆ草・・・。小学生たちが学校の裏手に、毎年、丁寧に育てているひまわり畑があります。背くらべをするようにグングン伸びている様子が、子どもたちそのもの。よく見ると、一本、一本、個性もあって。元気いっぱいで、暑さも忘れさせてくれます。

         
 ひまわりという雑誌の復刻版を読み返しています。『ひまわり』は昭和22年に創刊された、十代の少女たちに向けた雑誌。戦後まもない物資の少ない時代に、イラストレーターの中原淳一が自ら絵や文を寄せ、執筆者を選び、夢のある雑誌に仕上げています。焼け跡に力強く生えるひまわりのように、当時の少女たちに希望を与えたことでしょう。今、読んでも質の高い記事や絵が並び、中原淳一のプロデュース力に感心します。夏になると、開いてみたくなる古い雑誌です。

        
 コロナ禍の夏休みは、屋外の活動を、と誰もが思うのでしょうか。キャンプが人気らしいですね。ふつうのテントよりグレードアップした、グランピングも盛んです。ホテル並みの装備がされたグランピング場もあるとか。夏休みなので、近場のグランピング場を見学してきました。海に近い公園の中にあるグランピング場。オシャレなテントが並んでいます。

          
 夕暮れになると、テントの前の灯りが点り、いい感じ。静かで、日本じゃないみたいな雰囲気。耳障りの良い音楽が、ボリュームを落として流れています。どんどんリラックスしてきて、日常とは違う気分にひたれます。

         
 すぐ目の前の池に陽が落ちていきます。それをベンチに座つて、ずっと眺めているうち、ユリー・シュルヴィッツの絵本『よあけ』の一場面が重なりました。あれは朝の始まるお話だけれど、光の加減が変わっていくところが共通します。
         
         
 絵本では、こんな感じ。シュルヴィッツはこういう風景を実際に見て描いたんだろうなぁと思いました。なんだか神聖な気持ちになります。

          
 すっかり夜になったら、敷地内の野外レストランでカンパイ。ろうそくの揺れる灯りだけで食べるディナーは、特別な思い出になるでしょうね。恋人同士だったら、良い雰囲気になりそう。

 コロナに気をつけつつ、夏らしいことをいろいろやってみたいです。

           
 夏休みにぴったりな絵本『むし、おきあがれるかな』(福音館 ちいさなかがくのとも 8月号)は、大人も元気をもらえる絵本です。作者の伊藤知紗さんは虫が主人公の絵本をたくさん手掛け、虫観察のブログ「てくてく日記」では小さな生き物たちへの愛情がたっぷりな写真やコメントをアップなさっています。そんな作者の筆で描かれた虫たちは、リアルでありながら温かみがあり、可愛らしく、虫が苦手な女の子も楽しく読める画風です。

           
 この絵本では、ひっくり返ったさまざまな虫たちが、自力で上手に起き上がる様子が描かれています。虫のお腹側って実は私は「足がモニョモニョしていて・・・」ちょっと怖いと思っていたのですが、この絵本を読んだら、「あら、こんなふうになっているのね。なかなか造形的だわ」と見直しました。網戸の外に貼りついた黄金虫を見たって、もう平気になり、むしろ観察したくなりました。この絵本のおかげです。
 コロナ禍が続き、子どもたちも大人たちも、疲れてパタッと倒れたくなる時があるでしょうが、虫たちが力強く起き上がる姿を見て、「自然界は、倒れても倒れても、ちゃんと起き上がれるようになっているんだ。なら、わたしも!」と、エネルギーが満ちてきます。この夏、道ばたの小さな虫たちにも視線を向けたくなります。

               

 暑い日でも爽やかに暮らせますように!

 2022年8月
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