日々のエッセイ

 ここ数年、五月に鯉のぼりを飾っているお家が少ないなと感じたのですが、今年はなぜか、ご近所の庭先やベランダで元気よく鯉のぼりが泳いでいる姿を見掛けます。男の子が生まれるお家が増えたのか、それとも伝統的なイベントを重んずるお家が多くなったのか・・・。理由は何であれ、五月の澄んだ空に色とりどりの鯉のぼりが楽しそうに泳いでいる光景を見ることが出来て、心が和みます。平和を嬉しく思います。
             
 鳩居堂の鯉のぼり絵葉書をずいぶん前に買ったのですが、五月になったら使おうと思いつつ、いつも季節が通り過ぎてしまい、まだ家にあります。ついメールを使ってしまうので、お葉書を出す機会も少なくなって。 でもいつか、五月に季節感をのせて使いたいです。

             
 五月といえば、鈴蘭がきれいに咲く季節でもあります。鈴蘭って形が可愛くて、色も清楚で、愛らしい花ですが、高校生の頃だったか、鈴蘭の根の毒で事件を起こすミステリーを読んで以来、ちょっと怖いイメージが植え付けられてしまいました。でも、植物って毒のあるものが身近にたくさんあるんですよね。 夾竹桃とかユーカリとか、実家の庭で眺めて「あれも毒があるのかぁ」と思った覚えがあります。 上の絵は、シシリー・メアリー・バーカーの描く鈴蘭の妖精。 フラワーフェアリーというバーカーの画集には、短い詩も付いていて、鈴蘭は「美しい鐘の音を響かせる」と、ベルにたとえられています。

              
 木の根元にたくさんの鈴蘭が植えられていました。いっせいに小さな白い花をつけて、毒を持つと知っても、やっぱり可愛らしくて清楚な姿です。

             
 美しいお庭を育んでいる児童文学のお仲間から、お庭で摘んだクローバーの押し花を贈って頂きました。四葉であることにまずびっくり、そのうえ大きさにもびっくり! 直径が6センチもあるんです。クローバーは幸せを運んでくるといいますから、この押し花が、そのうちビッグな幸せをもたらしてくれるだろうと期待します。

            
 上の写真は、海沿いの町にある小学校の教室。ごく普通の教室の出入り口ですが、扉を開けてみると・・・。

             
  なんと、教室にベッドが! 黒板の前の机にはアメニティグッズが揃い、天井近くの吊るし棚にはテレビもあり。 実はここ、千葉県の道の駅『保田小学校』で、2014年に廃校になった校舎をリノベーションした宿泊施設なのです。学校に泊まれるなんて、ワクワクしそう。今回訪れた時は日帰りでしたが、もし泊まる機会があったら、黒板アートにチャレンジしたいな、と思いました。

             
  古い時計が飾られた階段も、小学校時代を思い起こさせて懐かしい。

             
  昔の小学校でよく見掛けた二宮金次郎像も、ちゃんとありました! コロナ禍の金次郎さんはお肌の色にあったグレートーンのマスクをしていて、現代的です。 レストランでは給食を模したメニューも取り揃えられ、「小学生に戻って遊んでみたい」という大人にお勧め。 ゴールデンウィークを外して訪れたので、ゆっくり見学できましたが、休日はきっと混んでいただろうなぁ。

               
  校舎の正面入り口には、鯉のぼりと兜が飾られ、子どもたち、および”もと子どもたち”の健やかな成長を祝ってくれていました。

               
 今月読んだ詩画集『くぐりの森』は、日下明さんの絵と谷口有佳さんの詩が寄り添う、静謐な本です。記憶をたどると探し当てることが出来る森は、過去と未来を結ぶ場所でもある。「今日の記憶も いつかの記憶」というフレーズの入った詩が心に響きました。楽しい記憶を重ねて、誰の心にも在る”くぐりの森”の葉を豊かに茂らせたいと思わせる本です。

  空の色、木々の色がきれいな五月。元気いっぱいに過ごしたいですね。

  2022年5月
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