日々のエッセイ

 桜並木に沿って、今年は屋台が出ている場所も多かったようですね。コロナ禍はまだ続いていますが、季節を楽しむゆとりが出てきたように感じます。
        
 
 上の写真は川越の桜です。BOOK展の最終日に写したもの。まだ咲き始めで、台風のような雨風だったので人も少なめでした。3月のBOOK展、おかげ様で無事に終了することが出来ました。

        
 ギャラリーウシンで約ひと月間やっていたBOOK展。今年は「豆本箱」をテーマに参加していました。

         
 会場の様子は、こんな感じです。中央に置かれたテーブルの上に、豆本と、それに関連する小物を入れた箱をズラリと並べました。

        
 テーブルの足元には、それぞれの豆本創作秘話を書いた”解説文”が飾ってあります。敢えてテーブルの下に展示したのは、『不思議の国のアリス』気分で、いらした方々にひととき屈んで頂こうという試み。ご自身が”小さく”なる体験を通して、豆本を味わって頂きたい、というオーナーさんのアイディアです。

         
 テーブルの下にもぐりこむ、なんて大人になるとやらないですよね。遊び心いっぱいの展示になりました。

         
 会場で配布された”キャンディー豆本”も、品切れ。6種類の豆本を用意したのですが、全種類を集めて下さった方もいらして、嬉しかったです。

    
  
    

     

    

  

 13種類の小箱です。中の豆本は、会場でゆっくり読んで頂けるように、椅子もありました。

   
 豆本はどれも、てのひらに収まるほど小さなサイズ。ページに書かれている文字は、かなり小さくなっています。読みずらいという方のために、虫眼鏡もたくさん用意されていました。

     
 壁には、大野加奈さんの銅版画による蔵書票。どれも一つの絵から、美しく楽しい物語が伝わってきます。

      
 棚の上には、五木田摩耶さんのカリグラフィー。なんと、コーヒーをインクにして書かれたとのこと。流麗でドラマティックです。

       

 山下安子さんの栞は、和ティストが優しく、川越の町並みに似合う色合い。

              
 豆箪笥の引き出しを開けると、 オーナーさん私物の色とりどりの可愛らしい豆本が、いっぱい現れます。

        
 感想ノートには、いらして下さった方々の嬉しいお言葉。早春の川越で、豆本ワールドを楽しんで頂けたかなと、私のほうこそ喜んでいます。

        
 今月読んだ面白い本。エミリーロッダの『彼の名はウォルター』(あすなろ書房)は、こわい話が好きな人も、ファンタジーが好きな人も、寓話が好きな人も、ミステリーが好きな人も楽しめる本です。遠足のバスのトラブルで足止めされた四人の子どもたちと引率の先生。悪天候になり、近くの打ち捨てられた屋敷に雨宿りをすることに。キッチンらしき場所に置かれたアンティークの文机には秘密の引き出しがあり、そこに隠されていた一冊の本『彼の名はウォルター』を見つけます。退屈しのぎに皆で読み始めるとーーー、どうやらその物語は遠い昔、この屋敷で実際に起こった出来事を元にしたファンタジーのようでした。動物や魔女が出てくる小さい子向けのお話と思いきや、それは町の歴史を動かす”告発”だったというラストへ向かう展開が実に鮮やか。ホラーの大道具や小道具がちりばめられた子どもたちの冒険に、時間を忘れて引き込まれました。四人の特徴ある子どもたちという設定も、伝説のゲーム『マザー』みたいでいいですね。

        
 桜並木が綺麗な川沿いの道を歩いていたら、鵜が羽を乾かしている姿に出会いました。こんな近くで見るのは初めてなので、桜よりも熱心に鳥を眺めてしまいました。のどかな姿です。世界では戦争があり、心の痛むニュースが流れてきます。生き物たちの自然のままの仕草にホッとする春です。

 2022年4月
 
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